前回のブログでは、ロシア・ウクライナ戦争との関連で「全世界のための最後の戦争」と題して投稿をした。あの引用記事はロシア側から見たロシア・ウクライナ戦争を描いており、日本のメディア環境に住んでいるわれわれ平均的な日本人にとっては初めて聞くような内容であったので、見識を広げるという意味では有益であったのではないかと思う。専門家にとっては当然の内容であったかも知れないが、素人の私らにとっては目から鱗のような印象であった。
あの記事に続いて、同じ著者が「新世界秩序に向けて」と題して新しい記事(注1)を書いていることに気付いたので、本日はそれを仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
***
はじめに
30年前、ジョージ・ブッシュ・シニアは彼の良心に基づいて数え切れないほどのイラクの民間人や子供たちの血を流し、「新世界秩序」という用語を初めて普及させた。間違いなく、彼はドル紙幣のスローガンを見てインスピレーションを得たのではないか(結局のところ、彼のような男は他にはいったいどこからインスピレーションを得るというのだろうか?)。だが、ブッシュ・シニアが意味したかったフレーズは過去の30年間で信用を完全に失った。ユーゴスラビア、イラク、シリア、そして、アフガニスタン。今、ここでは、われわれは本当の意味の「新世界秩序」について話しをしている。ウクライナにおいて、あるいは、世界の政治や経済のフォーラムにおいて今まさにそのための戦いが行われている。そして、そのイデオロギー的および軍事的指導者、つまり、新世界秩序を率いる真の勇気を持っている唯一の国はロシア連邦なのである。世界が存続する限り、これはロシアの功績になることであろう。この文脈において「セイカ―」は次のような架空の質問で表題を付けた優れた記事を掲載した:
ロシアの敗北は西側の人々にとってはいったい何を意味するのか?
セイカ―は素晴らしい答えを出してくれたが、私は自分自身の答えを出してみたい。それは彼が述べたことの要約ともなる。つまり、「欧米連合」の手によってもたらされるロシアの敗北は世界の終わりを意味し、その場合、新世界秩序はなくなる。ロシアは敗北しようとはしていないから、世界はまだ終焉せず、新世界秩序の存在は現実のものとなることであろうし、すでに存在しているとも言える。
率直に言って、西側連合は歴史上何度も、何度も、ロシアを攻撃してきた。多くの人たちは13世紀のドイツ騎士団が国際的な汎西洋集団であったという事実は知らない。1812年のナポレオンによるロシア侵攻は西側の12の国家によって行われた。クリミア戦争、すなわち、1854年のロシアに対する侵攻はフランスやイギリス、オスマン帝国、サルジニア人によって行われた。
1914年のオーストリア・ハンガリー帝国軍とカイザー軍に関しては、それも西側連合の努力であった。もしも革命がなかったら、ロシアは1917年後半にはウィーンやベルリンを占領していたことであろう。そして27年後のヒトラーの侵略も同様に多国籍であった。そして、今日では、多国籍NATOによって武装されたキエフ政権の傭兵軍に同様の系譜が見られる。
会談
今日、キエフ政権を指導する米国のリーダーたちは和平交渉が始まることを切望している。和平は2014年2月から2022年4月までの間の何時であっても可能性があったのだが、米国は当時それを望まず、当時は和平を許可しなかった。今となっては彼らは大きな代償を支払わなければならない。米国のエリートは自分たちが栄光の時を失うであろうことを知っている。これは彼らの最後のチャンスであり、旧ウクライナにとっても最後のチャンスだ。これこそが私たちが今話そうとしている点だ。多くの人々とまったく同じように、これらの米国人は大口を叩く。だが、それはすべてがただの熱気であるに過ぎない。そして、ロシアは交渉の門戸を開けたままに維持しておくために米国の要請で会談に応じてはいるものの、ロシアは米国の馬鹿げた要求を無視している。
