2024年6月15日土曜日

キューバにロシア艦隊が現れたことは西側にプーチンの言葉を思い出させる

 

米政府高官の話をCBSが下記のように報じたとして調査報道で定評があり、モスクワに本拠を置くRBCが伝えた(原典:CBS learns that the United States will monitor Russian ships sent to Cuba: By RBC, Jun/11/2024):

米海軍の艦艇はキューバに向けて出航したロシアの軍艦を追跡すると米政府高官がCBSニュースに語った。

キューバ当局は、612日から17日にかけてフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」、原子力潜水艦「カザン」、石油タンカー「アカデミク・パシン」、救難用タグボート「ニコライ・チケル」の4隻がハバナ港に寄港すると発表した。ハバナ政府はどの艦艇も核兵器を搭載してはいないと保証した。ロシア国防省は、5月中旬、フリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」が率いる分遣隊が長期航海に出発したと発表していた。

ロイター通信やCBSなどの報道によると、ロシアは2019年以降で初の軍事演習を行うため、今後数週間にわたって艦艇や航空機をカリブ海に展開する。米当局の出版物に関する担当官によると、これらの艦艇はキューバとベネズエラに寄港し、演習の後、夏の終わりまでこのカリブ海地域に留まり、秋には別の演習を行う予定である。

その一方で、ロシア国防省は次のように述べている(原典:Northern Fleet Detachment Completes Exercises and Arrives in Havana: By Matvey Ignatiev, Gazeta.ru, Jun/12/2024):

北方艦隊の分遣隊は高精度兵器を使用する演習を完了し、キューバのハバナ港に到着した。これはロシア連邦国防省の取材を行ったタス通信が報じたものである。

「キューバの首都の港に入る数時間前、異質な艦艇で構成されたこの戦術的海軍打撃グループは高精度ミサイル兵器の使用に関する演習を完了した」と国防省は述べた。

この分遣隊にはフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」、原子力潜水艦ミサイル巡洋艦「カザン」、中型タンカー「アカデミック・パシン」、海難用タグボート「ニコライ・チケル」が含まれる。

これらの軍事関連ニュースはわれわれ一般庶民の生活に対していったいどのような意味合いを投じるのであろうか。つまり、現在進行している地政学的な世界の動きの中でどんな意味を持っているのであろうか。

ここに「キューバにロシア艦隊が現れたことは西側にプーチンの言葉を思い出させる」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:ロシア海軍の艦艇がキューバの近海に姿を現した後、政治学者のディーセン氏はプーチン大統領の言葉を思い起こした。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がモスクワ政府は自国の経済的利益と安全を守ると繰り返し西側諸国に語って来た。こうして、ノルウェーの政治学者であるグレン・ディーセンはソーシャルネットワーク「X」における自分のページで、キューバ沖に現れた原子力潜水艦「カザン」を含むロシア海軍の艦艇についてコメントしている。

2014年のウクライナでのクーデター後、クリミアがロシアと再統一されたことを彼は思い出す。あの時でさえも、ロシアの指導者は西側がウクライナと一線を越えたと述べた。同国家元首は特別作戦の開始前の2022年に同国の安全保障について同様の声明を発表した。

「ロシアは、今、ロシア領土を攻撃するためのNATOの兵器がウクライナに送り込まれたことに対して行動を起こすと強調している。NATO同盟がロシアからの報復もなしに抑止システムを破壊することをモスクワ政府が許してしまうとすれば、それはあまりにも多くのリスクを背負わざるを得なくなるだろう。米国も同じことをするんじゃないか?」とこの政治学者は述べた。

米国は、キューバにロシアの艦艇が停泊していることを理由に、ウクライナでの緊張緩和を求めた。

海軍総司令官のアレクサンドル・モイセーエフが612日にロシア北方艦隊の分遣隊がキューバに到着したと発表したことを思い出していただきたい。ロシアの原子力潜水艦「カザン」、フリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」、補給タンカー「アカデミク・パシン」、救難用タグボート「ニコライ・チケル」がハバナ港に入港した。その後、ワシントン政府は、この機会に米政権はこの海域におけるモスクワの行動を監視していると述べた。

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これで全文の仮訳が終了した。

上述の「NATO同盟がロシアからの報復もなしに抑止システムを破壊することをモスクワ政府が許してしまうとすれば、それはあまりにも多くのリスクを背負わざるを得なくなるだろう」という指摘は、ロシアの早期警戒システムに対してウクライナが行った最近の攻撃のことだと思う。ニューズウィークの報道によると、その攻撃は下記のような具合だ(原典:Map Shows Ukraine’s Record-Breaking Hits on Russian Nuclear Warning Sites: By David Brennan, May/28/2024):

