農林水産省のウェブサイトによると、日本の2015年度の食糧自給率はカロリーベースでは魚介類の国内生産及び自給率の高い米の消費が減少する一方、小麦及びてん菜の国内生産が増加したことから、前年度と同率の39%であったという。
2014年に日本に輸入された主要食糧の国別輸入割合を見てみよう(出典: 「知ってる?日本の食糧事情」:農林水産省のウェブサイトから。2015年10月発表)。
大豆(1,939億円): 米国:63%、ブラジル:19%、カナダ:16%、その他:2%。
小麦(2,085億円): 米国:51%、カナダ32%、オーストラリア:12%、その他:1%。
トウモロコシ(4,085億円): 米国:84%、ブラジル:8%、ウクライナ:5%、その他:2%。
牛肉(3,065億円): オーストラリア:51%、米国:40%、ニュージーランド:5%、その他:4%。
豚肉(4,564億円): 米国:34%、カナダ:18%、デンマーク:16%、その他:32%。
水産物(1兆6,569億円): 中国:17%、チリ:9%、米国:8%、ロシア:7%、タイ:7%、べトナム:6%、ノルウェー:6%、インドネシア:6%、韓国:5%、その他:28%。
こうして、主要な輸入食糧を見ると、米国からの輸入がいかに多いかが分かる。
そして、米国ではGM作物への転換が進んでいる。ウィキペディアの情報によると、2010年に米国で作付けされたトウモロコシの約90%は遺伝子組み換え(GM)トウモロコシであった。大豆については、2015年に米国で作付けされた大豆の94%がGM大豆であった。
大豆は味噌や醤油ならびに豆腐や納豆の原料として日本人の食生活ではもっとも身近な食材のひとつである。大豆を抜きにしては日本の食生活を考えることは不可能だ。
そこで、GM大豆に関わる品質上の問題点を学んでおきたいと思う。ここに、最近の資料がある
[注1] (注:この資料の日付は不明ではあるが、少なくとも、2014年3月24日よりも最近に作成されたものである)。本資料の表題は「遺伝子組み換え大豆に危険なレベルのグリフォサートを検出」としている。GM大豆に残留するグリフォサートの量とはいったいどの程度なのであろうか?早速、この記事を仮訳して、読者の皆さんと共有してみたいと思う。
<引用開始>
Photo-1
概要:
GM大豆からはグリフォサートの残留物質、ならびに、有毒な代謝産物であるアミノメチルホスホン酸(AMPA)が高い濃度で検出されている。一方、商業的に栽培された非GM大豆や有機栽培の大豆ではグリフォサートの残留物質や代謝産物であるAMPAは何れも検出されない。
(GM)大豆中に残留するグリフォサートの濃度は驚くほど高く、その濃度は管内試験で乳癌細胞に対してエストロゲン様の効果を示すレベルの19,500倍も高い。これらの管内試験で得られた知見は動物の生体内で実際に起こることを反映してはいないかも知れないことから、これらは動物試験を実施して確認する必要がある。そのような低濃度での投与では今までに試験が行われたことはなく、規制目的では安全と見なされて来た。
2013年に発表された研究では、グリフォサートに耐性を示すGM大豆、商業的に栽培された非GM大豆、ならびに、有機栽培の大豆について組成分析が行われた。研究者らはGM大豆が大量のグリフォサートの残留物ならびにその代謝産物であるAMPA(それぞれが平均で3.3および5.7㎎/㎏)を含有していることを発見したが、商業的に栽培された非GM大豆や有機栽培の大豆ではこれらの物質は何れも検出されなかった1。
モンサント社自身は、先に、このようなレベルでのグリフォサートの残留物質は「極端な」事例であると述べていたが、グリフォサートに耐性を持つGM大豆の栽培が広がる一方であることから、グリフォサートの「極端に」高いこの含有率は新たな標準的な状況となった2。
もっとも重要な問題点はこうだ。つまり、これらの含有率において「食品として安全であるのか?」という点だ。2013年に個別に発表された管内試験結果は何かの糸口を与えてくれよう。
この実験では、グリフォサートが単独で人の乳癌細胞においてエストロゲンの代替物として挙動し、10-12モルという非常に低い濃度であってもがん細胞の成長を促進することが分かった。その毒性は10-9モルで最大となり、さらに濃度が上がると毒性は低下する3。
