最近、米国のブリンケン国務長官が北京を訪問した。訪問の目的は達することができなかったと言われている。
ここに、「ブリンケンが目をパチパチさせた:米国の外交政策のトップによる北京訪問は成果ゼロ」と題された記事がある(注1)。表題にある「目をパチパチさせた」という表現は「たじろぐ」とか「降参する」といった意味合いで用いられる。要するに、ブリンケン国務長官は目標を達せずに、帰国の途に就いたという意味だ。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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アントニー・ブリンケンは、今回の訪中で、太平洋における米国が果たす建設的な役割を再確認することを期待していた。しかし、ブリンケンは低い枝になっている外交的果実しか収穫することができなかったとふたりの専門家が評している。
月曜日(6月19日)、中国の秦剛外相と習近平国家主席との会談後の記者会見で、ナンシー・ペロシ前米下院議長とケビン・マッカーシー現米下院議長による台湾の中国本土からの正式な独立を促す最近の試みからブリンケンは手を引いた 。
「我々は台湾の独立を支持しない。「どちらか一方による一方的な現状の変更には反対することに変わりがない」。
また、彼は中国がウクライナでの軍事作戦のためにロシアに武器や軍需品を供給しているというワシントンの主張を放棄し、中国による度重なる反論を最終的に受け入れたようだ。
マニトバ大学のラディカ・デサイ教授がスプートニク に語ったところによると、バイデン政権は、2月に予定されていた最後の会談が風船事件の後に中断されたとはいえ、「おそらく何らかの訪中をしなければならなかった」のだという。
中国政府はブリンケンを容認してやることで 「道徳的に大きな
こと」を実現していると彼女は述べた。
「中国は、そうする必要がないにもかかわらず、そのようなことをしている」とデサイは言う。「本来あるべき外交を行なっているのだ。」
北京の寛大さは世界全体への配慮からきていると彼女は述べた。
「米国と中国は核大国である。米国と中国は核保有国であり、世界の二大超大国である」とデサイは強調する。「彼らが話をしないということは、非常に危険な世界情勢にあるということであって、中国は世界が核災害の淵に立たされることがないことを約束しようとしている。」
この学者は両国間の緊張は世界における米国の影響力が低下していることの兆候に過ぎないと述べた。
「どうして米国は中国に対してこのような葛藤に直面しているのか?」とデサイは問いかける。「米国が権威を失いつつあるからだ。」
ブリンケンは両国の軍部の間にホットラインを設置することには成果を挙げることができなかったと認めざるを得なかった。この「困難」については、外務省の楊涛北米大洋州局長は米国の経済制裁のせいだと述べている。
ジャーナリストであり、アジア太平洋地域の政治・経済や地政学の専門家でもあるKJ・ノーは、スプートニクに対して、これはふたつの核保有国が
「意思疎通を果たすための言葉を持ってはいない」ことを意味すると語った。
「言葉がなければ、相手に伝えることができるのは行動だけであって、行動を解釈するしかない。そして、軍事行動というものは常に誤解されたり、脅威として解釈されたりする可能性がある。」
アジアに関するこの専門家は、ブリンケンの旅は全体的に「その基礎が非常に低く置かれていたことからも、貧弱な結果に終わった」と述べた。冷たい歓迎振りでもあった。
「発言の中で重要な点は話し合いを続けることに合意したということだ」とノーは言う。「われわれは話し合い、話し合いを続けることに合意した。それ自体は悪いことではない。」
北京からワシントンへのメッセージは2022年にインドネシアのバリ島で開催されたG20首脳会議で合意した「五つのNO」を守ることであった。
「つまり、米国は中国の体制を尊重し、政権交代を望んではいないということだ」とノーが説明。「新たな冷戦を望まず、対中同盟の活性化を求めず、台湾独立を支持せず、中国と対立する意図はなく、中国の発展を抑制しようとはしない。」
時事問題のより深い分析については、われわれのスプートニク・ラジオの番組をお聞きください。
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これで全文の仮訳が終了した。
『北京からワシントンへのメッセージは2022年にインドネシアのバリ島で開催されたG20首脳会議で合意した「五つのNO」を守ることであった』という専門家の指摘が興味深い。「五つのNO」とは「新たな冷戦を望まず、対中同盟の活性化を求めず、台湾独立を支持せず、中国と対立する意図はなく、中国の発展を抑制しようとはしない」ことを指す。米国がこれらの「五つのNO」を順守すれば、台湾有事は起こらないであろう。
ブリンケンは習近平主席に「我々は台湾の独立を支持しない。どちらか一方による一方的な現状の変更には反対することに変わりがない」と述べたと報じられている。これが名実ともに米国によって実行されれば、日本でも大騒ぎになった台湾有事には繋がらない。核大国同士の武力対決は遠のく。
その基層には米国の軍事的パワーが相対的に弱くなっているという現実が存在するのであろう。ウクライナ戦争が進行する中で、台湾を巡って対中戦争を引き起こすことは自殺的である。とすると、台湾有事というシナリオは米国の軍産複合体による軍事物資の拡販が目的であったということになる。日本の世論やメディアを観察すると、彼らは所期の目標を達成したかのような観がある。
さて、今後の展開はどうなるのであろうか?米国の決意は単なる短期的なものなのか、それとも、長期にわたって堅持されるものなのかが試される。
参照:
注1:Blinken Blinked: US
Foreign Policy Chief’s Fruitless Flight to Beijing: By James Tweedie, THE INTEL
DROP, Jun/20/2023
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