最近(10月24日~25日)、デンマークのコペンハーゲンにて「科学的自由の欠如:原因、結果および治療」と題した会議が開催された。この会議に出席したいけれども、あいにく出席できない専門家のためにはズームによるオンライン出席が準備された。その会議で発表を行った研究者のひとりが「医薬品規制における失敗:基準の低下と制度の腐敗」と題して発表内容をインターネット上で公開している(注1)。
新型コロナの大流行では新たに開発されたmRNAワクチンが投入された。「安全で有効である」と喧伝され、集団免疫を確立するためにはワクチン接種が是非とも必要であるとされ、各国の政府は接種率を競い合った。だが、ワクチン接種の開始から2年が経過した現在、まったく予期されなかった状況が現出している。むしろ、来るべきことが来たと言うべきかも知れない。死者数が非常に多く出たことや、ワクチンの効き目が短いこと、副作用によって毎日の生活に支障を来すような健康被害に見舞われた人たちが決して少なくはないこと、等、好ましくはない事柄がいくつも表面化したのである(訳注:このブログでは9月16日と9月18日の2回に分けて、「イスラエル政府は新型コロナワクチンの安全性に関して深刻な問題点を見い出すも、必死にそれを隠蔽」と題してイスラエルの状況をご紹介した)。
このような現状には医薬品の承認や医療行為に関する規制を行っている筈の米FDAの姿勢が大きな影を落としていることは言うまでもないであろう。換言すると、規制当局のFDAが利益を追求する企業側に捕捉されたのである。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
研究者の目から見た米国の政府機関であるFDAは新型コロナワクチンの承認ではどのような貢献をしたのか、あるいは、貢献をしなかったのかについて基本的な点を学んでおこうではないか。
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最近、私はデンマークのコペンハーゲンで「医薬品規制における失敗:基準の低下と制度の腐敗」と題して発表を行った。
この会議はオックスフォードのCentre for Evidence-Based Medicine (CEBM) ならびにデンマークのInstitute for
Scientific Freedomの主催で開催された。
発表に用いたスライドを下記に示す:
「安全で効果的」という表現は医薬品キャビネットの中で簡単に手が届く錠剤や腕に接種されるワクチンに関してリスクを大きく上回ることが証明されていることを一般の人々に保証するために医薬品の規制当局が何時も使う文言である。そして、これは試験データが厳密に、かつ、独立して行われた評価に基づいているものであるとわれわれ一般大衆は想定する。しかしながら、私が本日提示する情報は医薬品の規制当局が制度的腐敗の犠牲になっており、公衆衛生を保護するという宣誓の言葉に対してしばしば違反していることを示唆している。
英医学会会報(BMJ)のために私が最近行った調査では6つの主要な国家の医薬品規制当局を分析し、利益相反、業界からの資金提供の割合、データの透明性、医薬品承認の経路、等の側面を比較した。
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私が見い出した事柄を要約して、表1(Photo-4)に示す。特に、一番上の行を見ていただくと、すべての主要な医薬品規制当局はまさに規制を行うと誓った相手である業界から資金提供を受けており、オーストラリアのTGAは資金の96%を製薬業界から受け取っていることが分かる。ただし、米国のFDAは資金や人的資源においては世界でもっとも恵まれている規制当局であり、低中所得の国家は規制上の決定をFDAに期待していることから、この発表では米FDAに焦点を当てることにする。
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80年代のHIV / AIDS危機の後、特に擁護団体からは新薬を市場に出すのに時間がかかり過ぎるという懸念が表明された。米国議会は1992年に「処方薬ユーザー・フィー法」を可決し、FDAが業界からの資金提供を受け入れることを可能にした。その資金は1993年の2,900万ドルから2016年には884百万ドルへと膨らみ、30倍にも増加した。現在、医薬品の評価に費やされる資金の65%は業界の手数料から来ている。FDAは、承認のプロセスを迅速化することができるように、より多くのスタッフを雇った。うまく行った。1988年には市場に投入された医薬品のわずか4%が最初にFDAによって承認されたものであったが、資金の調達構造が変更された後、1998年までにそれは66%にまで上昇した。
