2019年2月1日金曜日

ロシアゲートの調査を支援して来た元CIA長官が共謀論から後退


ロシアゲートとは2016年の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補を下した際、敗退を喫したクリントン陣営がトランプの勝利はロシアの支援があったからだという作り話を持ち出し、トランプ新政権の国内政治を機能麻痺に陥れた事件である。国内政治ばかりではなく、米ロ間の外交活動も低迷し、相手国に対する不信感は前回の冷戦時のそれよりも悪化し、史上最悪のレベルに達してしまったと言われている。

米国は中距離核兵器全廃(INF)条約の破棄を持ち出している。そうなるとヨーロッパを舞台にした米ロ間の軍拡競争が再開され、偶発的な軍事衝突がいつ起こるか分かったものではない。大規模な核戦争に発展する下地が出来てしまう。つまり、人類は地上から消されてしまう可能性が格段に高まる。最悪のシナリオである。

ところで、このブログの主要な関心事のひとつはわれわれが住んでいる地球上から核兵器を排除し、核戦争の恐れがない地球環境を次世代に送り届けることにあり、非力ながらも、私自身はその流れでブログを継続してきた。米ロ間の新冷戦が最悪のレベルに陥っていると言われる今、核の脅威については少しでも多くの関連情報を読者の皆さんにお届けしたいと思い、今までさまざまな記事をご紹介してきた。好むと好まざるとにかかわらず、核兵器そのものや軍事衝突、緊張緩和のための国際条約、等はそれぞれが直接・間接にあなたや私の孫の世代が安心・安全を確保する可能性を大きく左右する。加えて、周りには政治家やメディアが声高らかに述べる政策、解説、見解、ニュース、論説、等、無数の情報が流れている。しかし、それらの情報には真偽が巧妙に入り混じっているのが常であって、それらを選り分けることはわれわれ素人にとっては至難の技であり、膨大なエネルギーと時間が必要となる。

ここに、「ロシアゲートの調査を支援して来た元CIA長官が共謀論から後退」と題された記事がある(注1)。非常に興味深い表題だ。「共謀論」とは大統領選の最中にトランプ大統領とロシアとの間に共謀があったとするクリントン陣営の主張を指している。米議会が推進するミュラー特別検察官によるロシアゲートに関する調査は何も成果を挙げなかったことから、これは元CIA長官個人の考えと言うよりも、むしろ、ディープステーツが元CIA長官に共謀論からの後退を仄めかせることにしたという構図かも知れない。いわゆる出口戦略の一環ではないだろうか?

もしそうだとすれば、ロシア共謀論からのディープステーツの後退は歓迎すべきことだ。米ロ関係の緊張を推進する大きなネタがひとつ消され、緊張緩和の後押しをしてくれることになるだろう。あるいは、まったく別の理由が隠されているのかも知れないが、それは時間の経過とともに真相が表面化してくるのを待つしかない。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。


<引用開始>

CIA長官のジョン・ブレナンはドナルド・トランプとロシアとの間に共謀があったとする主張を派手に支持していたが、最近のテレビ・インタビューではそのポジションから後退し、米大統領の政策は単純に言って不可思議だと述べるに留まった。

火曜日(115日)夜の MSNBCのクリス・ヘイスとのインタビューで、ヘイスが「トランプの政策上のポジションは本質的にロシア人たちとの秘密裡の関係からもたらされたものだ」と繰り返してブレナンが提言していたことに関して彼に迫った時、ブレナンは「そんなことを言ったとは思わない」と述べた。

「われわれが言っていることについては幾つもの事柄が証明されており、トランプの政治行動は米国の国際的な役割を台無しにすると思う」とブレナンは言い、法務省の防諜および輸出管理部門の元長官であったデイビッド・ラウフマンの意見について喋った。彼の意見についてはヘイスがちょうど引用したばかりだった。 

「ドナルド・トランプがプーチンとの間で何らかの秘密の関係を持っていたかどうかは私には分からない・・・ 私はトランプ氏がどうしてこのような事をするのかを質したい。彼は何らかの形でプーチンに恩義を受けているのだろうか?彼はプーチンやロシア人、あるいは、何かを恐れているのであろうか?現在ならびに以前の米政府の数多くの高官や職員らは困惑し、頭をかいて、トランプがこれらの政策を追求する理由を理解しようとしている」とブレナンは司会者に言った。 

