副題: 米国の富豪、ピエール・オミダイアが米国政府と共にウクライナ革命グループを財政支援
ヤヌコヴィッチ大統領を国外に逃亡させてから、キエフの新政権が最初に行った仕事はウクライナでの公用語はウクライナ語だけにするということだった。ロシア語は公用語から排除されたのだ。ロシア語を常用とするウクライナ住民は全体の三分の一を占めると言われている。東部や南部ではロシア語人口が地域住民の過半数となる地域がある。その中でもクリミア半島の地域では日常ロシア語を喋る人たちが圧倒的に多く、三分の二を占めるとのことだ。
3月1日付けの報道 [注1] によると、東部や南部では親ロシア派の住民によって幾つもの都市にある政府の建物の屋上にロシア国旗が掲揚された。ハリコフ、ルガンスク、ドネツク、ドニエプロペトロフスク、マリウポリ、オデッサ、そして、クリミア半島内ではケルチやシンフェローポリ、セヴァストーポリ、イェウパトーリア、等。
この様子を見ていると、ウクライナ共和国は今にも崩壊し、ふたつの国家に分裂してしまうかのようだ。
ウクライナ議会を牛耳ることになった野党勢力は新政府を樹立し、議会は少数派の言葉を使わせず、ウクライナ語のみを公用語とするとの法律を採択した。これがウクライナを政治的に二分させる切っ掛けとなった。しかしながら、ウクライナ議会がウクライナ語を公用語とすることに決定した時、議員たちはウクライナ市民の三分の一を占めるロシア語系住民が強く反発することは容易に予想することができた筈だ。それでもなおロシア語だけを公用語にしたという事実は、最悪の場合はロシア語圏の分離・独立の要求が出てくることも織り込んでいたに違いない。それを承知の上で、ウクライナを二分にしてまでもロシアとの国境に少しでも近寄りたいという地政学的な意図をEUやNATOの指導者は持っていたのかも知れない。
仮にウクライナがふたつの国に分裂するとしよう。その場合、ウクライナからの分離・独立を標榜する南部地域にとってはどのような国家形態が受け入れられるのだろうか。(1)クリミア共和国とかドネツク共和国となる。(2)ロシア領となる。(3)ロシア語もウクライナの公用語に含めて、ウクライナ連邦を形成する。
クリミア自治共和国では3月30日に国民投票を実施し、ウクライナとの今後の関係の在り方を決めるとしている。BBCの報道によれば、クリミア住民に意見を聞いてみると、ロシアへの帰属を求める人たちもいるが、ウクライナに残ってクリミア自治共和国の自治権を拡大したいとする人たちも多いとのことである。そして、最近、この国民投票の日程が前倒しされて、3月16日に変更された。
米国政府はクリミアにおける住民投票は国際法違反だと言い始めた。
どのような形で決着するにせよ、流血沙汰なしで住民の意思を反映させることがもっとも好ましい筈だ。投票に当たってもっとも懸念させられるのが大国(米国、EU、ロシア)による干渉である。選挙民に対する金銭的な誘惑から暴力による脅かしに至るまでその形態は多種多様を極めることだろう。
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最近掲載した「ワシントンが画策した反政府運動によってウクライナが不安定化」と題するブログでは、今回反政府活動で使用されていたパンフレットのひとつはセルビアのベオグラードに本拠を置いた組織(CANVAS)から提供されたものであって、一字一句が翻訳されていたとの事実をご紹介した。そこでは、下記のように書いた。
『この組織は、当時(2000年)のユーゴスラビア連邦のスロボダン・ミロセヴィッチ大統領に反対する「色の革命」を演出し、初の成功を収めた。その際、米国務省からは大量の資金援助を受けた。それ以降、この組織は、見かけは「民主主義」を支える草の根運動的な組織として存在してはいたが、実際には米国のために「革命コンサルタント」の役割を果たすことに専従していた。セルビアに本拠を置いたNGOが実は米国政府によって後押しされ、政権転覆の最前線の役割を担っているとは一体誰が想像できるだろうか。』
それでは、今回のウクライナ革命では反政府派のNGOはどんな役割を果たしていたのだろうか。これが今日のブログのテーマだ。
ここに、米国国際開発庁(USAID)がウクライナ革命前の反政府グループへの資金提供で主要な役割を演じていたと伝える記事
[注2] がある。
米国政府と並んで、多くの資金を提供したのが米国で123番目の大富豪と言われるピエール・オミダイアという人物(訳注:世界最大のネットオークション企業であるeBayの創始者。フォーブス誌によると2013年3月現在の個人資産は87億ドル)である。