これは投与量と反応が非線形を示す好例であって、投与量に比例して毒性が高まるわけではなく、投与量が増加すると毒性は低下した。この種の反応はホルモンの機能を阻害する内分泌撹乱物質の典型的な挙動である4。
この試験結果を見ると、低濃度にて、環境と関連性のある濃度でエストロゲン様の作用を示すことが判明した。また、この研究は大豆に含まれているゲニステインと称される植物性エストロゲンとの間で追加的なエストロゲン作用があることを示した3。
この実験でもっとも毒性が高い濃度である10-9モルは169ng/Lまたは169 pptのグリフォサートと等価で、10-12モルのグリフォサート濃度は0.169ng/Lまたは169 ppqに相当する。169 pptのグリフォサートはEUで飲料水に許容されている限度を上まわる。現在、許容含有率はひとつの除草剤成分に対して100ng/Lまたは100pptと設定されている。さらに濃度を下げても、明白なエストロゲン効果が10-12モルになるまで継続的に観察された3。 この10-12モルの濃度はEUの許容限度よりも遥かに低い値である。
換言すると、グリフォサートはエストロゲン効果を示し、EUの飲料水基準よりも低い濃度で試験管内の癌細胞の増殖を促進したのである。
GM大豆に見い出されるグリフォサートの残留物濃度と比べた場合、これらの濃度は何を意味するのだろうか?
(AMPAを除き)GM大豆に含まれるグリフォサートの含有率である3.3
mg/kgを取り上げてみよう。この含有率は途方もないほどに高い数値であって、エストロゲンを代用する効果を示し、試験管内で人の乳癌細胞の増殖を促進させる濃度の19,500倍も高いのである3。
要するに、GM大豆中に含まれるグリフォサートの濃度は管内の乳癌細胞にエストロゲン効果を与える濃度よりも遥かに高いことが分かった。
これらの管内試験の結果は実験動物を使って試験を実施する必要があることを示している。なぜならば、この管内試験は生体内で進行する状況を厳密に反映するものではないからだ。
未解決の問題点:
これらの知見を評価する際はいくつかの適格性や未解決の問題点について配慮する必要がある。
もっとも重要なこととして、われわれは食品や飼料の大豆に含まれているグリフォサートの内でどれだけの量が人や家畜の体へ吸収されるのかについては何も理解してはいない。管内試験ではエストロゲン様の効果を示すレベルが非常に低いことから、ホルモンを撹乱し、乳癌の成長を促進するのに十分な量が体内に吸収され、蓄積されると推測することは可能だ。しかし、グリフォサートやAMPAの吸収率や蓄積率ならびに排出率に関する知識には大きなギャップがあることから、われわれはそれらについて確信を持って言えるわけではない。
Friends of the Earthという団体はEU市民の尿に検出されるグリフォサートの量を調査した6。グリフォサートの量は生物学的に有意であって、特に暴露が長い期間にわたって起こることからホルモン撹乱効果をもたらすと言えそうだ。
(GM)大豆中に平均含有量として検出されたグリフォサートの3.3
mg/kg やAMPAでの5.7 mg/kg はEU市場で大豆のために設定されたグリフォサートの規制値である20 mg/kgよりも低いが、これらのレベルは必ずしも消費者にとって安全であることを示すものではない。また、公にされている許容限度は商業的な製剤設計のすべて(の化学物質)を包括するものではない。つまり、有効成分単独ではなく、補助剤を含めた場合の許容限度を示すものではないのだ。製剤設計全体での長期安全性については何の試験も実施されてはいない。
すべてを総合して見ると、これらの試験結果はGMラウンドアップレディー作物からの食品を口にする市民は毒性物質を、特に、内分泌撹乱効果をもたらし得るだけの量の化学物質を体内に取り込んでいることを示唆するものだ。この可能性を確認、あるいは、反論するにはさらなる動物試験を実施することが是非とも必要となる。
参考文献:
- Bøhn T, Cuhra M, Traavik T, Sanden M, Fagan J, Primicerio R. Compositional differences in soybeans on the market: glyphosate accumulates in Roundup Ready GM soybeans. Food Chem. 2013. doi:10.1016/j.foodchem.2013.12.054.
