2018年5月21日月曜日
北朝鮮はボルトンのばかばかしい要求に対して米朝会談をキャンセルするかも
トランプ政権内ではもっとも強硬派で安全保障担当のボルトン大統領補佐官が発した言動が順調に進行しつつあった朝鮮半島の和平プロセスに激震を引き起こした。
その発端はボルトンが北朝鮮の非核化のプロセスをリビア方式で進めたいと言ったことにあった。リビアで何が起こったのかを考えると、激震の理由は明白だ。最終的には、カダフィは政権の座から放り出され、反政府派によって殺害された。この悲劇的な最期を誰もが思い出す。つまり、ボルトンの主張は北朝鮮にとっては彼らが前から言っていた政権の安定を真っ向から否定するものと映る。
西側のメディアからは北朝鮮の指導者はすぐに気が変わるから信用できないといった論調が出ていた。しかしながら、今回の動きを詳しく眺めてみると、米国政府の側にこそ根本的な問題が潜んでいることを示しているようだ。
そういった背景を伝える記事に出遭った [注1]。かなり詳細な情報であるので、現状を理解する上で役に立つのではないかと思う。
本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有したいと思う。
<引用開始>
トランプ政権は北朝鮮との交渉は容易いと考えていた。北朝鮮が3人の米国人抑留者を解放した時、トランプは悦に入っていた。 そして、金正恩との会談は6月12日に行い、場所はシンガポールだと誇り高そうに発表した。 この会談で北朝鮮は核兵器のすべてと核兵器開発計画とを諦めることに同意することであろう。トランプはノーベル平和賞を手にし、すべてが丸く収まるのだ。
しかし、これは理解不足に起因する深刻な計算違いであった。米国は北朝鮮が発した声明のすべてを誤解したのである。トランプ政権には韓国駐在大使がいない。国務省で北朝鮮を専門としていた大使はうんざりして任地を離れてしまった。米国の国家安全保障会議は北朝鮮との間の合意に妨害工作をした連中によって運営されており、彼らはまたもや妨害しようとしている。
北朝鮮の全般的な目標は軍事費を削減し、その資源を経済発展に使うために十分な安全保障を確保することにある。米国との間で和平を達成する手段は核兵器計画の推進であった。核兵器計画でひとつの段階が達成される度に北朝鮮は韓国および米国との会談を模索した。北朝鮮は核弾頭やミサイルの開発を停止するか、または、開発速度を緩めるかといった何らかの譲歩を提示し、その代償として和平の合意と経済支援を求めた。原油を供給するという約束は実行されず、米国が約束した民生用原子炉は建設されなかった。合意事項が米国によって破棄される度に、北朝鮮は核兵器計画の次の段階を開始し、次の目標を目指した。
昨年、ついに、頂点に達した。 北朝鮮は核融合兵器の試験を行い、最終的な破壊兵器に到達した。彼らは大陸部の米国に到達することが可能な大陸間を飛行するミサイルの発射実験を行った。北朝鮮は今や全面的に核保有国である。この達成後、北朝鮮は再び交渉の座につく用意が整ったのだ。
ドナルド・トランプが政権に就いた時、彼は米国を脅かすような核兵器をもつ北朝鮮は決して容赦しないと約束した。彼は北朝鮮の核兵器を取り上げるために「最大級の圧力」をかける動きを開始した。国連安保理は北朝鮮に対して強烈な経済制裁を課した。
北朝鮮はすでに交渉の準備ができている。北朝鮮を交渉のテーブルに付けたのは経済制裁ではない。そうさせたのは新たに獲得した核保有国としての地位である。このことに関してはトランプ政権はついぞ理解しなかった。彼らは自分たちが課した「最大級の圧力」が北朝鮮をして「完全な非核化」を提案せしめたのだと信じている。北朝鮮はそのような言葉遣いをしたが、その目的は全世界の強い願望のためのものであって、新たに入手した軍事能力を一方的に破棄するためではない。
トランプ政権はそれを理解しなかった。理解しようともしなかった。これは、ひとつには馬鹿さ加減に起因するものであり、知識の欠如のせいでもあった。また、それはある意味で有害でもあった:
金正恩は北朝鮮の指導者の誰もが述べて来たことから外れるようなことは一言も喋ってはいない。それにもかかわらず、トランプや他の高官らはこのプロセスを北朝鮮の軍縮をもたらす道筋として説明している。そして、われわれの集団的自己欺瞞においては、われわれは驚くべきチアーリーダーを抱えている。それは安全保障担当補佐官のジョン・ボルトンだ。
