世界は混沌としている。不確実性が増すばかりのように見える。世界はいったいどこへ向かって進んでいるのか?
言うまでもなく、正確な答えを用意することは至難の技である。だが、われわれの世界がどこへ向かおうとしているのかは正確には分からないにせよ、すでに起こっている出来事を集め、これから起こり得る状況をあれこれと外挿してみることは可能である。ある意味でそれは建設的でさえあると言えるかも知れない。
ここに、「世界規模の紛争のコントロールが効かなくなりそうな11個の兆候」と題された最新の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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世界は重篤な戦争の熱病に冒されているようだ。 世界中の国家指導者がサーベルをガタガタ鳴らしており、それはわれわれ全員を多いに警戒させる。
最後の「世界大戦」が起こったとき、何千万人もの人々が亡くなった。 今回は、数億人、さらには、数十億人になる可能性さえある。今日、われわれは文字通りすべての人類を破壊する能力を持っている。したがって、核兵器が使用される世界的な紛争は絶対に避けなければならない。だが、残念なことには、世界の指導者たちはわれわれをそのような極めて過酷な紛争に追いやろうと決意したかのようである。
過去2~3週間の間に非常に多くの憂慮すべき展開があった。以下に示すのは世界的な紛争が間もなく完全に制御不能になる可能性が懸念される11の兆候だ。
#1 ロシアはベラルーシと戦術核兵器を配備する契約に署名・・・
ロシアとベラルーシの国防相は木曜日(5月25日)にベラルーシの領土内へのロシアの戦術核兵器の配備に関する文書に署名したと、ベラルーシ国防省を引用して、国営のタス通信が報じている。
隣国ベラルーシに駐留する非戦略核兵器の管理はロシア側が維持する、とロシア国防相のセルゲイ・ショイグはミンスクでベラルーシ側の相手であるヴィクトル・フレニンとの合意文書に署名する際に述べた。
「ロシアは核兵器をベラルーシ共和国に譲渡しない。核兵器の管理と使用の決定はロシア側に委ねられる」と彼は述べた。
#2 伝えられるところによると、米国と台湾の当局者は台湾を米国の「核の傘」の下に置くことについて話し合っている。言うまでもなく、そのような動きは中国との戦争の可能性をはるかに高めることになろう・・・
アジア太平洋地域では中国の好戦性が増す中、台湾においては米国による「核の傘」の必要性が高まっているようだ。
中国による潜在的な侵略に対するそのような「核の傘」に対する要請はすでに米国によって日本と韓国に対して提供されており、台湾の防衛専門家からの支持を受けていると伝えられている。
米国の「核の傘」においては台湾における核兵器の配備は見られないかも知れないが、世界の「唯一の超大国」が島国国家へ侵略する中国による核攻撃には現物で対応するのを見ることになろう。
#3 ロシアは米上院議員のリンゼー・グラハムに対して逮捕状 を発行・・・
ロシア内務省は、月曜日(5月29日)、ウクライナでの戦闘に関するコメントを受けて、リンゼー・グラハム米上院議員に対して逮捕状を発行した。
ゼレンスキーの事務所が公開したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との金曜日(5月26日)の会談の動画で、サウスカロライナ州選出の共和党員であるグラハムは「ロシア人は死にかけている」と述べ、ウクライナへの米国の軍事援助を「われわれがこれまでに費やした中では最高のお金だ」と指摘した。
#4 タリバンの上級司令官は「われわれはすぐにもイランを征服する」と豪語・・・
タリバンは日曜日(5月28日)にアフガニスタンとイランとの間の水紛争をめぐって緊張が高まり、少なくとも3人が死亡したことから、イランを征服することができると言って、脅した。
タリバンの公開動画でアフガニスタンを牛耳るテロ組織の上級司令官はタリバンは米軍と戦った時よりも「情熱を持って」イスラム共和国の革命防衛隊と戦うであろうと警告した。彼は、「タリバンの指導者が青信号を出しさえすれば、タリバンはすぐにでもイランを征服するだろう」と付け加えた。