- Bøhn T, Cuhra M. How “extreme levels” of Roundup in food became the industry norm. Indep Sci News. Mar/24/2014. Available at: http://www.independentsciencenews.org/news/how-extreme-levels-of-roundup-in-food-became-the-industry-norm/.
- Thongprakaisang S, Thiantanawat A, Rangkadilok N, Suriyo T, Satayavivad J. Glyphosate induces human breast cancer cells growth via estrogen receptors. Food Chem Toxicol. 2013. doi:10.1016/j.fct.2013.05.057.
- Vandenberg LN, Colborn T, Hayes TB, et al. Hormones and endocrine-disrupting chemicals: Low-dose effects and nonmonotonic dose responses. Endocr Rev. 2012;33(3):378-455. doi:10.1210/er.2011-1050.
- Council of the European Union. Council directive 98/83/EC of 3 November 1998 on the quality of water intended for human consumption. Off J Eur Communities. 1998. Available at: http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:1998:330:0032:0054:EN:PDF.
- Friends of the Earth Europe. Human Contamination by Glyphosate. Brussels, Belgium; 2013. Available at: http://www.foeeurope.org/sites/default/files/press_releases/foee_4_human_contamination_glyphosate.pdf.
<引用終了>
これで仮訳は終了した。
化学物質による内分泌撹乱作用の場合は、他の毒物に見られるようなその濃度に比例して作用が激しくなるわけではなく、典型的にはより低濃度で作用が高まると言われている。それだけに、内分泌撹乱作用の取り扱いは厄介なものとなる。
ここに引用した情報は、管内試験によると、グリフォサートは人の乳癌細胞の増殖を促進させると報告している。そして、GM大豆には大量のグリフォサートの残留物質や代謝物質(AMPA)が含まれていることから、動物試験を早急に実施して、管内試験で確認された乳癌の促進作用を究明することを推奨している。
除草剤ラウンドアップを製造する企業にとってはこの種の動物試験を実施することに関しては全然気が進まないだろうと私は推測する。また、十分な透明性を確保するには、製造企業にこの種の試験をさせるべきではない。第三者の研究機関に長期にわたる動物試験をして貰い、研究成果を出版する際には外部の専門家による査読を済ませなければならない。この動物試験では今までに起こったさまざまな不祥事を二度と繰り返してはならない。
また、忘れてはならない点として、大豆の他にはトウモロコシや小麦を介しても残留グリフォサートがわれわれの体内に取り込まれる。さらには、GM大豆やGM菜種を原料とする食用油やGM飼料で育てられた家畜類からの肉も残留グリフォサートの供給源となる。グリフォサートによる汚染は驚くほど広範に広がっている。要するに、今日の食材の多くにおいて安全性の問題は未解決のまま放置されているのである。
環境中の毒物に関する専門誌に掲載されている2014年の文献
[注2] によると、その結論は下記のように述べていることをご紹介しておきたい(斜体で示す):
グリフォサートの残留物質は食べ物を介して人や動物に到達し、尿中に排出される。グリフォサートが尿中に検出されることや動物の組織に蓄積されるということは、たとえそれが低い濃度であっても、ただならぬことである。グリフォサートが人や動物に与える影響は十分に理解されてはいないという現実は脊椎動物だけではなく目標外の他の臓器に関してもグリフォサートの残留物質を調査しなければならない正当な理由となる。
♞ ♞ ♞
