2014年3月18日火曜日

クリミアでの国民投票は実に整然と実施された


316日のクリミアでの国民投票は実に整然と実施されたと報道されている。少なくとも、銃が発射されるような暴力や威嚇がなかったこと自体は非常に好ましいことだと言えるのではないか。
第三者がこの国民投票の様子を観察することができるように、今回の国民投票には外国からの監視団が招かれていた。監視団のメンバーは23か国からやって来たという。
監視団のメンバーのひとりに対して行われたインタビューが報道されているので[1]、それを仮訳して、このブログの読者の皆さんと下記に共有したいと思う。全貌を知るまでにはならないかも知れないが、現地の様子を少しでも多く理解しておきたいからだ。
 

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<引用開始>
 



Photo-12014316日、クリミアの首都シンフェローポリで本日行われた国民投票の開票速報に喜びを示す市民たち (Reuters / David Mdzinarishvili)
 

「クリミアの市民たちは今自分たちの夢、つまり、ロシア連邦に帰属したいという夢が実現され、その実感に浸っているところだ。これによって、自分たちの社会的ならびに政治的な生命が保証される」と、ポーランドの国会議員であるマテウス・ピスコルスキー氏はRTに語ってくれた。
RT: あなたはこの国民投票では監視団の一員でしたが、投票の最中どんな印象を抱いたのか教えていただけますか? 
マテウス・ピスコルスキー(MP):関係官庁や投票所に詰める職員ならびに選挙管理委員会にとっては準備時間が非常に限られていたにもかかわらず、この国民投票は実にうまく運営されていました。
すべてが専門的に訓練された職員たちによってうまく準備されており、この国民投票が実現したように思えます。これは非常に興味深いことです。クリミアは極端に異常な状況の中にあってさえも物事を正常に処理することができる自分たちの国家あるいは社会をすでに築いているのだという事実を示しています。この国民投票のように巨大なプロジェクトに対して非常に短い準備期間しかなかったにもかかわらず…
この国民投票の全体について評価すると、私としては、プロ意識に徹してすべてが準備されており、非常に静穏で、投票所での安全が保証されているという点ばかりではなく、投票所では警察官の存在が目立ちすぎることもなく運営されていることを指摘したいと思います。非常に平和的に行なわれており、穏やかです。
この選挙はクリミア自治共和国の法律にしたがって実施されたというだけではなく、もっとも基本的で、もっとも重要な国際法にも準拠しています。
 



Photo-22014316日、バフチサライの投票所でウクライナのクリミア自治共和国の将来に関して投票をする女性 (Reuters) 

RT: 通りでは国民投票に対する反応はどんなだったでしょうか?
MP: あたかも国民の祝日のような感じです。私たちはシンフェローポリの中心地におり、辺りは何千もの市民で埋まっています。もう夜も更けてきていますが、家族総出でここへやってきたり、子供連れの人たちもいますし、ロシア国旗を持った若者たちがたくさん集まっています。
市民たちは自分たちの夢、長い間抱えていたロシアの一員になるという夢をすでに達成したと感じているようです。これで、自分たちは社会的ならびに政治的な生命を安定化させることができると皆が言っています。
興味深いことには、今日はロシアへの帰属に賛成するたくさんの年輩の人たちを見ました。もちろん、いわゆるソ連崩壊後の思いやその他さまざまな事がらにも言及することができそうです。その一方、何千もの若い世代、特に、ロシア国旗を振っている非常に若い人たちもたくさん見かけました。

<引用終了>
 

今日の報道によると、投票率は83%と非常に高い。そのうちの97%がロシアに帰属すると投票したとのことだ。
全有権者の80%強がロシアのメンバーになると意思表示をしたことになる。ロシアへの帰属の地滑り的な圧勝という感じだ。2001年の国勢調査によるとロシア人は全体の58.3%を占めるとのことであるから(ウィキペデイアによる)、ロシア連邦への帰属はロシア人だけではなく他の少数民族の人たちからも広く支持されているようだ。
 

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しかしながら、この選挙に関してはいくつかのネガテブな展開も報告されている[2]。たとえば、クリミア半島へ天然ガスを供給するプラントの破壊工作があったとのことだ。 

<引用開始>
クリミア軍と自警団はクリミア半島全体にとって非常に重要な数多くの施設(学校や医療センターを含む)に天然ガスを送り込んでいる天然ガス配給センターに対する破壊工作を防止した、とクリミア当局が語った。
315日土曜日のGMTで午前11時頃(つまり、現地では午後1時頃)、ストレルコヴァヤの近くの配給センターでクリミアへのガス供給が断たれた。クリミア半島の東部にある数多くの地域に対する供給が停止した。これによって、病院や医療センター、ならびに、学校やアパート群へのガス供給が止まった。
ガス供給の専門家たちは、最近創設されたばかりのクリミア軍に付き添われて(この中にはクリミア共和国に宣誓した元ウクライナ兵も含まれている)、ガス供給の遮断に対処するべくガス・ステーションへ急行した。
「現地では、少なくとも20人程の迷彩服を着て武装した男たちの一団に遭遇した。連中はガス供給を完全に遮断するために爆発物を装着しようとしていた」と、クリミア政府が発表した。 
クリミア軍を見て、彼らは素早くストレルコヴァヤ村の方向へ逃走した、と当局は説明した。クリミア政府のアクショーノフ首相によると、破壊工作を行おうとしていた男たちはウクライナの国境警備隊の隊員だと名乗ったが、ガス・プラントで何をしようとしていたのかについては何も説明せずに立ち去った。

