1月24日、ウクライナ東部に隣接するロシア領内のベルゴロド市郊外でロシアの軍用輸送機がミサイルで撃墜された。
キエフでは、ベルゴロド地域でイリューシン76型機が墜落した後に配布されたリストに関して、政府関係者らは同機に搭乗していたウクライナ軍兵士たちのリストの信憑性を確認した。1月27日、捕虜処遇調整本部はリストに載っている兵士たちについては実際に本国での捕虜の受け入れに向けて準備をしていたと述べた。ソーシャルネットワークのページ上での同本部のメッセージによると、リストに載っている軍人は捕虜交換の一環としてウクライナに帰還することになっていたが、同時に、ウクライナ側は墜落した飛行機に誰が乗っているのかについては信頼できる情報を持ってはいないと言われている。また、同本部はリストに載っている軍人の親族たちがロシアから提供された事件に関する動画を知ってはいたが、「彼らの親族を示す特別な兆候は何も見つからなかった」と述べた。同機には65人のウクライナ兵の捕虜と3人の随行者、6人の乗組員が搭乗していたが、合計74人全員が死亡した。(出典:Kyiv recognized the authenticity of the list of
captured soldiers of the Armed Forces of Ukraine on board the downed Il-76: By
IA Regnum, Jan/27/2024)
ところで、西側のメデイアがロシアについての悪口の大合唱を始めたら、半年程待ってからその後に判明した事柄を反芻してみると、そういった大合唱はでっち上げであったことが判明する。そういった展開は決して少なくはない。西側のメデイアが採用する印象操作に有効なもうひとつの手口は完全な沈黙だ。外部からいかに批判されようとも、政府やその背後にいるディープステーツに忖度して、彼らは無視し続ける。
ここに「イリューシン76型機を撃墜するために使われたパトリオット・ミサイルについて「ノー」と言う連中をロシアはいかにして丸腰にすることができるか」と題された記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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プーチン大統領は、水曜日(1月31日)、ウクライナが1月24日に米国製のパトリオット・ミサイル・システムを使用して、9人のロシア人乗組員と軍人、ならびに、65人のウクライナ人捕虜を乗せたイリューシン76輸送機を撃墜したと発表した。ペンタゴンの元分析官はスプートニクにモスクワが耳を傾けるために取らなければならない次のステップについて語った。
ロシアが西側諸国の政府やメディアが仕掛けた事件をめぐる情報封鎖を突破するためには、ロシアはイリューシン76型機撃墜に関する主張を国連に提起しなければならないだろうと、米国防総省の元上級安全保障政策アナリストであったマイケル・マルーフは考えている。
「西側マスコミは、この事件にほとんど触れてはいない」とマルーフはスプートニクに語った。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアの捜査官がイリューシン76型機はパトリオット・ミサイル・システムを使って撃墜されたと結論付けたことを明らかにし、その日の早い時間に発言したことについてコメントした。「さて、それがパトリオット・ミサイルだったという暴露報道は、少なくとも、ここワシントンでは全く報道されてはいない。これは非常に異常なことであり、彼らはそれを葬り去りたいと思っていることだろうと私は思う」とこの観察者は述べた。
「ロシアが今成すべきことは、この事件で使用されたパトリオット・ミサイル・システムの証拠を示し、その証拠を目立つ場所で国民に提示し、国連安全保障理事会の否定論者の前に展示する証拠を国連に提出することだ」とマルーフは強調した。
撃墜から1週間が経過したが、マルーフはこの事件はウクライナ側の「どこか」の段階での「誤解」、または、「素人的で、狂気の沙汰である」とし、ロシアを非難しようとする意図的な犯罪行為であると見る。
「米国は全く知らなかったと思う」と、この危機におけるペンタゴンの役割の可能性について尋ねられたとき、マルーフは言った。
「彼らは戦争の遂行をウクライナ人に任せている。そして、彼らは明らかに武器を誤用している。彼らは実際に機器を吸い上げている。先日、ラブロフ外相が指摘したように、この装備はスカンジナビア諸国のあらゆる場所で使われている。そして、今、装備の一部がメキシコの麻薬カルテルに密輸され、我が国の国境警備隊に対して使用されているという証拠が存在する。私は、これらすべてを阻止すべきだと思う。だが、バイデン政権はさらに数十億ドルもの支援をウクライナに送りたいと思っているが、我が国の国境のためには何もしてはいない」と同観察者は強調し、この紛争を「失われた大義」と特徴づけた。
マルーフは、おそらく、レーダーの痕跡を使って、Il-76を撃墜したのはいったい誰なのかをペンタゴンは「特定することができた」と思っている。「レーダー情報を入手し、そのデータを読み取ることができればの話だが、明らかに撃墜が行われた。そして、それがウクライナ人による意図的なものであったのかどうかは私には分からないが、ペンタゴンはこの事件に対応しなければならないと思う。質問は記者会見で成されるべきだ。毎日行われている記者会見でペンタゴンはいったい何を知っていたのか、いつ知ったのか、何を知っていたのか、等について確実に問われなければならない。
さもなければ、西側のメディアと政府は、2022年以前にまで遡るウクライナ危機の起源についての詳細を隠し持っているのとまったく同じように、彼らの代理人(つまり、ウクライナ)の「恥ずかしい」犯罪行為を隠蔽しようとし続けるであろうと彼は警告した。