この記事を読むと、ウクライナではNGOがどのように運営されていたのか、誰が中枢にいたのか、その活動資金は何処からきていたのか、等についてよく理解することができる。それでは、この記事を仮訳して、それを下記に掲載してみよう。
<引用開始>
2014年2月28日
文書によると、ピエール・オミダイアは米国政府と共にウクライナの反政府グループに資金提供をしていた
著者:Mark Ames
PandoDaily (本情報を提供するサイトの名称)
Photo-1
この週末、ウクライナ共和国のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が追い出された数時間後のこと、ピエール・オミダイアが最近雇用した何人かの新顔のひとりで米国の安全保障に関するブログThe Interceptを担当するジャーナリストがもうすでにひとつの真実をスクープしていた。
マーシー・ウィーラーはこの新サイトの「上級政策アナリスト」であって、ウクライナ革命は「パックス・アメリカーナ」を代表する「幾層にもわたって張り巡らされた勢力」によって画策されたものではないかと推測した。つまり、クーデター的な証拠が数多くあり、最初の疑問は果たして何層の勢力が関与しているのだろうかという点にある、と指摘した。
これは非常に重要な側面を包含している。たいそう深刻な課題であるので、私はこれらを詳しく調べてみることにした。そして、表面化してきた事実は驚くべきものであった。
ウィーラーは部分的に正しかった。革命の前に複数の反政府グループに対して行われていた資金提供では、米国国際開発庁(USAID)を通して、米国政府が主な役割を演じていたとパンド(Pando)が確認したのだ。さらには、以前米国政府の省庁と一緒に仕事をしたことがある大富豪も当該反政府グループに対して資金提供を行っていた。この行動は自分自身のビジネスをさらに推進することを目的にしたものだ。これは決して米国が支援したクーデターではないが、米国からの資金提供がヤヌコヴィッチを追いやることに大きく関与した幾つもの政治グループの勢力を強化する役割を担ったことはさまざまな証拠からも明白である。
しかし、そのことに驚いたわけではない。
驚きを禁じ得なかったのは米国政府との共同出資者となった億万長者の名前だ。ウィーラーの表現を借りると、パックス・アメリカーナの代理人を演じる「黒幕勢力」である。
闇の世界から光の世界へ出てみると、それはウィーラー自身のボスであるピエール・オミダイアだった。
そう、独立系のメデイアの年代誌においては、これはもっとも魔訶不可思議な展開ではないだろうかと思う。パンドによって明かされた資産公開や報告によると、グレン・グリーンワルドの政府攻撃用ブログであるThe Interceptの設立者であり出版者でもあるこの人物が何とウクライナの政権交替のために資金を提供していたのである。
* * * *
ウクライナで革命が起こった時、同国の大統領を追い出すのに主役を演じたのはネオナチの連中だった。しかし、実際の政治的パワーはウクライナの親EUのネオリベラル派、つまり、国務省やワシントンのネオコンあるいはEUならびにNATOにとっては長い間のお気に入りであり、オレンジ革命の指導者ヴィクトル・ユシチェンコの右腕を務めたオレグ・リバチュクのような政治家の手中にある。
昨年の12月、ファイナンシャル・タイムスはリバチュクの「ニュー・シチズン」というNGOのキャンペーンについて報道し、同NGOは「反政府運動を盛り上げ、継続させる上で大きな役割を演じた」と伝えた。
「ニュー・シチズン」は、リバチュクの互いに連携し合って運営され、西側によって支えられている他のNGOやキャンペーン(たとえば、「センターUA」とか「チェスノ」および「ストップ・センサーシップ」)と共に、親ヤヌコクヴィッチ派の政治家に対してお互いに巧妙に連携した反汚職キャンペーンを展開することでその勢力を次第に強めていた。こうして、ニュー・シチズンは昨年の秋キエフへ参集する前にウクライナの地方で力を付けていたのだ。
NGOの活動は非常に巧妙に運営されていたので、ウクライナ政府が彼らのNGOを閉鎖しようとしても汚いごまかしだとして非難される始末だった。2月の始め、NGOグループはウクライナ内務省の経済部門による大規模な資金洗浄の捜査対象となった。しかし、多くのグループはこの操作を政治的な理由に基づいた動きだとして非難した。
幸いなことには、これらのグループには力があった、つまり、そういった攻撃をかわし生き延びるために必要な資金があった。そして、ウクライナにおける政権の移譲を推進する活動は継続された。では、その資金の出所は?
