素人の私にはウクライナの戦場での帰趨はもう決まっているように見える。だが、ロシア・ウクライナ戦争はなかなか幕引きがされない。ウクライナは最後の一兵になるまで戦うと言っていたが、ウクライナは数多くの若者を失い、今や、兵士の平均年齢は43歳になったという。弾薬も尽きて、ウクライナはすっかり消耗している。そういった現実からは目を離して、西側にはロシア・ウクライナ戦争を決着させたくはないという勢力が多いということかも知れない。今秋の米大統領選を睨んで、バイデン政権としてはウクライナが負けたとは言わずに、ロシア・ウクライナ戦争の現状を選挙戦のために少しでも有利な方向へと持って行きたいのであろう。ウクライナが負けたことを米政府が認めたならば、11月の大統領選での民主党のダメージは極めて大きくなる。何時までたっても選挙戦の道具としてしか扱われないウクライナは実に可哀そうだ。だが、この状況こそが代理戦争の現実であると言えよう。
ここに、「バイデンの側近曰く、支援がなければ、ウクライナは数週間または数カ月で敗北」と題された記事がある(注1)。バイデンの側近の間にも率直に現実を見据え、自分の考えを公に述べる人もいるようである。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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米国は既に1130億ドル以上を費やして、ウクライナへの軍事支援や財政支援を提供してきた。ロシアは、このような支援は紛争を長引かせるだけであり、ウクライナに入る貨物は合法的な軍事目標と見なされると繰り返し警告している。
国家安全保障担当のジェイク・サリバン補佐官とアヴリル・ヘインズ国家情報長官は非公開の会合で、米下院議会がキエフ政権への追加援助を承認しなければ、数週間または数ヶ月でロシアがウクライナでの紛争に勝利する可能性があると議員たちに語ったと米メディアが金曜日(1月12日)に報じた。
この会合について詳しいふたりの関係者が米メディアを通じて明らかにしたところによると、ふたりの側近はウクライナはまもなく防空ミサイルを使い果たし、砲兵力も無くなるであろうと述べた。あるホワイトハウス高官はこの説明を「信じられないほどに厳しい状況だ」と表現している。
昨年12月、米国はウクライナへの分割支援の最後の分を議会が承認したと発表した。
「われわれは、今、ウクライナに対して、クリスマス直後で新年直前の支援、つまり、安全保障支援の最後のパッケージを提供したところだ。そして、支援を続けられるように議会の支持を得なければならない」と、当時、サリバンは記者団に語った。
ウクライナは単なる資金上の危機だけではなく、最前線の人員不足にも直面している。昨年秋、西側メディアはウクライナ兵の平均年齢が43歳に上昇したと報じた。また、女性兵士に対する制限を撤廃して、機関銃手や戦車長などの前線での役割に就かせている。
ウクライナ側の防空システムが機能しているにもかかわらず、ロシアは同国中の標的をどこでも攻撃する能力を示している。
ウクライナへの軍事援助の流入はさらに紛争を長引かせ、より多くの死者を出す可能性がある。ジョー・バイデン米大統領は数カ月にわたり、ロシアの特別軍事作戦開始以来、ウクライナに送られた単独支援としては最大規模となる600億ドルの追加支援を議会に可決するよう要求してきた。
米上院はバイデン氏の要求を含む妥協的な資金調達法案を可決する準備ができているように見えたが、下院の共和党は断固としてそれを阻止し、ほとんどの民主党員にとっては有権者層には売り込むことが難しいであろう国境警備に関する重要な改革を要求している。
マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州選出)は国境法案に国境障壁の強化とすでに米国に住んでいる亡命希望者や不法移民の逮捕と強制送還を容易にする改革とを盛り込むよう主張している。
「われわれは法案に関して特定の名称にこだわっているわけではないが、その要素には意味があるべきだと主張したい」と、ホワイトハウスと上院民主党が下院で可決された国境法案を否決する予定だと述べた後にジョンソン下院議長は記者団に語った。
「ウクライナの安全や治安、主権について懸念があることは理解しているが、米国民は国内で主権や安全、安全保障について同じ懸念を抱いていることをわれわれは理解している」と彼は付け加えた。
また、ウクライナとその最大の支援国との間には舞台裏で亀裂が入る兆しも見える。12月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米国上院で予定されていた演説を欠席した。彼は米議員たちにさらなる支援を承認すべき理由を訴える予定であった。12月22日、彼がようやく議員たちに演説をした際、下院の共和党議員213人のうち86人しか演説に出席してはおらず、援助に反対していた議員たちは彼の演説には納得していないようだったと報じられている。
バイデンは米国はウクライナが支援を必要とする限り支援する積りだと約束していた。しかし、最終的には、その選択は彼の手からは離れていった。下院は、少なくとも、国境法案で大きな譲歩をすることがない限りは、支援には反対している。NATO同盟諸国はさらなる支援には公然と反対している。また、ウクライナ軍が前線に送るために男たちを無理やりにバンに乗せている動画が何百本も出回っていることから、ゼレンスキー政権のために戦う意欲のあるウクライナ人がはたしてどれだけいるのかは明らかではない。
「人々は路上で拘束され、バスから放り出されている」と、元ウクライナ外交官のアンドリー・テリジェンコは、水曜日(1月17日)、スプートニクの「断層線」という番組で語った。「ウクライナ人は戦いたくはない。そして、ウクライナの法律に反して、彼らは軍事キャンプに放り込まれ、戦術的な経験をまったく持たないままですぐに前線に放り込まれているのである。
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これで全文の仮訳が終了した。
バイデン政権内部の高官らがウクライナの敗北を認めたことを受けて、ロシアのラブロフ外相は「西側諸国はウクライナ・プロジェクトが失敗に終わっていることを理解し始めているが、戦争による経済的利益と米国の威信を失うことを恐れて、キエフへの支援を止めることができないでいる」と述べている。(出典:West Starts to Understand That Ukraine
Project ‘Failing’ - Russian Foreign Minister: By Sputnik, Jan/30/2024)
海外における戦争によって米国の軍需産業が莫大な利益を得、米国が覇権国としての威信を継続することができたら、米国政府にとっては御の字であろう。だが、ウクライナでの現状を完全に覆すような事態(たとえば、核の使用)が起こらない限り、ウクライナでの対ロ代理戦争ではそのようなバラ色の結末は期待できそうにはないようだ。
米大統領選を控えている今年は何が起こるかを予測することは極めて難しい。今後の成り行きを見守るしかないし、核戦争にならないことを祈るばかりである。
参照:
注1:Top Biden Aides: Ukraine Will Lose in Weeks or Months Without Aid: By Ian
DeMartino, Sputnik, Jan/21/2024
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