米国ではGM大豆の作付は94%にもなっており、すでに飽和状態に近い。日本への輸出国であるブラジルやカナダでも同様の趨勢にあるだろうと容易に推測される。要するに、日本へやって来る大豆の大部分は商業的に大量生産されるGM大豆であって、生産コストが割高となる有機栽培で生産された大豆ではないことを考えると、大豆系の食品に含まれるグリフォサートの健康に対する脅威は今や計り知れないほど高くなる。大豆が食生活の基本的な部分を占めている日本の消費者にとって本件は決して軽視できない課題である。
グリフォサート系除草剤が世界中で多用された結果、雑草はこの除草剤に対して耐性を獲得し始めた。デユポン傘下の種子メーカーであるパイオニア社が掲載するウェブサイトによると(表題: Glyphosate
Resistance in Weeds)、除草剤を連続使用すると4~5年で耐性を獲得し、雑草管理が破綻した例があるという。北米では16種類の雑草が耐性を獲得しており、全世界では35種の雑草が耐性を獲得。日本でもよく見かけるヒメムカシヨモギやwaterhemp
[訳注:和名は不明です] は特に耐性を獲得することに適しており、耐性株を容易に増加させることができるそうだ。
こうして、この除草剤とGM作物とをセットで使用する農家は除草剤の散布量を増やさなけれならない。雑草はさらに強い耐性を獲得する。こういった悪循環に陥り、同一の農地に投入しなければならない除草剤の量は格段に増加する。
ここで、Friends of the Earthという団体が調査したEU市民の尿に検出されるグリフォサートの量を確かめておこう。この調査結果は2013年6月に公開された。欧州における消費者がどれだけ汚染されているかを示すものだ。原典は引用記事の参照文献として6番目に掲載されているものだ。
逐語訳ではなく、概要を下記に掲載してみよう(斜体で示す)。
18カ国のボランティアから尿サンプルが採集された。全体の平均値として、全ボランティアの44%から微量のグリフォサートが検出された。国別で見ると、マルタのボランティアではその90%から検出され、英国やドイツあるいはポーランドは70%、オランダは63%、チェコは60%、ベルギーやラトヴィアは55%、キプロスは50%、スペインやクロアチアは40%、ハンガリーやフランスは30%、オーストリアやジョージアは20%、スイスは17%、ブルガリアやマケドニアでは10%からグリフォサートが検出された。これらのボランティアはほとんどが都市居住者であって、この尿検査の前にグリフォサートを扱ったことはない。
総論的に言うと、非常に多くの人たちの尿からグリフォサートが検出された。しかしながら、何を経由してグリフォサートが体内に入ったのかは明らかではない。
Friends of the Earthの著者は「・・・何を経由してグリフォサートが体内に入ったのかは明らかではない」と言っているが、普通に考えると、グリフォサートが人の体内に取り込まれる経路は飲料水や食品である。また、空気を介して取り込むことも考えられるが、ここで報告されている事例は除草剤を散布する農業関連の従事者に関するものではなく、都市居住者であることを考えると、空気を介して体内に取り組む状況は極めて稀であろうと思われる。飲料水と食品が最大の供給源だ。
世界中でもっとも広く使用されている除草剤に関して、人の健康に及ぼす影響についての調査がかくも疎かにされているという現実にわれわれ消費者はもっと関心を払い、健康な食生活を確保するために抜本的な改善を求めていくべきであろう。
さらには、これらの報告は欧州や北米におけるものであって、日本ではないとして無関心にやり過ごすようなことは決してあってはならないと私は思う。日本でも、多くの食品がグリフォサートによって汚染されているに違いない。グリフォサートによる食品の汚染もグローバル化しているのだ。
私の懸念が完全に外れてくれればそれほど嬉しいことはないのだが、食糧の自給率が非常に低い日本では、実際には、欧州に比べて汚染の度合いがもっと進行しているのではないかと懸念する次第だ。
参照:
注1: Potentially
dangerous levels of glyphosate found in GM soy: From THE DETOX PROJECT, detoxproject.org/glyphosate/potentially-dangerous-level..
注2: Detection
of Glyphosate Residues in Animals and Humans: By Monika Krüger, Philipp
Schledorn, Wieland Schrödl, Hans-Wolfgang Hoppe, Walburga Lutz and
Awad A. Shehata, Journal of Environmental & Analytical Toxicology, Jan/31/2014
Awad A. Shehata, Journal of Environmental & Analytical Toxicology, Jan/31/2014
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