2024年6月2日日曜日

事実が判明 ― 東欧におけるNATOの対空防衛システムは穴だらけ、ないも同然

 

ウクライナ紛争に関して西側諸国はウクライナ軍が西側諸国から供与された長距離ミサイルなどを使用してロシア領内を攻撃することを許すべきかの議論が、最近、NATO外相会議で行われた。その過程で、NATO内における賛成派と反対派の溝はさらに深くなったという。

これまで反対派に回っていた米国は、531日、ロシア領内への攻撃のために米国が供与した武器を使うことを部分的に認めるとの方針に転換した。つまり、ウクライナのハリコフ地域に近いロシア領内を標的にすることを許した。(原典:Biden allows Ukraine to hit some targets in Russia with US weapons: By BBC, May/31/2024

バイデン大統領は、当然のことながら、11月の大統領選との絡みで判断したと評されている。この判断によって、ウクライナにおける対ロ代理戦争はさらにエスカレートすることは間違いない。まずは、ロシア・NATO戦争の構図が公式に明確化されたということに他ならない。それは、虚構の上に虚構を重ねて、ついに、核戦争に発展する危険性を一段と高めたという点がもっとも重要だ。さらには、530日に掲載したばかりの「西側の指導者らは自分たちの政治的失敗から関心を逸らすために第三次世界大戦を始めるのか」を髣髴とさせる点についても留意をしておきたいと思う。

ところで、ここに「事実が判明 ― 東欧におけるNATOの対空防衛システムは穴だらけ、ないも同然」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© AFP 2023 / PETRAS MALUKAS

NATOは対ロ代理戦争のためにこれまでに約束した2000億ドル+の支援の中、何十億ドルもの高度な対空防衛システムをキエフに送り込んだ。ロシア軍はミサイルや重滑空爆弾、無人機を組み合わせて、西側から供給されたこれらの装備を徐々に粉砕している。

西欧のヨーロッパ同盟諸国はウクライナにおける代理戦争がロシア・NATOの直接対決に拡大した場合、東欧諸国がロシア軍を食い止めるのに必要とする対空防衛能力はごく一部しか持ってはいないのが現状である。

フィナンシャル・タイムズ紙が引用したように、これは同盟側の内部計算に詳しい当局者にとっては最大の懸念である。当局者らは、英国に本拠を置く経済紙に対して、現在、「全面的な攻撃」が起った場合、NATOはロシアとのいわゆる東側側面を防衛するのに必要とされる能力の「5%未満」しか所有してはいないと語った。

「対空ミサイル防衛能力は東欧を侵略から守る計画の主要な部分を占めている。だが、今のところ、われわれにはそれがない」と、匿名のNATO上級外交官は同紙に語っている。

「対空防衛は我々が抱えている最大の穴のひとつだ。われわれはその事実を否定することはできない」ともう一人のNATO外交官が語った。

外交官の一人は、NATOの最新の防衛計画は対空ミサイル防衛システムの量と即応性を「大幅に増やす」措置を求めていると指摘し、既存の装備をウクライナに送ることで欧州諸国自体の備蓄が「低減した」ということを認めた。

今月初めの米上院での衝撃的な証言で明らかになったことであるが、これは、米国はロシアの極超音速ミサイルに対してだけではなく、4月中旬にテルアビブが行ったシリアのダマスカスのイラン大使館構内への致命的な攻撃への報復としてイランが41日にイスラエルに対して実行したような、通常ミサイルや無人機攻撃に対してさえも本質的に無防備であるという事実を暴露した。

「しかし、それこそがあなた方の使命だ。あなた方の任務はミサイル防衛だ」と、苛立ちを募らせた上院の軍事戦略軍小委員会のアンガス・キング委員長は、国防総省が毎年受け取る何百億ドルもの資金がなぜ実用的な対空ミサイル防衛システムに変換されていないのかを説明しようとしているペンタゴンの高官に言った。「今後の対応を期待したい。今のところ、ミサイル防衛はあまりないからね。極超音速ミサイルであれ、無人機であれ、あなた方には自分の使命が何であるかを真剣に考え直してもらいたい。ミサイル防衛を任務とするなら、何をすべきか方向転換をする必要がある」とキングは述べた。

大西洋の両側でNATO軍の対空ミサイル防衛はひどく不十分であることを立て続けに認めたことは多くの疑問に扉を開くことになるが、中でも特に重要な点は、もしもロシアがウクライナでNATOの代理軍を打ち負かすことに成功したならば、ロシアはNATOを攻撃するだろうという米国やヨーロッパの当局者らが述べた誠実な主張にある。もしも本同盟が本土に対する「ロシアの脅威」を本気で信じているとするならば、ロシアによるほぼ完全な制空権下にある状況では防空システムをウクライナへ送り込んで、破壊させるのではなく、限定的で衰退しつつある対空防衛能力をむしろ温存させておくと考えたであろう。

この暴露は、本同盟はなぜ西側の長距離ミサイルを使ってロシア領内の奥深くの標的を攻撃するためにウクライナの手を解くと脅して、モスクワとの緊張を高め続けているのであろうかという疑問を投げかける。

本同盟が2023年に世界の国防費の55%を占め、13千億ドルも使ったことを考えると、NATOの対空防衛システムが明らかにお粗末な状態にあるということはやや意外である。

この報道は、ドイツやイタリア、英国を含むヨーロッパ諸国の当局者やメディアが過去2年間に主張してきた内容、つまり、自国が全面的な直接攻撃を受けた場合、24時間から48時間の戦闘に十分な弾薬があるだけだという声明を裏付けるものであるように思える。

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これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事を読んで、「えー、何だこれは!」とお思いになった読者がたくさんいるのではないか。別様の理解があり得るかと読み直してみても、西側には威勢のいいことを言う戦争屋がたくさんいる割には、対ロ戦争には何の具体的な準備も出来てはいないではないかと言いたくなる。

要するに、米国を中心とした西側の好戦派の政治家は戦争を始めることによって軍産複合体には大儲けをさせて、その見返りとして自分は次回の選挙で間違いなく当選することが最優先課題であって、戦争によって何百万人もの無辜の市民が殺害されることについては痛痒も感じないのであろう。不幸なことには、このような次元の低い思考が現実の政治の世界なのだ。われわれ一般庶民が希求する平和な日々の世界からは程遠く、まさに目が眩むような深いギャップがこの世には横行していると言わざるを得ない。

参照:

注1:Revealed: NATO’s Air Defense Shield in Eastern Europe So Full of Hole, It’s Essentially Nonexistent: By Ilya Tsukanov, Sputnik, May/30/2024

 

 

 


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