今日、ロシアにとっては会談を行う理由はない。ロシアはウクライナでNATOとは首尾よく戦っており、非武装化を進めている。誰もがそのことを知っている。しかし、米国は傀儡政権のコントロールを失っているため、われわれは危険な瞬間に曝されてもいる。イラクのフセインやアフガニスタンのビン・ラーディン、シリアのイスラム国武装集団、そして南米のギャング集団によるいくつもの傀儡政権を後押ししてきたが、操り人形として振る舞うことは連中が拒否したために彼らに対するコントロールを失ったのとまったく同じように、米国は今コントロールを失う危険を冒している。おべっか使いのキエフ政権とポーランド、バルト諸国、さらには英国(英国では60年以上にもわたって米国訛りのポップソングさえもが歌われている)といった同盟国は米国人よりも米国人的である。生徒たちは先生を凌ぐほど性質が悪い。
ポーランドに着弾したウクライナのミサイルの件、ならびに、これはロシア人による攻撃だと主張するポーランド人とラトビア人の最近の挑発はその一例であるが、米国はその罠に陥ることを拒否した。本件が出現する前は、キエフ政権によって準備されている汚い爆弾の脅威が注目を集めたが、あれは別の事例である。脅威を察知して、米国はそのナンセンスを止めさせた。英国によるノルドストリームパイプラインに関する対ドイツ破壊工作はさらに別の事例だ。米国がMH-17便撃墜事件の犯人を隠蔽したように、破壊工作の犯人は隠蔽された。だが、キエフやワルシャワ、バルト諸国、そしてロンドンは米国がフセインやビン・ラーディンに何をしたのかをよく覚えておく必要がある。彼らは再び同じことを繰り返す可能性があり、それらすべてのプラグを引き抜くことができる。結局のところ、いつも多くの人々が死んだ。それでも、これらの連中にはいつ停止させるべきかが分かってはいない。この問題はいったいどこから来るのだろうか?
自己妄想
現代の米国・西側のシステムの問題点のひとつはほぼ完全に「心理作戦」、つまり、PRにある。つまり、かつてはプロパガンダと呼ばれていたものが、その後は「スピン」と呼ばれ、そして、それは「フェイクニュース」になった。もちろん、これらの言葉の真の意味はすべてが嘘に収斂する。しかしながら、これらすべての嘘の問題はそれらの嘘には非常に説得力があり、加害者が実際に自分自身を信じ始めてしまう点にある。彼らは自分自身をもゾンビー化する。彼らは自分自身を欺いてしまう。
これこそが現代の西側のエリートたちが幼児のような振る舞いに満ちている理由なのだ。あなたが彼らの嘘を確かな証拠を示して矛盾を突いた場合、彼らはすぐに甘やかされて育った子供のように振る舞い、彼らの乳母車から自分のおもちゃを投げ出してしまう。しかし、もしもそれらの玩具が核兵器であったとしたらどうだろうか?神はキエフやワルシャワ、バルト諸国、ロンドンの子供たちに核の玩具を管理する権限を与えることは禁じている。(そう、ロンドンには核の玩具がある。だが、彼らはそれらを制御してはいない)。
甘やかされて育ってきた子供たちの問題は、あなたが彼らに反論すると、彼らはあなたを「キャンセル」することだ。米国人が言うように、「男性と男の子(ここでは幼児の米国人男性を意味する)の違いは玩具のサイズとコストにある」。したがって、ウオークな西側は決して「検閲」を課すことはしなかった。その代わりに、彼らは「編集コントロール」を行う。もしも国家を代弁しないならば、西側のメディアの存在なんてゼロに等しい。
たとえば、フランスでは、多くの西側諸国と同様に、大統領選挙後不思議なことにはニュース解説者が交代し、新しいジャーナリストが前面に出てくる。その理由はなんだろうか?パリの中心部では大統領は500ものアパートを勝手に活用することが可能で、それらを「友人たち」に無料で貸すことができる・・・。まったくプレスティチュートそのものだ!英国に関しては、BBCが英国の権力機構の一部であり、MI5やMI6からの要員が屯しており、英国国家によって支援された収入に完全に依存していることを誰もが知っている。もしもあなたがそのように振る舞わないならば、・・・。
歴史の教訓