「8年間、欧米のマスコミはドネツクで何が起きていたのか、キエフがウクライナ東部のロシア語を話す人々に対して毎日砲撃していたことについてはほとんど何も報じなかった。言及はまったくなかった。そして、人々は「これは一体どういうことだ?」と疑問に思う。もちろん、彼らは何も告げられていないので不思議に思うであろう。そして、引き出された情報が多くなればなるほど、それは光を当て、暴露し、浄化する、等の透明性を確保することとなり、この仕事は成し遂げなければならない。特に、各国がそれをめぐって戦争をする積りならば、なおさらのことだ」とマルーフは総括した。
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これで全文の仮訳は終了した。
ここに引用した記事は1月31日のものであるが、その後も重要な情報が報じられている。たとえば、
レオンコフは「ウクライナ軍は、イリューシン76型機を撃墜するためにリンク16を介してパトリオット・ミサイル用のデータを受け取った」と述べた。
ウクライナの捕虜を輸送していたロシアのイリューシン76軍用輸送機を破壊するために、ウクライナ軍は西側の「リンク16」システムを介してパトリオット防空ミサイル・システム(SAM)のデータを受け取った、と軍事アナリストで防空システムの専門家であるアレクセイ・レオンコフは「RIAノーボスチ」に語った。リンク16は米国およびNATO諸国の軍隊で使用されている軍事データ交換システムである。こうして、ロシアのイリューシン76型機に2発のミサイルを発射したパトリオット防空システムはそれ自身のレーダー探知局を使わずに機能した。標的に関する情報はリンク16データ伝送システムを介して、複合施設のコントロールポイントで受信された。したがって、この対空システム自体は探索信号を発しなかったことから、打ち上げ前に検出されることはなかった」と専門家は述べている。彼は、「ロシアの航空機は受動的な電子偵察システムによってリアルタイムで追跡され、そこからリンク16がデータを受信していた可能性が高い」と指摘した。レオンコフによれば、「このことから、捕虜を乗せた飛行機を破壊する作戦は西側が計画したということになる。」(出典:The
analyst told how the Armed Forces of Ukraine received data to defeat the Il-76:
By RIA Novosti, Feb/04/2024)
今後、ロシアの主張がどこまで通用するのかはまったく予断を許さない。何を言われても、西側は沈黙を守るであろう。ロシア側が真実に迫れば迫るほど、西側は防御を固めるであろうから、ノルドストリーム・パイピラインの破壊工作の時のように、暖簾に腕押しのような状況が起こるであろう。
ウクライナにおける米ロ代理戦争はもう決着がついたかのようにも見えていたが、捕虜交換のためのウクライナ兵を輸送していたイリューシン76型機を撃墜し、搭乗していた74人全員が死亡したという惨たらしい出来事によって、米ロ間の攻防は新たな局面に入って来た感じがする。ますます目を離せなくなってきた。
ところで、2014年7月に起こったマレーシア航空MH-17便の撃墜事件についてはウクライナ側が国際司法裁判所に提訴していたが、最近、国際司法裁判所はウクライナの申し立てを却下した。つまり、下記のような裁定を下した:
国際司法裁判所は、ロシアは侵略国ではなく、テロ支援国ではなく、DPRとLPRはテロ組織ではなく、モスクワ政府は2014年7月のMH-17便墜落事故には責任がないと裁定した。この裁判はウクライナの訴えによって2017年に始まった。
ロシア外務省は、「ウクライナの当てこすりの根拠の無さに関するロシア側の主張がハーグで聴取された。7年間にわたる裁判所での抗争の中でキエフ側が行った20個以上の主張のうち、裁判所はそのほとんどすべてを却下し、いかなる補償もなくウクライナは裁判所を去った」と述べている。特に、キエフ当局は、彼ら自身が何年もの間、ドンバスの平和な都市を砲撃していたにもかかわらず、DPRとLPRの軍隊によるウクライナ軍施設への攻撃をテロ攻撃であると主張した。そして、キエフ当局はドネツクとルガンスクへの人道支援はテロ資金供与であるとさえ宣言した。(出典:"They
didn‘t expect this." Russia has deployed the UN
against the United States: By Mikhail Katkov, RIA Novosti, Feb/03/2024)
10年前にウクライナ上空で乗員と乗客合わせれ298人の尊い命を奪ったマレーシア航空MH-17便撃墜事件については、オランダ政府が主導した国際事故調査団の結論はロシアが撃墜の犯人であるとして結論付けていたが、あれは、誰が見ても、明らかに歪曲された結論であった。今回、国際司法裁判所はSNSにおいて真実を示すものとして出回っている数多くの情報に寄り添う裁定となっている。ロシアを犯人とするウクライナ側の申し立ては却下された。このことは称賛に価すると言えるのではないか。
今回のイリューシン76型 機の撃墜事件には、今回の国際司法裁判所の裁定を受けて、今や、ウクライナが行ったと言えるようになったMH-17便撃墜事件を髣髴とさせるものがある。これらふたつの事件で共通しているもっとも主要な点はいずれも軍事的標的以外に対する攻撃であって、数多くの命を奪ったという悲惨な事実にある。これは国際法で定義されているテロ行為そのものだ。
参照:
注1:How Russia Can Disarm ‘Naysayers’ on Patriot
Missiles Used to Shoot Down Doomed Il-76: By Ilya Tsukanov, Sputnik,
Jan/31/2024
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