#5 イスラエルは、ここ数か月でシリア領土内のイランの標的に対する攻撃回数を2倍に・・・
ヨアヴ・ギャラン国防相は、月曜日(5月29日)、数ヶ月の在任中に「シリア国内のイラン拠点への攻撃を倍増させた」と述べた。
また、ギャランはイスラエルに対するテヘランによる秘密の海戦を明らかにし、ユダヤ人国家に対して別の戦線を確立するために使用する5つの異なる船の新しい証拠写真を示した。
#6 ヒズボラはイスラエルとの国境のすぐ近くで大規模な軍事演習を実施・・・
この軍事演習は、ヒズボラ支持者たちや数人のジャーナリストを含めて、400人近くが参加したことが公表されただけではなく、イスラエルとの国境の北わずか12マイル、つまり、2006年に採択された国連安保理の決議の下で民兵が活動することは許可されてはいない地域のすぐ外側で実施されたことから極めて珍しいものであった。
#7 ほとんどの米国人はこのことに気づいてはいないが、米軍はすぐにもペルーに配備・・・
(両国のメディア報道の不足を考えると)ペルーや米国の人たちのほとんどには知られてはいないようだが、米軍の要員は間もなくペルーに上陸するであろう。先週の木曜日(5月18日)、ペルー議会の本会議はペルーの軍隊と国家警察との「協力活動」を行うとの表向きの目的で米軍がペルーへ入国することを許可した。
#8 コソボでは激しい衝突により20数人以上のNATO軍兵士が負傷した・・・
アルバニア人当局と地方自治体の建物を占拠しないようにという警告を無視する地元セルビア人との間で継続的な対立が起こり、NATO主導の軍隊と警察は月曜日(5月29日)にコソボ北部で抗議者と衝突した。
この暴力沙汰は、コソボ警察が週末にこの地域の北部においてセルビア人が支配する地域を襲撃し、地方自治体の建物を占拠した後に発生した。抗議デモは双方に負傷者をもたらし、20数人以上のNATO軍兵士が負傷した。
#9 米軍はシリア北部に新しい基地を建設している。
どうやら、シリア領土における広範な地域の米国による占領はすぐには終わりそうもない・・・
米国主導の反ISIS連合はシリア北部のラッカ州に新しい軍事基地を建設していると、クルド人主導のシリア民主軍(SDF)に近い情報筋を引用して、「ニュー・アラブ」が報じている。
米国はSDFを支援し、シリア東部に(少なくとも、公式には)約900人の兵士を駐留させており、米国がシリア領土の約三分の一を支配できるようにしている。報告書によると、現在、シリア東部全体に約24の米国主導の軍事施設が広がっている。
#10 北朝鮮は米国と韓国が「侵略の演習」を行ったと主張・・・
韓国と米国の軍隊は、玄関先での侵略の演習と呼ばれるものは北朝鮮は容認しないとの警告を出していたもかかわらず、木曜日(5月25日)、北朝鮮との国境近くで大規模な実弾射撃訓練を実施した。
この演習は6月中旬まで続く5回の実弾射撃演習の最初のものであり、ソウルとワシントンの軍事同盟はその設立から70年目を迎えている。北朝鮮は、通常、ミサイルやその他の兵器のテストを行うことによって韓国と米国によるそのような主要な演習に対しては反応を見せる。
#11 「セキュリティ上の懸念」により、数十個の「緊急通信用の衛星電話」 を米国上院議員に配布・・・
下院議員の安全保障上のリスクに対する懸念が高まる中、50人以上の上院議員には緊急通信用の衛星電話が配布されたと、この措置に詳しい人物が「CBSニュース」に語っている。これらのデバイスは、2021年1月6日の米国議会議事堂への襲撃の直後に引き継いだ上院守衛官によって上院議員に提供されている一連の新セキュリティ対策の一部である。
この衛星電話のテクノロジーは100人の上院議員全員に提供される。CBSニュースが知る限りでは、少なくとも50人が電話を受け入れ、上院の管理スタッフは上院議員が旅行中はこのデバイスの近くにいるよう推奨している。
これほどに劇的な措置が取られた事例は見たことがない。
彼らはいったい何の準備をしているのだろうか?