ロシアの核弾道ミサイルに対する早期警戒レーダー網は、ウクライナ軍による長距離攻撃の主要な標的として浮上しており、過去2か月間に3つの施設がキエフからの無人機によって攻撃された。先週、このような攻撃が2件発生した。まず、522日、クラスノダール地方南部のアルマヴィル・レーダー基地にある「ヴォロネジDM」レーダーにドローンが命中した。この場所には、射程約6,000キロメートル(3,730マイル)のヴォロネジ-DMレーダーが2基設置されている。「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」および「ラジオ・リバティー」のロシア通信が報じたところでは、この攻撃でレーダーが設置されている建物のひとつが損傷したようだ。この場所は、現在キエフの支配下にある最も近い領土からであっても300マイル(480キロ)以上離れている。アルマヴィルの施設に対する攻撃に続いて、より野心的な攻撃がすぐに行われた。526日、ウクライナの無人機がキエフ支配地域から約930マイル(1488キロ)移動し、カザフスタンとの国境に近いオレンブルク地方のオルスク市近郊でヴォロネジMレーダーを標的にした。オルスクの現場での被害の程度はまだ不明。しかし、この攻撃はこれまでで最も長い距離のウクライナの無人機攻撃となる可能性があり、キエフがロシアの長距離レーダーと石油生産施設に対する攻撃を優先するにつれて、標的のリストは着実に増えている。

ロシアには、ヴォロネジMシステムを収容するレーダーサイトが少なくとも5カ所ある。ふたつの施設がサンクトペテルブルク近郊のレクトゥシレーダー基地とカリーニングラードの飛び地にあるピオネルスキーレーダー基地の西側にある。イルクーツク市近郊のミシェレフカレーダー基地、クラスノヤルスク地方のエニセイスク市近郊、アルタイ地方のバルナウル市近郊に他のみっつの施設があって、シベリア全土に広がっている。追加のヴォロネジMレーダー基地が計画されており、占領下のクリミア半島のセバストポリ市近郊、ムルマンスク州の北極圏都市オレノゴルスク近郊、同じく北極圏のコミ共和国北部のヴォルクタ市近郊に建設される予定だ。

これらのニュースを読む限りでは、ロシア・ウクライナ戦争は新しい局面に入ったと言えそうだ。プーチン大統領は自国の安全保障を脅かす行為に対しては核による報復もあり得ると繰り返して発言して来たことを考えると、ウクライナが最近行ったロシアの早期警戒システムに対するドローン攻撃はまさにロシア側の定義にすっぽりと収まるのではないか。とすると、世界は、今、核戦争の勃発により以上に近くなったということだ。

またしても、西側はロシアに対して余計なちょっかいを出したということに他ならない。612日に本ブログに掲載した「ワシントン政府はまさに核戦争を助長しているかのように見える」を髣髴とさせる。

そういった可能性を理解しながら、キューバへやって来た原子力潜水艦が示唆する意味合いを探る必要があろう。ロシアは自国の抑止能力を最大化するために軍事演習を行い、原潜の乗組員の訓練を行っているのである。今回のキューバへの航海では核ミサイルを搭載してはいないとロシア側は言っているが、核ミサイルの搭載が現実のものとなった暁には、原潜は何カ月でも浮上せずに作戦を展開することができ、さらには、水中からミサイルを発射することが可能だ。そして、何よりも重要な点はロシアの艦艇が演習を行っている海域は米国の目と鼻の先にあるキューバであるという点であろう。これはNATOがロシア国境で軍事演習を行い、ウクライナがロシア領内の奥深くへミサイル攻撃を行ったことに対する将来のロシアの報復を明示したものではないだろうか。

究極の状況に至る前に、ロシア・ウクライナ戦争は何とかして収束して欲しいものである!

不幸なことには、何らかの理由から戦争を鼓舞する政治家が後を絶たない。多くの場合、金銭的な利益、あるいは、権力の強化に向けたものである。余程のおバカさんか、深慮遠謀に長けた稀に見る天才であるかのどちらかだ。

参照:

注1:The appearance of the Russian fleet off the coast of Cuba reminded the West of Putin's words: By LIFE, Jun/13/2024

 

 



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