キエフ・ポストによると、ピエール・オミダイアの「オミダイア・ネットワーク」(「ファースト・ルック・メデイア」や「インターセプト」を所有する「オミダイア・グループ」の一角)がセンターUAの2012年の予算である50万ドルの36%、つまり、20万ドル近くを提供した。米国国際開発庁(USAID)はセンターUAの2012年の予算の54%を提供した。残りの資金提供者としては米国政府が支援する米国民主主義基金が名を連ねる。
2011年には、オミダイア・ネットワークは、リバチュクが会長を務めるNGO「センターUA」を介して活動が行われていたいくつかの「反ヤヌコヴィッチ・プロジェクト」のひとつであるニュー・シチズンに対して33万5千ドルを提供した。つまり、最新のテクノロジーやメデイアを動員し、ニュー・シチズンは公共の政策を形作るために懸念を抱く市民たちの能力を強化し、市民活動をあれこれと調整した。「…オミダイア・ネットワークからの支援を得て、ニュー・シチズンはより多くの透明性を求め、自分たちにとって重要なテーマに市民らを招集し、参加させるために市民に対する支援をさらに強化したのである。」
2012年の3月、リバチュクは自分がオレンジ革命を準備していたと自慢した(2004年のオレンジ革命を背後から操ったウクライナの「アナトリー・チュバイス」であると…)。 [訳注:アナトリー・チュバイスとは? ソ連邦の崩壊後、ロシアはイエルツイン大統領の下で急速にその政治体制を変えていた。その頃、第一副首相兼蔵相としてアナトリー・チュバイスは国営企業の民営化で辣腕を振るい、IMFや米国国際開発庁との間に太い人脈を築き上げた。リバチュクは伝説的なアナトリー・チュバイスの名前を持ち出して自分のIMFや米国国際開発庁との人脈を自慢したかったのだろう。]
「市民は恐れてはいない。今やわれわれの「議会をきれいにするキャンペーン」ではより立派な議員を擁立するためにそれぞれの大きな都市にNGOを設置し、その数は150にもなっている。オレンジ革命は奇跡だった。非常にうまく行った。大規模で平和的な反政府運動だった。われわれはあのような活動を再現したいと思うし、そうすべきだと思う。」
パンドが調査した詳細な財務記録(下記に添付)は、オミダイア・ネットワークがリバチュクの反ヤヌコヴィッチ・キャンペーン「チェスノ」(「正直に」を意味する)を、ポルタヴァ、ヴィニツイア、ジトミール、テルノピル、スミといった都市やその他の都市を含め、主としてウクライナ語を用いる西部および中部の地域に展開するための資金を提供したことを示している。
* * * *
オミダイアにとってオレグ・リバチュクへの資金援助は一体何を意味するのかを理解するには歴史を紐解く必要がある。リバチュクの背景にはソビエト体制崩壊後によくある、機にうまく便乗するパターンが見られる。それはKGBの諜報機関との繋がりに始まり、ソビエト崩壊後のネオリベラルなネットワーク作りにまで至る。
ソビエト時代には、リバチュクは軍隊で言語コースを学び、卒業生の半数はKGBが職場だった。リバチュクはソビエト時代の末期にインドでうさんくさい任務に当たったが、それはソビエトの諜報機関との彼の繋がりについての疑いを一層強めるものだ。何れにせよ、リバチュク自身の説明によると、彼のウクライナの諜報機関(SBU)のトップとの繋がりは2004年のオレンジ革命の間彼にとっては有利に働き、SBUは選挙違反や暗殺計画についての情報を流してくれた。
1992年、ソビエト連邦の崩壊後、リバチュクは新設されたウクライナ中央銀行へ移り、中央銀行のトップであり、オレンジ革命時にはその指導者となったヴィクトル・ユシチェンコの下で対外折衝部門を指揮した。
中央銀行に勤務していた頃、リバチュクは西側の政府や財政支援機構との友好的な関係を築き、オミダイアが後押しをするウクライナのNGOに対する少額の寄付を含めて、「色の革命」に関与した多くのNGOへの資金提供を行ったジョージ・ソロス(あたかもオミダイアの将来の姿を示すような存在)とも親交を結んだ。(オミダイア・ネットワークが現在行っているように、ソロスの慈善活動部門である「開かれた社会とルネッサンスのための基金」はイエルツイン時代のロシアでは公に透明性や良識のある政府の必要性を唱え、ソロスの財政部門はロシアの債務について思惑買いをし、国家資産のスキャンダルに満ちた競売にも参画した。)