反対する人がいるかも知れない。「しかし、歴史はどうであろうか?われわれは歴史上の過ちから何かを学ぶことはできないのだろうか?結局のところ、歴史は決して繰り返さない」と。そう言う人たちは余りにも純朴過ぎる。残念ながら、歴史は絶えず繰り返されている。その第一の理由は地理は変わらないことである。たとえば、ロシアは常にユーラシアの大国であり、同じ場所にいる。ロシアが南米やニュージーランドへ移動するようなことはない。歴史が繰り返される第二の理由は人間の愚かさにある。ヒトラーは1812年のナポレオンの経験から1941年のロシアの冬について何かを学んだのだろうか?米帝国によるアフガニスタン侵攻は大英帝国のアフガニスタン侵攻から何かを学んだのであろうか?なぜ何も学ばなかったのか。それは傲慢さや盲目によってもたらされた愚かさである!「私は彼らのようにではなく、知的に振る舞いたいものだ。私は二度と同じ間違いを冒したくはない」。以下は、歴史から学ぶべき教訓である。
プーチン大統領はピョートル大帝と比較されてきた。18世紀の変わり目に、ピョートル大帝はヨーロッパへの窓を突破し、ロシアを近代化して、ヨーロッパと競争し、ヨーロッパから身を守ることができるようにした。比較のポイントは分かるが、300年後のニコライ2世との比較をした方が適切だと思う。20世紀の変わり目に、アジアへの窓を突破したのは皇帝ニコラスであった。シベリア横断鉄道を建設し、何百万人ものロシアの農民をシベリアに定住させ、韓国、日本、中国、タイとのつながりを築いたのは彼だった。
確かに、彼の政策は、英国(および米国)が望んでいたように、1904年にポートアーサー(訳注:旅順口海戦)でロシア艦隊を正当に、かつ、信用を裏切って攻撃した弩級戦艦によって阻止された。英国は日本を完全武装し、これらの戦艦は英国で建造された。その37年後、日本が同じレッスンを繰り返したとき、米国は真珠湾で彼らのデザートを味わうことになった。そして、英国は3か月後の1942年、歴史上最大級の英国の軍事災害が起こり、この際に自分たちのデザートを手に入れた。80,000人もの兵力が屈辱にも「アジア的で原始的な」日本人に降伏したのである。そして、それは、ほんの数年後にはアジアにおける大英帝国の終焉につながっていった。
プーチン大統領は、今や、ロシアのアジアへの突破口を完成させたのだろうか?今日、彼が率いるロシアは中国とイラン、インド、インドネシア、トルコ、北朝鮮と同盟を結び、アジアの他の多くの国々は彼の後ろに立っている。もしもプーチン大統領が歴史から何も学ばなかったとしたら、5世代前に始まった仕事を完成させることが果たしてできたのであろうか?
未来
米帝国は本当に巨人である。だが、その足は粘土でできている。帝国はすべてが現実ではなく、情報戦争によって構築された仮想現実に基づいている。そして、本物の岩のようなロシアが今この巨人を襲っている。そして、これが新世界秩序が如何にして誕生して来たのかを示しているのである。それは、米帝国とそれに依存するすべての偽物とそのクラブ組織、つまり、国連やNATO、EU、IMF、世界銀行、G7、G20が段階的に終焉することを意味しており、後者はすでにコントロールを失っている。これらはすべてが巨人の粘土の足であるウクライナによって破壊されようとしている。
ロシア皇帝のニコラス2世はモスクワと北京を6日間で結ぶシベリア鉄道を設立した。それは、北京からテヘランやニューデリーを含めて、モスクワまで走り、ベルリンに到達する本当の新世界秩序の象徴的な基盤である。ベルリンはヨーロッパの真の首都であり、広大に広がるブリュッセル村が首都なのではない。北京・モスクワ・ベルリンの枢軸が形になると、それまでは権力の座から追放されていたあの馬鹿げた反英国支配層が指導する英国さえもがそれに加わりたいと思うであろう。
生き残るためには、つまり、70億人の多極的新世界の秩序に加わるためには、グレート・リセットを標榜する小さな西側世界に生き残っている10億人は謙虚な大きさのパイを食べなければならない。これはすでに始まっている。新世界秩序は、伝統的で、普遍的で、かつ、人間的な価値観に基づいて、グローバルではあるが、グローバリストではない。そして、帝国主義でもなく、公正ではあるが、ウオークでもないであろう。今年の9月30日に行われたプーチン大統領の偉大な演説から引用すると、これらこそが真の価値なのである:
運命と歴史がわれわれを呼び込んだ戦場はわれわれ国民のための戦場である・・・。偉大で歴史的なロシアのために、将来の世代のために、つまり、われわれの子供や孫、ひ孫のための戦場だ。われわれは次世代の精神や魂を損なうように設計された奴隷化や巨大な実験からわれわれの次世代を守らなければならない・・・。今日、われわれは統合された社会を必要としており、この統合は主権や自由、創造、正義にのみ基づくものである。われわれの価値観は人間性や慈悲、思いやりにある。
2022年11月17日記
***
これで全文の仮訳が終了した。
米国を代表とする西側の国際政治の理念は、一言で言えば、金儲けである。すべてがこの一点に収斂する。たとえば、グローバリストの第一人者と目されるジョージ・ソロスの言動や行動を見ると、そのことがよく分かるのではないかと思う。彼が推し進めるグローバリズムは、結果として、何十億人もの人たちを1%と99%に分けて、後者にはそこそこの娯楽を与え、それなりに生活を楽しむ術を施し、彼らを1%に仕えさせ、奴隷化する。そのためにはデジタルID社会の構築が必要であると喧伝する。要するに、ワクチンパスポートは一般大衆をコントロール下に置くための極めて有効な道具であるのだ。新型コロナの大流行は彼らにとっては格好の実験の場であったのではないだろうか!事実、前もってシミュレーションを行う程の入れ込みようであった。グローバリストの仮面を剥ぐと、その姿は極めて醜い。目を覆いたくなるほどだ!
ロシアの理念はそれとは対極にあるようだ。ロシアが標榜する新世界秩序は、伝統的で、普遍的で、かつ、人間的な価値観に基づいており、グローバルではあるが、グローバリストではない。そして、帝国主義でもなく、公正ではあるが、ウオークでもない。米国の二枚舌によって繰り返して苦難を舐めてきた南側諸国にとっては、ロシアが唱える理念や将来像はまさに彼らが手にしたい世界観であり、価値観であるようだ。ウクライナ戦争を通じてロシアは情報戦では米国に負けたのかも知れないが、イデオロギー戦では圧勝したようだ。世界人口の80%がそのことを示している!
こうして、私なりに現状を理解しようと努めてきたが、もちろん、上記とは異なる見解や世界観は数多く存在する。自己妄想に陥ることを避けるためにも、異論や反論にも関心を払って行きたいものだ。
われわれの足元にある現実はこれからどう展開して行くのだろうか?目が離せない。
参照:
注1:Towards the Real New World Order: By Batiushka,
The Saker, Nov/17/2022
日本を含む西側世界を見ていると愚者が治める支配体制だと思えてなりません。そろそろ、民衆が愚者を選んで(選ばされて)統治するという長い歴史を清算するべき時に至ったのだとも思えます。ウクライナでの戦争はイデオロギー戦争に行き着くという気がしています。支配層のイデオロギーの本質を最もよく象徴しているのがネオナチの残虐行為だと思います。最終的に支配層は彼らに頼るしかないのです。西側の支配とは人を人として扱わない、共に生きるという文化の否定に至ったのだと。
返信削除ですが、愚者に預けて、任せていても、なんとか回ってきた世界は壊れつつあります。なぜ、人が人を支配する必要があるのか? メディア支配、政治、経済的な支配、支配という概念そのものが、何だったのか考えるべき時だという気がしてなりません。
kiyoさま
返信削除まったく同感です。
人類の文明は再生産できない限界に到達してしまったのでしょうかね?言い換えると、われわれの文明はそんなに底の浅いものだったのでしょうか?マグナカルタや米国の憲法には実に立派な理念が書かれているのですが、後世の世代はそこに記載されている基本的な概念を理解できなくなってしまったかのような行動をしています。残念ながら、人間集団としての生きる知恵は後退しているように見えますね。