知っておきたかった。
しかしながら、私が知っていることは、確かに、われわれは今「戦争や戦争の噂」の時代に生きており、決して越えることができない一線を越すまでわれわれを押しやるのにそれほどの時間は要しないであろうという点だ。
しかし、今のところ、西側世界の人々はほとんどがいったい何が起こっているのかについて感心を払ってはいない。
彼らのほとんどはわれわれの指導者は賢明であって、有能であり、あらゆる種類の核戦争からわれわれを守ることができると思い込んでいる。
著者のプロフィール:「End Times」と題されたマイケルの書籍は、今、アマゾン・コムで ペーパーバック版とキンドル版の両方が入手可能。また、彼の新しいサブスタック・ニュースレターはこちらで検索が可能。
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これで全文の仮訳が終了した。
ここに列記された11個の兆候については、#2、#4、#5、#6、#7に関しては私は何も知らなかった。つまり、情報の壁に制約されて如何に毎日を過ごしていることかと痛感させられた。
#1については、すでに知っていた。ただ、付け加えるとすれば、ロシアの過去30年前後を振り返る必要があると思う。米国政府は東西ドイツを統合する過程において当時のゴルバチョフ書記長に「NATOは1インチたりとも東方へは拡大しない」と約束し、旧ソ連邦を主体としたワルシャワ条約機構軍を解体させ、ゴルバチョフの同意を勝ち取った。だが、間もなく、この約束はクリントン米大統領によってあっさりと破られた。1999年にはポーランドやハンガリー、チェコの加入によってNATOの東方への拡大が始まった。その後もこのプロセスは繰り返され、NATO圏とロシアとの間の距離はどんどん近くなって行った。つまり、NATO側のロシアに対する軍事的プレッシャーはあらゆる機会を捉えて行われて来た。もっとも最近の事例はロシアに接するフィンランドのNATO加盟(4月4日)である。これで加盟国数は31か国となった。ロシアによるベラルーシへの戦術核兵器の配備はこういった一連の米国・NATO側の対ロ軍事攻勢が招来させた産物だと言える。歴史を紐解いてみると、ロシアは常に外圧に反応して対外行動を起こして来たことが明白に読み取れる。したがって、#1の兆候はNATOの東方への拡大がもっとも大きな要因であると私は指摘したい。
#11の米上院議員に配布された緊急連絡用の衛星電話については上院の管理スタッフは上院議員が旅行中にはこのデバイスの近くにいるようにと推奨しているという。
米大統領が核兵器の発射ボタンを押すことができるブリーフケースは大統領が出向く場所には何処へでもお供をするということがよく知られている。今回上院議員に配布された衛生電話もそれとの相似性が感じ取られる。災害時に使われることが多い衛星電話に頼らなければならない事態とはどのような状況なのであろうか?つまり、これは米国による対ロ核戦争のための準備の一環ではないのか?ぶっそうな準備である。
ところで、現実の世界を見ると、米国には戦争推進によって大きな利益を手にする集団が存在する。彼らは戦争するたびにしたたかに金儲けをしてきた。「戦争は金になる商売だ」と言った米陸軍のスメドリー・バトラー少将の言葉を思い起こすまでもなく、米軍は米国の軍需産業が金儲けを実現するための装置である。彼らのやりたい放題に任せておくと、とんでもない状況が遅かれ早かれ現出する。偽旗作戦を行い、戦争を誘発する。たとえば、911同時多発テロ事件(注:今や誰もが気付いているように、政府が任命した調査委員会はこの出来事の原因を究明せず、虚偽に満ちた報告書を提出した)を受けて、イラク戦争が起こった。その前夜ならびに武力侵攻の初期にはイラクには大量破壊兵器が存在するとのメディアによる大合唱が繰り広げられた。だが、結局のところ、イラクには彼らが喧伝していた大量破壊兵器は存在しなかった。不幸なことには、イラク戦争では多数の民間人が犠牲となった。2013年10月、アメリカとカナダの研究者たちは、査読された医学専門誌として権威がある「PLOS
メディシン」誌において、約50万人の民間人が犠牲になったと発表した。
ここで、戦争推進派の心の内を覗いてみよう。たとえば、米国務長官を務めたマデレーン・オルブライトだ。ウィキペデイアを見ると、次のようなエピソードが記述されている:
1996年、CBSテレビの「60 Minutes」に出演して、レスリー・ストールから対イラク経済制裁について「これまでに50万人の子どもが死んだと聞いている、ヒロシマより多いと言われる。犠牲を払う価値がある行為なのか?」と問われた際、「大変難しい選択だと私は思いますが、でも、その代償、思うに、それだけの値打ちはあるのです」(“I think that is a very hard choice, but the price, we
think, the price is worth it.”)と答えた。
私に言わせると、彼女の言葉には「金儲けのためならば犠牲者が出てもすべてが正当化することができる」という傲慢な意識が見え隠れする。
もしもロシア・ウクライナ戦争が核大国間の核戦争に発展したならば、人類の半分は死滅するであろうと推測される。最悪の場合、人類だけではなく地球上の大半の生命は消えてしまうかも・・・ このような究極の事態を避けるには、ロシア・ウクライナ戦争を早急に終結させるしかない。世界の指導者たちは目を覚まして、現在進行している危険極まりない火遊びを直ぐにも止めなければならない。
参照:
注1:11 Signs
That Global Conflict Could Soon Spiral Completely Out Of Control: BY TYLER DURDEN, zerohedge, MAY 31, 2023 (Authored by Michael Snyder via
TheMostImportantNews.com,)
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