2022年10月11日火曜日

西側はロシアに対してついにテロ戦争に舵を切った

 

ロシア・ウクライナ戦争との関連で最近立て続けに起こったいくつかの出来事はどこか奥深くで何らかの形でお互いに繋がっているように見える。たとえば、ダリア・ドウギナがモスクワ郊外で車の運転中に爆破され、暗殺されたこと、ノルドストリームパイプラインに爆発物が仕掛けられ、爆破されたこと、そして、今回はクリミア半島とロシア本土を結んでいるクリミア大橋が爆破されたこと、等。これらの出来事に共通して見られる要素は遠隔操作された爆破である。極めて21世紀的な破壊工作だ。

10月8日の朝(6:07am)、クリミア大橋を通行中のトラックが爆発した。これによって3人が死亡したと報じられている。道路橋の被害としてはふたつのスパンが海中へ落下。だが、反対車線のクリミア半島から大陸側のクラスノダールへ向かう道路橋は無事であった。隣接する鉄道橋では貨物列車の一部であるディーゼル燃料を輸送するタンク車両の7 両か燃えた。

匿名のウクライナ高官によると、クリミア大橋の爆破はウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)が行った特殊作戦であった(原典:A senior Ukrainian official says the Crimean bridge was blown up with a bomb in a truck: Oct/09/2022)。

ここに、「西側はロシアに対してついにテロ戦争に舵を切った」と題された最新の記事がある(注1)。これは「セイカ―・ブログ」の創立者であって、特に軍事評論に関しては代替メデイア界では定評のあるブロガー、アンドレイが書いたものである。興味深い要素がたくさん含まれている。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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まず、クリミア大橋でどのような爆発が起こったかを示すビデオについてツイッターで見つけたビデオを投稿したいと思う(オリジナルはこちら)。

私が読んだところによると、爆発物を満載したトラックが爆発し、近くの車も含めて3人が死亡し、炎は鉄道橋を渡っている列車にも及んだ。 その列車は燃料を満載していた。 橋の従業員が驚くべき迅速さで対応してくれたお陰で、損傷はわずか9両の貨車に限定され、影響を受けた鉄道線路は短い区間だけであった。

ビデオを見ると、橋が廃墟と化したかのように想像される。 だが、実際には、鉄道橋と道路橋の両方で24時間以内に交通が再開された(大型トラックを除く)。 言い換えれば、これは「攻撃的だが、危険ではない」(обидно но не опасно)というもう一つの事例だ。

しかし、そういった解釈は多いに間違った考え方である:今回の出来事も極めて危険であることに間違いはない。

  • 欧米の主人からそうするように言われることなく、こういった攻撃を実行するための技術的、政治的手段をキエフ政権は持ってはいなかったことは明白である。
  • ノルドストリーム(NS12に対する破壊工作の直後に起こった今回の攻撃は欧米が今や全面的なテロ戦争に舵を切ったということであって、今や疑う余地はない。
  • ウクライナにおけるNATO軍が主張する彼らが主張するいわゆる「勝利」の全てについて言えば、現実には、ロシアが解放し、広大な地域全体をロシアに編入している間に、彼らはいくつかの村や町を再征服したのであるから、一応これは理にかなっている。
  • そして、ロシアは常に数的には不利な立場に置かれていながらも、それをやってのけた。
  • しかも、101の戦死者数の比率を維持しながらのことである。
  • 言い換えれば、欧米のテロリズムへの「方向転換」は軍事的、経済的、政治的な敗北を認めたことを意味する。

驚く程のことではないが、欧米は「常に」主権意識の旺盛な政府に対してはテロリズムを活用しているが、これはロシアにとっては非常に否定的な展開である。

簡単に言えば、警官・警備員の数よりも遥かに多くの目標が常に存在するからだ。

さらに、テロリスト側はいつでも攻撃の時間と場所を一方的に選択することができる。

これまでのところ、ロシア国内におけるウクロナチによる努力や活動は具体的な利益をほとんどもたらさなかった。つまり、ダリア・ドゥギナの暗殺は彼女を殉教者にし、NS1/NS2への攻撃は本当にドイツとEUを傷つけただけであるが、今回のクリミア大橋の爆発は戦術核兵器を使わなければこの標的を破壊することは非常に難しいことを証明した。