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現在、FDAによって承認された医薬品の68%は迅速承認制度を介している。これは人々が新規医薬品へのより迅速なアクセスを入手することを意味するため、擁護団体は特に喜んでいる。しかしながら、欠点もある。それはこの迅速承認制度に必要な立証責任は低いという点にある。
一例を挙げると、FDAが「臨床的な知見」ではなく「代理マーカー」の変化をどのように受け入れるかという点である。アルツハイマー病に対する「アデュカヌバブ」という薬品はベータアミロイドタンパク質の低下に基づいて承認されたが、患者の症状に意味のある改善は見せなかった(訳注:アデュカヌマブは米国のバイオジェン社と日本のエーザイにより開発され、FDAによって2021年6月に医療用として承認された。その際、本剤が有効であるという証拠がないことから、3人のFDAアドバイザーが辞任するという非常に議論を呼ぶ決定がなされた・・・。さらなる詳細についてはウィキペディアを参照いただきたい)。
これは製薬会社が自社の医薬品を市場に投入するにあたって、より少ない予算で、より小規模な、堅牢ではない試験を必要とするだけで市場への投入に漕ぎ着けてしまうことを意味している。
FDAは、また、製薬会社が「確認試験」を実施することを条件に、有効性が証明される前に医薬品を市場に投入することを許可している。しかしながら、これらの試験はしばしば実施されないか、薬が効かないことを実証するのに何年もかかる。その間ずっと、その薬は「安全で効果的」というふりをして、市場で販売される。
その結果、迅速承認制度で承認された医薬品は安全上の理由から中止となったり、ブラックボックス警告が出されたりする可能性が高まる。
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医薬品の承認プロセス中にFDAは諮問委員会を招集し、意思決定プロセスに洞察と信頼性を提供する。しかし、最近の分析によると、FDAは同委員会からの独立した意見を求めているが、それほど頻繁ではない。2010年には、承認された医薬品の55%が諮問委員会によって審査が行われたが、2021年にはこの比率はわずか6%にまで減少した。
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FDAは、臨床試験施設について抜き打ち検査を実施して、それらの試験から得られるデータの完全性を確保する。違反や不適切な行為が見い出された場合、FDAは検査報告書を作成する。報告書は一般大衆とは積極的に共有されてはおらず、多くの場合、詳細は情報公開法(FOIA)に基づいた要求を提出することによってのみ取得可能となる。FOIAの処理には数か月もかかることがあり、報告書は大幅に黒塗りされ、入手することの価値は限定的である(スライドを参照)。
2007年、米監察総監室はFDAは試験施設の1%を検査しただけで、米国内および海外で稼働している施設の数に関するデータベースさえも所有してはいないと判断した。FDAは、どれだけの数の試験施設が稼働しているのかを把握してはおらず、それらすべてを追跡することは「人的資源を大量に消費する」と述べている。
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新型コロナの大流行の際、事態はFDAにとって悪化の一途を辿った。ワクチンメーカーがその事業を強化している間、これらの制約によってFDAによる試験施設現場での検査は一定期間停止することを意味した。規制文書によると、FDAはファイザーの153の試験施設のうちで9施設、モデルナの99の試験施設のうちで1施設のみを検査した [訂正:完全承認前に検査されたのは1施設だけでしあったが、緊急時使用許可(EUA)については9施設が検査され、合計10施設になった]。
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特筆すべきこととしては、ブルック・ジャクソンという名前の内部告発者はテキサスに拠点を置くファイザー社の3つのmRNA試験施設でのデータの改ざんについてFDAに苦情を申し立てた。彼女は3つの試験施設の地域ディレクターであり、データの改ざんや患者の盲検化の解除、および、有害事象の追跡を行わなかったこと、等、訓練が十分には行き届いてはいないワクチン接種者を目撃したのである。驚いたことに、ジャクソンの苦情を受け取った後、FDAはこれらの施設について現場検査を実施した形跡はない。