2005年の当初、オレンジ革命の指導者ユシチェンコがウクライナの大統領となり、彼はリバチュクをウクライナのEU/NATOや他の機構への参加を担当する副首相に任命した。リバチュクはウクライナが所有する資産の大規模な民営化も推進した。
その後数年間にわたって、リバチュクはユシチェンコ大統領の内部分裂による多くの問題を抱えた政権でさまざまな担当を経験した。2010年には、ユシチェンコは最近追い出されたヤヌコヴィッチに政権を奪われ、その1年後にはリバチュクはオミダイアおよびUSAIDからの給与を受けることになり、次のオレンジ革命を準備することになった。その2年後、リバチュクはファイナンシャル・タイムスに対して下記のように述べた:
「われわれはもう一度 [オレンジ革命を] やりたいと思うし、そうすべきだと思う。」
オミダイアが提供した資金の一部はひも付きで、ウクライナの各地方の中心都市でリバチュクが主催する「議会を清浄にする」と名付けられたNGOの設立費用に充当するという具体的な目的を持っていた。昨年の11月に始まったユーロマイダン・デモの直後、ウクライナの内務省はリバチュクのNGOに対して資金洗浄の容疑で調査を開始した。これはオミダイアの名前を危険な政治闘争へ引きずり込んだ。
2月10日のキエフ・ポストに掲載された『リバチュク:民主主義を推進する非政府組織が「滑稽な」捜査に直面』という表題のついた記事は下記のように報道をした。
「警察は西側の寄贈者によって資金を提供されている公共部門を監視する機関であるセンターUAを資金洗浄の疑いで捜査を行っている、と同グループが述べた。このグループの指導者であるオレグ・リバチュクは、当局はこの捜査によってウクライナにおける民主主義や透明性ならびに言論の自由や人権を推進する他の非政府組織に対して警告を与えようとしているようだ、と言った。」
「センターUAによると、内務省のキエフ経済犯罪ユニットは12月11日に捜査を開始した。しかし、最近は、捜査官は捜査の段階を高めて、さらに200人程の参考人を尋問した。」
「…センターUAは年次報告書によると2012年には50万ドル以上を受け取った。その54%は米国国際開発庁が資金提供をしているプロジェクトであるPact
Inc.からのもので、その36%近くの資金はeBayの創始者であるピエール・オミダイアと彼の妻によって設立された基金オミダイア・ネットワークから受け取ったものだ。他の寄贈者としては億万長者のジョージ・ソロスが主な創始者となっている「国際ルネッサンス基金」や米国議会によってほとんどの資金が賄われている「米国民主主義基金」が含まれる。」
* * * *
上に記したすべてが示唆することはジャーナリストの利害関係としては最悪の事態となるのではないかという点だ。つまり、オミダイアは外国の政府に干渉する米国の対外政策関連省庁と一緒に仕事をし、アメリカ帝国のよく知られた省庁と共に政権転覆のために資金援助を行う。その一方で、オミダイアは「独立精神の旺盛なジャーナリスト」を採用し、拡大の一途を辿るこのチームは米国政府の国内や外国での行動を監視し調査すると誓っている。さらには、同グループはこれらの政府機関とは「敵対関係にある」ことを吹聴している。
「ファースト・ルック」のスタッフとして働くジェレミー・スケイヒルは「デイリー・ビースト」に次のように語った:
われわれは内部でこの件については長いこと討論してきた。たとえば、もしホワイトハウスが何かの記事を出版してくれるなとわれわれに依頼してきた場合のわれわれの立つ位置とか… われわれについて言えば、当方は敵対的な立場を貫きたいから、彼らは一体誰に電話をかけたらいいのかさえも分からないだろう。「[ニューヨーク]タイムス」や「[ワシントン]ポスト」へ電話をするときは誰に電話をしたらいいのかを彼らはよく知っている。われわれに対しては、誰に電話をするのだろうか。ピエール?それとも、グレン?