ここで、ベスラン学校占拠事件、モスクワのドゥブロフカ劇場、ブデンノフスク病院、ドモジェドヴォ国際空港、サンクトペテルブルクの地下鉄、等に対するテロ攻撃を思い起こす必要がある。 これらの出来事はすべてがいわゆる「テロリスト集団」の暴力行為によってもたらされた結果であり、すべてが西側の特殊部隊によって運営されていた(そして、今もなお運営されている)(訳注:ベスラン学校占拠事件の詳細については、当ブログで2016103日に掲載した「ベスラン学校占拠事件から10年、生き残った人たちは今でも苦難を背負ったままだ」をご参照ください)。

このような国家が支援するテロ攻撃を打ち負かす方法は基本的にふたつの策しかない:

  1. いわゆるテロ集団に潜入し、テロ活動を運営する欧米の「親機関」にも潜入する。
  2. 一般市民に対して「高い警戒モード」に入るよう説得する。

基本的には、ロシア社会全体が「精神的にも戦時体制」に立ち、それと同時に冷静に警戒し続ける必要がある。つまり、ロシアはバンデライト・ナチスによる攻撃を受けているだけではなく、9/11MH17(そして、他の多くの出来事!)を遂行した連中からも攻撃を受けており、これらは爆撃や暗殺、破壊工作、等を含むイランに対するテロ作戦のすべてを引き起こした連中なのである。

次に、エスカレーションの問題がある。 クリミア大橋への攻撃は明らかな戦争行為だ。

もちろん、アメリカ人のパスポートが都合よく水面に浮かんでいるのが見つかったわけではないので、ロシアの対応はあからさまな軍事的報復攻撃とはならない。 しかしながら、私は何かがすぐに、おそらくは、ウクライナで起こるだろうと推測するが、それは西側の人員・資産・施設を含むものとなるのではないかと予想する。

結論として、米国での中間選挙までは物事はすぐにでもさらに悪化するのではないかと私は推測している。 共和党が勝てば正気が勝利するといった希望はあまり持ってはいない。とは言え、「ほんの少し」は「まったくない」よりはましだ。

その間、ロシアが何らかの恐怖に見舞われるたびに西側の指導者たちが感じる集団的オーガスムスを観察することは私にとっては、単純に言って、衝撃的だ。 真実を喋るとすれば、彼らがわれわれを憎んでいるという事実は私を驚かすことはない。 私がもっともっと驚かされるのは何の罪の意識もなしに、憎しみに満ちた喜びの叫び声が「皆の顔に」見られるという点だ。  そして、私は疑問にも駆られる。

鏡を見る時、その憎しみに満ちた歓喜が自分の目にも映るのであろうか? 彼らがダリア・ドゥギナの写真を見る時、「イエーイ、これでプーチンに対して1点を決めたぞ!」と感じるのだろうか? オランダのカンガルー法廷がMH17便を撃墜したのはロシア(あるいはLDNR)だと宣言した時、彼らは正義が果たされ、有罪者が処罰されたと感じたのだろうか?

ところで、プーチンが最近の演説で「これらのヨーロッパの指導者たちは全てを理解している ― 彼らは理解してはいるのだが、他人の利益に仕えることをより好んでいる」と言って、プーチンが答えた時、彼らはいったい何を見ているのか、あるいは、何も見てはいないのかと問いかけることは間違っていると私は思う。

彼らは何も見てはいないのではなく、むしろ、彼らは何も気にしてはいないのだ。 全然気にしてはいない。 彼らは気にしたことなんて一度もないのだ。

ひとつの質問をして終わることにしよう。上記のことはヨーロッパの支配階級にしか当てはまらないのか?それとも、EUに住んでいるほとんどの人たちに当てはまるのか?

次回ロシアで流血沙汰を引き起こす時、善意に満ちた、高貴なヨーロッパ人たちは一体何をするのだろうか(遅かれ早かれ、何かが起こるだろう。それがテロリストによる脅威の特性であるのだから)。 彼らは歓喜してウクライナ国旗をもっと強く振るのだろうか?それとも、何の反応も示さないのだろうか?