これらの言葉はニューヨークタイムズの紙上で、かなり最近、つまり、20188月に「ロシア側の否定」や「共謀はなかったというトランプ氏の主張は、一言で言えば、実にくだらない」と書き、ロシア人がトランプを窮地に陥れたと偽って、そのことを証明しようとしたスティ―ル・ファイルを支持した者にとっては著しい後退を意味する。しかしながら、われわれは今やこれらの事柄の正確さに関しては非常に疑わしいと理解している。

しかし、これはブレナンが最初に口にした主張からは程遠い。7月にヘルシンキでロシアのウラジミール・プーチン大統領との間で開催されたサミットを受けて、ブレナンはこの会合は「重大犯罪と軽犯罪の敷居を高くするが、それさえも超えるものだ。反逆罪に近い」と言って、ブレナンはまたもや米国大統領をこっぴどく攻撃した。

皮肉なことに、ブレナンは起こってしまったこの騒ぎを鎮めようとした。これもMSNBCにおいてだったが、相手はレイチェル・マッダウだった: 

あの時の状況を見ると、火曜日(115日)のヘイスとのインタビューの時と同様に展開したという事実は注目に値すると言えよう。つまり、すっかり定着したロシアゲートの筋書きは、当然のことながら二人の司会者の頬を紅潮させ、二人はトランプに関してブレナンが発した大げさで、遠大な物言いについて彼の誠実さを問うた。ブレナンは確実に得点を挙げるスラムダンクを物にすることに大層熱心であった。どちらのインタビューでも、元CIA長官は彼は自分が言った内容をそのまま意味したのではないとして、前言を翻したのである。

多分、これはブレナン自身の問題である。彼は物事を見極める前にそれに飛びつく。一介の市民になった後でさえも自分はこの国の高度の機密情報にアクセスする権限を与えられるべきだと考える人物にとっては、このような態度はいささか無責任ではないだろうか? 多分、ブレナンが自分の主張を撤回しようがしまいが、彼の衝撃的な文言はトランプに対して激しい怒りを覚え、ロシア政府やロシア人に対して恐怖を感じる民主党員の心を捉えるであろうことは良く分かっているのであろう。CIAでの長い在籍期間中ブレナンはロシアを米国の第一の敵国に築き上げることに焦点を当ててきたのである。

<引用終了>


これで全文の仮訳は終了した。

ブレナンがロシアゲートを支えて来た共謀論から身を引いたという事実は米国の国内政治にとってはかなり重要な出来事であろうかと思う。

何と言っても、彼は元CIA長官という肩書を持っている人物である。彼が発する言葉は大手メディア(NBCニュースおよびMSNBCによって安全保障や諜報に関する分析専門家として)取り上げられ、米国市民の茶の間に送り届けられるからだ。個々の情報が如何に不完全なもの、あるいは、作り話であっても、ひとたびこの情報操作マシーンに乗ってしまうと、それを批判し、論破することは並大抵ではない。辛辣な物言いで定評のあるポール・クレイグ・ロバーツ氏に言わせると、米国の一般市民はあまりにも無頓着で、真実を探り出そうともしない。しかしながら、それが今の米国社会の現実である。

とは言え、最近の世論調査によると(注2)、米国の選挙民の59パーセントはトランプ大統領がミュラー特別検察官が掘り起こした情報を公表するよう希望している。14パーセントは機密のまま維持するべきだと言い、27パーセントはどちらとも言えないと答えた。これらの三つの数値を見ると、大荒れに荒れた2年間の国内政治の結果、共謀論に対する一般庶民の関心は決して低くはなく、むしろ健全であると言えそうである。

民主党が過半数を占める米下院はトランプ大統領に対抗するためにロシアゲートを継続する方針らしい。しかしながら、米国の市民はこのような方針を許容するのであろうか?



参照:

1: WATCH: Ex-CIA Chief Who Pushed Russiagate Probe Backs Off Collusion Theory: By Sputnik, Jan/16/2019, https://sptnkne.ws/k45f 

2: Most US Voters Want Russiagate Records to Be Revealed to Public – Poll: By Sputnik, Dec/31/2018, https://sptnkne.ws/kwvU












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