当局の説明によると、「ガスの供給は再開され、近い将来これと同じような事態が生じないように天然ガス配給センターはクリミア自警団のコントロール下に置かれている」とのことだ。
クリミアのニュース報道によると、このような対策はクリミア共和国のエネルギー・セキュリテイーを確保するためにも必要だとアクショーノフ首相は述べている。
一方、ウクライナ政府は上記の出来事についてまったく違った見解を述べている。この出来事は第三者、つまり、ロシア軍によって行われたものであって、軍事的な侵害であるとしている。ウクライナのメデアはガス・プラントでの陽動作戦についてはまったく触れてはいない……
<引用終了> 

国民投票前日の緊張した空気を伝える上記の記事は延々と続くが、ひとまずここで引用を終了しよう。
ウクライナ政府の肩を持つ米国のAP通信は上記の天然ガス配給センターの件でどのように報道しているのだろうか[3]。言うまでもなく、クリミア政府の説明とは大違いである。 

<引用開始>
クリミア地区のロシアへの帰属を問う国民投票の前日、武装ヘリや装甲車に守られたロシア軍が土曜日にクリミアとの国境に近い村をコントロール下に置いた、とウクライナ政府の高官が語った。
ストリルコヴ[訳注:この綴りは上記のロシア語による綴りとはやや異なる。ウクライナ語とロシア語との違いだろう]における軍事的行動はクリミアの外で行われた動きの最初の事例で、ロシア軍は先月の後半から実質的にこの地域をコントロール下に置いていた。銃の発射や負傷者に関する報告はなかった。この出来事は日曜日に行われる国民投票を前にしてすでに高まってる緊張をさらに高めるものだ。
外務大臣は声明文でクリミア半島の外での行動を非難し、ウクライナは「ロシアによる軍事的侵攻を止めるに必要なあらゆる手段を講じる権利を保留する」と述べた。
この村は黒海に突き出ている半島の北側にあって、クリミアとカーソン地区との境界から北へ約10キロ程の位置にある。
ウクライナ国境警備隊の広報担当者、オレグ・スロボデアンはAP通信に「全部で約120人程のロシア人が村にある天然ガス供給センターをコントロール下に収めた」と語った。外務省によると、「この部隊は約80人で構成され、連中はどこに所属するのかについては何も言わなかったが、村を拘束したと言った。」
クリミアが日曜日の国民投票を準備する中、クリミアの首都では何十もの広告用掲示板には「ロシアと共に」という標語が掲載されていた。しかし、いくつかはスプレイで落書きされ、「ロシア」が消されて、「ウクライナ」と書き換えられていた。
この国民投票は、キエフ政府や西側諸国によって非合法であると非難されている。西側は、ロシアがクリミアを併合した暁にはロシアには犠牲の大きい制裁措置が待ち受けているとの脅しをかけている。しかし、それは当然の帰結として受け止められているようだ。クリミアがウクライナから離脱することに票を投じることはほぼ確実だ。これはウクライナの政治的混迷をさらに悪化させ、冷戦が終結した後の東西間の衝突では最悪のものだと言えよう…
<引用終了> 

ここに引用したエピソードは多くの出来事の中のほんの一例に過ぎない。しかしながら、私がもっとも興味を惹かれた点は、クリミアとキエフの間での事実の認識や表明に大きな違いがあるという事実だ。どちら側も相手とは戦争の一歩手前にあることを思えば、ある意味ではこれは当然のことかも知れない。
特に、キエフ政府の報道には西側への広告塔の役目を果たそうとする故意の歪曲が感じられるのだが、どうだろうか。
先月の末、キエフの中央広場ではネオナチや極右派がデモ隊や警察官の両方へ発砲したという事実が公然の秘密となっている。しかも、その発砲事件を指導していた張本人が新政府のメンバーになっているという。キエフ政府は、政治的には国際社会の前で、多分、負い目を感じていることだろう。キエフの上層部にとっては、何としてでも引き続き西側の支援を固めておきたい場面であるということだろうか。 

 
参照:

1Crimea referendum professional, up to international standards - head of intl observers: By RT, Mar/17/2014, http://on.rt.com/8o2uom
2Crimean military thwarts sabotage of gas plant feeding peninsula: By RT, Mar/16/2014, http://on.rt.com/qs2jms
3Ukraine says Russian forces make foray outside Crimea as referendum looms: By Associated Press, Mar/15/2014

 

 

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