その答えは明らかだ。特にロシア人にとっては明らかである。

アンドレイ記

***

これで全文の仮訳が終了した。

今の時点では専門家による評論の内容は流動的である。遅かれ早かれ、全貌が詳しく報じられることであろう。

そして、昨日(1010日)、今までの報道内容とは違って、一段と詳しい記事が現れた。ぺぺ・エスコバーの最新の記事である(原典:Terror on Crimea Bridge forces Russia to unleash Shock’n Awe: By Pepe Escobar, The Saker, Oct/10/2022 )。その要旨を下記に示そう:

ロシアの調査委員会の委員長を務めるアレクサンドル・バストルキンはこのテロ行為はウクライナ保安庁(SBU)によって実行されたものであるとプーチンとの面談報告で報告している。バストルキンはプーチンにこう報告した。「われわれはトラックの走行経路を特定した。ブルガリアから始まって、グルジア、アルメニア、北オセチア、そして、クラスノダール・・・。運送業者は特定できた。ロシア連邦保安庁の支援を受けて、われわれは容疑者を何とか特定することができた。」

・・・この時点では、ふたつの結論が重要だ。第一に、これはトラックを用いたイスラム国の標準的な自爆テロではなく、テロ攻撃によってもたらされたものだ。第二に、爆発物の梱包はブルガリアで行われたことは確かだ。つまり、ロシアの諜報部門はウクライナ以外の諜報機関が関与したことを示唆している。

・・・この爆発には少なくとも450キロの爆発物が使用された。トラックで運ばれたのではなく、クリミア大橋に装着されたものだ。白いトラックはテロリストが準備した単なるおとりであって、「理由と結果についての幻想を誘うためのもの」であった。爆発物が装着された橋の地点にトラックが到達した時に、爆発が起こった。情報筋によると、鉄道従業員は調査委員会に電子的なハイジャック行為があったと報告した。つまり、テロリストらは鉄道のコントロール系をハイジャックし、燃料を輸送する貨物列車に前方が渋滞しているという偽シグナルを送り、貨物列車側は停車の指令を受け取った。

・・・損傷は道路橋の外側のレーンのふたつのスパンだけで、鉄道橋にはほとんど影響はなかった。結局のところ、クリミア大橋に対するテロの影響は短期間に終わり、しかも、勝利をPRするだけに終わる代物である。西側集団はこぞってこれを祝ったが、実質的な成功物語は無視できる程のものであった。ロシア軍の軍需物資の鉄道輸送は14時間後に再開された。

また、子供の頃家族と共にロシアから米国へ移住し、帰化したドミトリー・オルロフは何時もの皮肉を交えて、次のように述べている(原典:A nice bridge you got there…: by Dmitri Orlov, The Saker, Oct/10/2022:

米国人について言えば、この出来事で面子を保つことは出来ないと思う。このような状況においては、彼らは何時もそうして来たように振る舞うしかないであろう。つまり、勝利を宣言して、早々と帰国することだ。ウクライナでの大失敗を念頭から振り払うには、多分、米国で内戦を始めるしかない。もしもそうなるとするならば、私はアラスカへ出かけようと思う。彼の地で、ロシアへの帰属に関する住民投票を組織化する際にお手伝いをするのだ。ご存知のように、米国によるリースの期間は1966年に満期となった。

今後もさまざまな評論が現れるに違いない。セイカーのアンドレイが述べているように、西側がロシアに対する行動をテロ戦争に切り替えたとなると、これからの出来事はたとえ小さなことではあっても凄惨を極めるものとなるかも知れない。軍事拠点だけを狙うのではなく、民間人や公共のインフラが目標となる。それがテロ行為の本質であるからだ。

そして、相手を翻弄させる目的でさまざまな情報が流され、陽動作戦が展開される。

人類にとっては実に不幸なことである。

 

参照:

1West has now set a course on total terrorist warfare: By The Saker, Oct/09/2022 

 

 


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