困難な問題がたくさんある中で、オミダイアはスノーデンのNSA問題に完璧なアクセスを持っているたった二人のジャーナリストを二人とも自分の配下におさめているという事実ほど重大なことって他にあるだろうか。グレン・グリーンワルドとローラ・ポイトラスのことだ。何故か、奇妙なことにUSAIDと一緒になってウクライナのクーデターに資金を提供していた億万長者自身がNSAの秘密情報に対してアクセスをすることができるという特殊な状況にある。しかし、独立心が旺盛なジャーナリストでこのことについて懐疑的な声をあげる人はごく僅かだ。
より大きな視点から見ると、これは21世紀の米国社会の不平等から来る問題だ。つまり、億万長者が権勢を振るう時代の産物だ。われわれ皆が戦いを挑まなければならない問題だ。パンド・デイリーの18人の投資家にはマーク・アンドレーセン(ピエール・オミダイアが会長を務めるeBayの取締役のひとり)やピーター・スイール(私は彼の政治観を調べてみたが、気に食わない)が含まれている。
しかし、そういったことよりも喫緊の問題は一体何がオミダイアを特別な存在にしているのかである。他の億万長者たちとは違って、オミダイアは特に何も獲得をしなかったが、マスコミ報道には決して批判的ではなく、特に自分が雇ったジャーナリストによる報道は褒めそやしている。独立心が旺盛なメデイアの生き残りたち、つまり、グリーンワルド、ジェレミー・スケイヒル、ウィーラー、私の前のパートナーであるマット・タイッビ、そして、ジェイ・ローゼンといったプレスの「批評家」、等からなる「夢のチーム」を手中に収めることによって、彼は「静穏」と「へつらうメデイア」の両方をものにしたのである。
これらは両者とも非常に有用だ。静穏、それはオミダイア自身の海外や国内での活動に関してジャーナリストの好奇心を皆無の状態に維持することができるというものだ。これは彼の時代の独立プロのスターたち全員を雇い入れることによって得たものだが、彼にとっては費用がかかる。しかし、余禄のひとつとしては、この投資は安い給与に甘んじながらも、いつの日にか自分も彼の下で働きたいといった希望を持っている非常に多くの連中を始めとして、オミダイア・ネットワークの財政支援にはあずかってはいないメデイアの監視役からさえも静穏を勝ち取るということだ。
また、吹き出したくなるような失言を招くこともある。たとえば、スケイヒルは「デイリー・ビースト」にこう喋った。彼のボスは「ファースト・ルック」の日々の運営に直接的な関与をしているとのことだ。
「オミダイアはいつもある種の政治的な話をもってくるが、私はNSA問題や拡大する戦争行為といった政治的なテーマは彼自身の存在理由の中でもはるかに重要な場所を占めているように思う。これは単なる脇役のプロジェクトではない。ピエールは社内メッセージでは誰よりもたくさん書いている。とは言え、細かい点まで指示する訳ではないが… 彼はビジョンを持っている。彼のビジョンは米国人のプライバシーへの挑戦に対して闘うことだ。」
さて、ウィーラーは彼女自身の答えを持っている。「そう。革命グループは部分的に米国政府によって資金援助されていたし、私自身のボスからも資金を受け取ったいた。」 これを受けて、ファースト・ルックの社内メッセージには気まずい質問が掲載されるのではないかと、誰もが思うことだろう。
ウィーラーやスケイヒルおよび他の同僚たちが自分たちが抱いている懸念を一般大衆と共有するかどうかという点は、オミダイアの他のビジネスに携わる連中の立場からも、あるいは、ウクライナにおける共同出資者である米国政府の立場からからも、ファースト・ルックの喧伝された独立性について多くを語ることになろう。
編集者ノート: パンドはこの記事を出版する前にオミダイア・ネットワークにコメントを求めたが、出版の時刻までに回答はなかった。もし回答があったら、われわれはこの記事を更新する予定だ。
* * * *