ボルトンがインタビューに応じて、数か月もすれば起こり得る北朝鮮の核兵器の完全排除を取り上げることにどうしてこんなに多忙を極めているのかを質してみる価値があろう。彼は繰り返して「リビア方式」を求めている。この方式では、米国がやって来て、核兵器やそれを可能にする付帯設備をすべてかき集めるのだ。
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これは狂気の沙汰だ。このような手法に金正恩が同意すると考える理由はまったくない。
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ボルトンが突然ナイーブになった訳ではない。彼は守護神役を演じている。そして、この守護神はほとんど間違いなく大統領の期待に合いそうにはない。ボルトンは反対することによって外交をぶち壊そうとしている訳ではない。むしろ、彼は完璧主義を善の敵にすることによってぶち壊そうとしているのだ。つまり、リビア方式の降伏を持ち出すことによって、金正恩が提案しているより穏当な解決策は相対的に嘆かわしいものとして見えるのだ。
これはボルトンと彼の仲間が演じている、相手を小馬鹿にした、危険なゲームである。
「最強の圧力」が北朝鮮に対して機能したとする間違った考えの副作用はトランプ政権がこれと同じ手法がイランに対しても奏功するだろうと考えている点に見られる。これが同政権がイランとの核合意を反故にした成り行きである:
強力な圧力をかけるキャンペーンの結果、トランプ政権は核合意のための好機がやって来たと思い込んでいる。「彼らはこれを北朝鮮シナリオと名付けている」とヨーロッパの高官が言った。「北朝鮮に強要し、イランにも強要する・・・ 金正恩に対しても彼らは同じことを強いる・・・ 降伏を。」
今や国務長官となったポンペオがまだCIA長官であった頃、彼は交渉の準備のために5月10日に北朝鮮へやって来た。北朝鮮側はワシントン政府の考え方は間違っているとして警告を与えた:
到着後、ポンペオはキム・ヨンチョルと約1時間も会って、トランプ・金会談やポンペオ自身の予定について話をした。その後、金正恩がホテルの39階での昼食会に臨み、米国人一行を公式に歓迎した。
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金正恩は米国人に向かってこう言った。「われわれは核能力を完璧なものにした。この会談は外部から課された経済制裁の結果もたらされたものではではない。」
この交渉サイクルの当初北朝鮮が求めていたひとつの条件は、北朝鮮が核兵器やミサイルの実験を凍結する見返りとして韓国と米国による「戦略的」な軍事演習を凍結することであった。このことは両者によって認められた。この条件はしばらくの間維持されてはいたが、2-3日前、米国と韓国は新たな軍事演習について公表した:
ソウル発、5月10日(ヨンハップ) --当地の高官が木曜日に述べたところによると、韓国と米国は大規模な空軍の演習を開始する。明らかに、これは北朝鮮との非核化に関する会談を前にして手の内を強化しようとする動きである。
「マックス・サンダー」と称される2週間にわたる軍事演習は金曜日(5月11日)に開始され、約100機の空軍機やレーダーを回避することができる8機のF-22戦闘機、機数が不明なB-52爆撃機、および、F-15Kジェット機が参画すると高官が述べている。
両同盟国が統合軍事演習に8機のF-22 を参画させることにしたのは今回が初めてである。強力な空軍力を見せつけることは北朝鮮が核兵器に関する野望を諦めるように圧力をかけることにあると観測筋は言う。
F-22ステルス戦闘機やB-52爆撃機は核兵器を搭載することが可能であることから、これらは戦略的な資産である。軍事演習にこれらの航空機を投入することは前に取り交わされている同意を破ることになる。この軍事演習の予告に対して、北朝鮮は韓国との高官レベルの会合をキャンセルした:
北の朝鮮中央通信社(KCNA)は韓国と米国の空軍によって行われる「マックス・サンダー」軍事演習は北朝鮮に対する侵略のための予行演習であり、南北の連携を進める最中の挑発であると述べた。
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「この軍事演習は我々に向かって行われており、韓国全土で展開されていることから、これは板門店宣言の違反である。そして、朝鮮半島問題の積極的な政治解決に逆流する国際的な軍事的挑発である」とKCNA リポートが報じた。「また、韓国政府と共に合同で行われているこの挑発的な軍事的大騒動に踏まえて、計画されている米朝首脳会談の運命について米国は注意深く熟考しなければならない。」
国務省ならびにペンタゴンはこのような結果を招くとは気が付かなかったようだ。
北朝鮮は脅威を感じている。ミサイルと核兵器の実験を中断した。核兵器用の「北部試験場」を撤去する予定だ。3人の囚人に恩赦を与え、彼らを米国に向けて出国させた。韓国や米国との間で希望に満ちた会合を何回も行った。そのような北朝鮮が今になって何故にさらなる圧力に耐え忍ばなければならないのか?軍事演習の凍結と引き換えに北朝鮮は米国と韓国とが核実験の凍結に関する合意を破ることをなぜ許容しなければならないのか?
トランプはすでに勝ったと思っていた。しかし、ついに、北朝鮮はトランプを矯正した。北朝鮮は脅威に晒されてもけっして核兵器を諦めない。諦めたとしたら、北朝鮮はそのような間違いが元で他国が経験したように潰されるだけとなる:
平壌の国営通信社KCNA によると、キム・ケグワン(Kim Kye-gwan)外務副大臣が核兵器を諦めることを強要されるような会談には共産党政権はまったく興味を持たないと明確に述べている。
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同副大臣はリビアで以前用いられた非核化の前例を持ちだした米国に不快の念を示した。
その声明は全文が「不快な」ジョン・ボルトンを非難の的にしている:
安全保障担当大統領補佐官のボルトンを含めて、ホワイトハウスの高官や外務省は非核化に関しては、先ずは核兵器を破棄し、その後で補償を行うことについて議論をする中、「完全で、検証可能な、不可逆的な非核化」、「核兵器、ミサイル、生物兵器の全面的な破棄」、等、所謂「リビア方式」の採用を好きなように主張している。
これでは話し合いを通じて問題を解決しようとする意志の表明にはならない。
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核兵器国家となった北朝鮮を核開発においてはごく初期の段階にあったリビアと比較することは極めてばかばかしいことだ。
過去に浸っているばかりのボルトンの人柄に光を当て、われわれは彼に対する強い嫌悪感を隠す積りはない。
もしもボルトンのような人物による曲解や挫折を経験しなければならなかった過去の米朝会談からトランプ政権がいくばくかの教訓さえをも学ぶことがないとするならば、さらには、リビア方式やそれに類する策を主張する擬似的な「愛国者」の警告に耳を傾け続けるとするならば、迫りくる米朝会談ならびに米朝関係の展望は誰が見ても見え透いたものとなるだろう。
われわれは朝鮮半島の非核化に関するわれわれの意図をすでに述べており、非核化の前提条件は米国が北朝鮮に対する反感に満ちた政策や核兵器による脅かし、脅迫、等に終止符を打つことだと数回にわたって明確にして来た。
トランプのノーベル平和賞は何処かへ流れ去ろうとしている・・・
トランプがシンガポールにおける6月12日の金正恩との会談を心から望み、合意を得たいとするならば、彼はボルトンに対して余りにも包括的な要求はするなと制止しなければならないだろう。ポンペオ国務長官は調停のために何らかの声明を用意しなければならないであろう。韓国における自分たちの地位を下げることにつながる和平会談を嫌っているペンタゴンは挑戦的で「戦略的な」作戦行動を控えなければならないだろう。
さらなる会談に向けた軍事的代替案は何ら存在しない。核装備をした北朝鮮は核装備をしている中国と同盟関係を持っている。北朝鮮に対する攻撃はワシントンDCの上空にきのこ雲を立ち上がらせるかも知れない。そのようなリスクを冒すことは無責任極まりない。
