2014年4月29日火曜日

ニューヨークでの10日間の休暇がパーになったフランス人女性の一家


日本人で「井田有華」という名前の人は米国への旅行は取りやめた方がいい。
この名前を英語的にAruka daと記したパスポートを見せると、米国への入国を拒否されるかも知れないからだ。米国の移民局の職員にとっては、この名前はひょっとするとアルカイダを連想させる可能性がありそうだ。
「冗談だろう」と思う人が多いかも知れない。
誰もがあり得ないと思うことが最近実際に起こった。これはフランス政府発行のパスポートを持った女性が家族揃って10日間の休暇のためにニューヨークへ出かける途上で起こった。それを報じる最近の記事 [1] を共有したいと思う。
 

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<引用開始>
夫と二人の子供たちと一緒にニューヨークでの休暇を楽しみにしていたフランス人の女性が飛行機への搭乗を拒否された。彼女の名前のせいであった。発音を間違えるとテロリスト集団の名称であるアルカイダとなってしまうからだった。
Aida Alicと夫および二人の子供の一家四人は先週の水曜日に10日間の休暇を利用してニューヨークへ出かける途上であった。しかし、不意にその旅行はおじゃんになった。
「マダム、あなたはブラックリストに掲載されています」と、ジュネーブのスイス航空国際線のチェックイン・カウンターでAida Alicは告げられたのだ。航空会社の幹部の説明によると、米国の移民局はこの女性の米国領内への入国を拒否しているとのことだ。この出来事はフランスの日刊紙、ル・ドーフィネ・リベによって報じられた。
「最初は何かの冗談だろうと思いました。でも、やがて私たちの旅行はパーになったと認めざるを得ませんでした」と、フランス南東部のサヴォア地方に住むAlicさんが語ってくれた。「テロリストとしてブラックリストに掲載されたとなると、誰でも被害妄想に陥るんじゃないかしら」とこの33歳の女性は付け加えた。
Alicさんはリヨンにある米国領事館に電話をした。しかし、ラジオ局「ヨーロッパ第一」によると、この禁止措置については何も返事を貰えなかったという。
彼女にとってはひとつの説明があり得た。それは彼女自身の名前だった。彼女のフランス政府発行のパスポートには最初の欄にAlic 、次の欄にAida と名前が記載されている。これを一緒にして間違えて発音されると、オサマ・ビン・ラデンが組織したテロリスト集団の名称となってしまう。
「アリク・アイーダ、アルカイダ」と彼女は言った。そして、実際には彼女の名前はユーゴスラビア系の名前であって、「アリク」 ではなく、「アリッチ」と発音するのが正式であると説明してくれた。
こうして、彼女の家族旅行は完全におじゃんになってしまった。彼女は米国の星条旗の図案をマニュキアに施してこの旅行を楽しみにしていたという。彼女にとっては成す術もなかった。こうして、自由の女神の像を見るのは無期延期となった。
この出来事の結果、このフランス人一家の損害は航空券だけでも2,700ユーロとなった。しかしながら、この種の損害は保険では補てんすることは不可能であるという。
米国では、テロリストの監視リストには米国人や外国人の名前が何十万も掲載されている。秘密裏に掲載されている人たちは自分の身分を正したくても現実的な方法はない。しかしながら、一件だけ公けに知られている事例がある。あるマレーシア人の女性は米国の国土安全保障省を相手に訴訟を起こし、自分の名前をブラックリストから削除して貰うことに成功したとのことだ。しかし、9年間もの歳月を要した。
<引用終了> 

何とも不条理な話である。こんなことが起こっているとは想像もしなかった。米国の安全保障組織というのは毎年何百億ドルもの予算を注ぎ込んで人的資源もふんだんに使っていると報道されている。米国ご自慢のコンピュータ・プログラムには複雑な言語文化を十分に反映してはいないようだ。間違いがおこらないようにする手段は何も施されていなかったのではないかという気がする。日本の産業界がお得意とする「ポカヨケ」のような考え方は元はと言えば米国のNASAの設計思想から始まったとされる。米国国土安全保障省は先人が築き上げた知識を活用し、コンピュータプログラムに間違いを回避する手法を導入するべきではないだろうか。
マレーシア人の女性が9年もの歳月をかけなければならなかったという事実も非常に不条理な話である。ウィキペデアによると、米国国土安全保障省では216千人もの人たちが働いていると言う。米国では他にも数多くの関連組織がある。無実の市民に対する救済策はあって当然だと思うのだが、現実には、米国の「テロに対する戦争」は何でもありの戦争行為に近いと言えようか。「国境のない対テロ戦争」の恐ろしい一面であるとも言える。
パキスタンやイエメンおよびソマリアでは無人飛行機によるテロリストの掃討作戦が続いている。テロリストの掃討を非難する積りは毛頭ないが、巻き添えになる一般市民の殺害は言語道断だ。米国の爆撃によって不幸にも死亡した民間人のことを「民間人」とは言わないで「巻き添え」と表現するお国柄であることを考えると、米国に対してこの種の損害について救済を求めることはかなり難しそうだ。要するに、聞く耳を持たないのだ。リヨンの米国領事館は今後アリクさんに何らかの回答をする用意があるのだろうか?
「対テロ戦争」では、米国当局は国家の安全保障のためと称して透明性の要求には抵抗するのが落ちだ。そんな中で、ここに引用したアリクさん一家の事例は一般市民がとんでもないことに巻き込まれてしまう可能性があることを、現実の話として十分に認識しておく必要がありそうだ。
日本でも昨年の1213日には特定秘密保護法が公布された。日本でも、遅かれ早かれ、この引用記事と似たような出来事が表面化するかも知れない。市民がまったく知らない部分で不当な制約を受けたり、何処へも持って行けそうもないような損害を被ることが今後少なからず起こるかも知れないのだ。
また、日本が米国の軍事作戦のために自衛隊を海外に派遣するようになると、テロリストの掃討に協力する傍ら、好むと好まざるとにかかわらず新たなテロリストを生みだすことに加担することにもなる。その延長線上には日本の国内さえもが、現在のヨーロッパ諸国と同じように、テロの標的になる可能性が出てくることを理解しておく必要が出てくる。
残念ながら、当面はこういった心配の種が後を尽きそうもないように思える。

参照:
1Alic Aida alert? US holiday ruined for French woman with tricky name: By RT, Apr/25/2014, http://on.rt.com/n7ituu

 

 

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