「チェスノ」の文書はUSAIDおよびオミダイア・ネットワークからセンターUAに与えられた資金のすべてを示している:
Photo-2
チェスノの文書は地方都市における活動のために行われた数多くのオミダイアからの資金提供を示している:
Photo-3
<引用終了>
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ここで、この記事の仮訳は終了した。
内容を読み進めるにしたがって、米国の億万長者たちが「慈善事業」と称する活動の実態が非常に具体的にその姿を現し始めたことに気付いた。ここで、個々の慈善事業そのものの善悪を主張するつもりは毛頭ないが、慈善事業のもっとも大きな目的は、やっぱり、自分自身のビジネスの拡張にどこか遠くのわれわれの目につかない場所で結びついているように思える。果たして、慈善事業を営む億万長者は「それは富を持たない一般大衆の僻目だ」として完全に否定することができるのだろうか?
この記事は、われわれにとっては日頃まったく理解できない資本主義システムの深層で何がどのように起こっているのか、どんなからくりでNGOが運営されているのかといった疑問に対して明確に答えてくれたように思う。
ジャーナリズム精神は死んだと言われ、西側のメデイアはまるで「プレステイチュート」のようだと、その腐敗しきった実態を揶揄されている昨今である。そんな中、米国の諜報機関のひとつである国家安全保障局(NSA)が市民の電話や各国首脳の電話を盗聴していたという事実をエドワード・スノーデンが暴露した時、機密情報を持ち込んだ相手先はジャーナリズムの独立を謳うグレン・グリーンワルドとローラ・ポイトラスだった。われわれ一般大衆は彼らの勇気ある行動に目を見張ったものだ。
その彼らも、ここに引用されているように、ピエール・オミダイアとう億万長者の下で働いている。このような現実を見ると、ジャーナリズムが完全に独立した状態で過ごすことは名実ともに非常に困難だと思う。これらのジャーナリズムのチャンピオンが報道する内容にも何らかのバイアスが働くかも知れないのだ。そうした実態がこの記事で暴かれてしまった今、グリーンワルドやスケイヒルは独立心が旺盛なジャーナリストとしてこれからどのように振舞っていくのだろうか。
何はともあれ、この記事がもっとも貢献した点は、米国国務次官補のヴィクトリア・ヌーランドが昨年の12月に述べた「これまでに米国は50億ドルもウクライナへ注ぎこんだ」という言葉の内容についてより具体的にその内容を理解することができるようになったことではないだろうか。それと同時に、ウクライナでの政変を通じて、米国政府ならびに億万長者の慈善事業が如何に他国への干渉に関与してきたのかについてもその実態が明らかになったことだ。他のさまざまな情報と組み合わせてみると、ウクライナで用いられた政権交代のプロセスが非常に明確に浮かび上がってくる。
ただ、ウクライナの新しい政権は脆弱性をはらんでいるように思える。それはウクライナ市民の全員が参加して選択した結果ではなく、選挙で選出された大統領が一部の活動家たちによって暴力的に追い出され、自薦の新政権がその後へ居座っただけという事実があるからだ。
参照:
注1: Thousands rally against
'illegitimate govt' raise Russian flags in eastern Ukraine: By RT, Mar/01/2014,
http://on.rt.com/bb4ttg
注2:Pierre
Omidyar Co-funded Ukraine Revolution Groups With US Government, Documents Show:
By Mark Ames, PandoDaily,
Feb/28/2014
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