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最新情報:
北朝鮮の反対は二つの点で役に立っている。米軍の軍事演習は元に戻され、ホワイトハウスは米朝会談を邪魔するためにボルトンが持ち出したリビア方式による核武装解除案を撤回した。トランプはノーベル賞が欲しいのだ。
北朝鮮が不平をもらした「戦略的な資産」、即ち、核兵器を搭載することが可能な爆撃機は今や米韓合同軍事演習からは除外された:
オリジナルの計画とは違って、核の搭載可能なB-52爆撃機は現行の米韓軍事演習には参加しないと軍の消息筋が水曜日に述べている。
金曜日に始まった「マックスサンダー」軍事演習においては米国のF-22 ステルス戦闘機がすでに参加しているが、B-52はこれからの参加が予定されていたところであった」と、身分を明かさないことを条件に消息通が述べた。「B-52は5月25日まで続くこの演習には参加しない。」
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韓国国防省もB-52が演習には投入されないことを公に確認した。
関連のある動きにおいて、文在寅大統領の安全保障担当の文正仁特別顧問は議会での演説の中でこの決断は宋永武国防相と在韓米軍のヴィンセント・ブルックス指揮官との緊急会合の結果もたらされたものだと述べている。
核搭載爆撃機が北朝鮮にとって脅威であることは明らかであり、爆撃機の参加は北朝鮮による核兵器実験の凍結は韓国と米軍が戦略的軍事行動を凍結することによって高く評価される との合意を破ったことになる。
北朝鮮の二つ目の批判はジョン・ボルトンの速やかで全面的な核武装解除の要求に関するものであった。
今朝、ホワイトハウスはボルトンが日曜日のトークショーで推進しようとしたリビア方式の核武装解除のシナリオを重要視しなかった:
リビアとの比較を引用して、ホワイトハウスのセイラ・サンダース報道官は水曜日に彼女は議論の一部としてそのような発言には遭遇しなかったことから、同発言がわれわれが用いる手法になるとは思わないと述べた。
「私はその件が具体的な手法であるとは見なかった。それがどのように機能するかに関して言えば、クッキーを作るような決まった型が存在するわけではない。」
彼女はさらに続けた。「これはトランプ大統領のモデルだ。大統領は彼にとって最適なやり方でこの件を先へ進めようとする。以前から何度も言っているように、われわれは100パーセントの自信を持っている。皆さんがそのことを十分承知していることは私には分かっているが、彼は最高の交渉の専門家であって、そのことについてはわれわれは強固な自信を持っている。」
ホワイトハウスは速やかに終わりにした。これは政府が実際に合意を望んでいる兆候であると私には見える。
「気に食わない」ジョン・ボルトンが6月12日の金正恩とドナルド・トランプとの会談には参画しないように北朝鮮は主張するかも知れない。彼が朝鮮半島問題の交渉から外されるならば、確かにそれは役に立つことであろう。
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US does the one thing DPRK asked them not to do
https://youtu.be/5QTJsMFGXIM
Photo-1
<引用終了>
これで全文の仮訳が終了した。
ジョン・ボルトン大統領補佐官のやり過ぎの全貌がこの記事ではっきりと分かった。非常に興味深い内容である。ジョン・ボルトンが米朝首脳会談への参加メンバーから外されるならば、朝鮮半島の非核化や南北和平には希望が持てるだろうと述べて、同記事は結ばれている。
果たしてどのような展開が待っているのだろうか?1ヵ月足らずで答えが判明する。
参照:
注1: North Korea May Cancel Summit Over Bolton’s ‘Absurd’ Demands: By Moon Of Alabama, Information Clearing House, May/16/2018
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