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FDAの証拠基準が何十年にもわたって低下して来たことは明らかだ。当局は製薬業界の資金に大きく依存しているため、医薬品の承認は迅速になったが、医薬品がより安全になったというわけではない。FDAは、医薬品を承認する際に外部の諮問委員会にあまり依存してはおらず、新型コロナ禍においてはホワイトハウスからの多大な圧力に耐えてきたことは周知の事実である。トランプ政権だけではなく、バイデン政権からも圧力があった。証拠があるにもかかわらずバイデンが広範なブースター接種を推進した後、ワクチンのトップ当局者であるマリオン・グルーバーとフィリップ・クラウスは昨年10月に辞任した。今年の政府の説明責任報告書は政府機関のスタッフが大きな政治的圧力にさらされていることを明らかにし、そのような状況が新型コロナに関して「科学的発見の抑制」を引き起こしたと彼らは述べている。
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*** これで全文の仮訳が終了した。 この引用記事はすでに3年にもなった新型コロナの大流行に対する闘いについての反省の記録である。具体的に言えば、これは公衆衛生については第一義的に最善をつくすことが使命である筈の米政府機関のFDAが製薬業界によって捕捉され、彼らの利益を優先するといった本末転倒の行為を犯したことに対する批判である。 Photo-4には主要6カ国の状況が掲載されている。オーストラリア、EU、英国、日本、米国、カナダである。規制当局の予算総額の中で業界からの資金提供がどれほどの割合を示すかが纏めらている。上記の国々の順番でそれぞれの比率を示すと、オーストラリアの96%から始まって、89%、86%、85%、65%、50.5%となる。好むと好まざるとにかかわらず、これらの数値は製薬業界の意向や利便性に沿って新薬の承認や医療行政が歪曲される可能性があることを雄弁に示している。つまり、現在の制度はすっかり腐敗し、危機的な状態にあるのだ。 さらには、独立した外部の諮問委員会や専門分野の学会といえども、真の意味で独立した立場を貫き通すことは、通常、決して容易なことではない。残念ながら、そういった目を覆いたくなるような状況は日本でもさまざまな事例が観察されて来たことは周知の事実である。また、医薬品や食品の業界だけではなく、自動車産業について言えば、製造者側が排ガスの安全基準を守り切れずにデータを改ざんするといった不祥事が内外で報じられたのはそれほど昔のことではない。 そして、最新の記事のひとつがとんでもない米国の状況を伝えている。その内容を下記に付け加えておこう: 私は患者によく尋ねられることがある。「他の医師はどうして今日まで新型コロナワクチンの接種をあれほど強く推進して来たのだろうか?」と。ワクチンの安全性の統計値は驚くほど貧弱であること、ワクチンの有効性は短期間のうちに失われてしまうこと、そして、変異株にも対応しているとされる組み合わせ型ブースターの接種についてはヒトに対する試験データが完全に欠如しているが、これは何故か? その答えは2021年の初めに集団予防接種を促進するために何百もの組織に対して非公開で個人支払いを行う「新型コロナ・コミュニティ部隊」と称する組織化が行われ、米保健福祉省や疾病管理予防センターから個人に流された現ナマの痕跡を辿ることによって明らかになるかも知れない。米国医師会、米国家庭医協会、米国看護師協会、米国産婦人科学会、米国小児科アカデミー、米国小児科学会、米国医学生協会、等の著名な組織が名前を連ねている。総額で130億ドルもの金が個人に流されたのである。(原典:Why Doctors
Push COVID-19 Vaccination so Hard; COVID-19 Community Corps
Funneled Billions of Dollars to Medical and Community Groups: By Peter A.
McCullough, MD, MPH, Dec/07/2022) この腐敗ぶりは目を覆うばかりだ! 上記の「新型コロナ・コミュニティ部隊」を経由して個人に対して金を振りまく政策ばかりではなく、民主党が支えるバイデン政権は公明正大に選挙を行う事さえもできないことを全世界に知らしめたばかりである。イーロン・マスクが最近公開に踏み切った「ツイッター・ファイル」はバイデン政権がツイッター社に対して圧力をかけて、民主党が野党に対して選挙で勝つようにするべく言論の自由を蹂躙した事実を暴露している。政府による悪行は美辞麗句によって、つまり、嘘の上塗りを続けることによって巧妙に喧伝され、その場を凌ぐことになる。しかしながら、たとえあの手この手を駆使して情報のコントロールを行い、当面は首尾よく辻褄を合わせたとしても、時を経るにつれて小さな綻び目から真実の情報が漏れ出す。これが常である。歴史を見ると、JFK暗殺事件や911同時多発テロがまさにそのような経緯を辿っている。政府が調査委員会を設置して、事実を究明すると主張しても、その委員会自身が真実を隠ぺいするのが落ちだ。そうすることが政府高官らにとっては当面の利益となるからである。こうして、政府に対する国民の信頼感は地に堕ちる。 参照: |
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