ロシア・ウクライナ戦争は1年半前の昨年2月に始まった。ロシア軍によるウクライナでの特別軍事作戦を受けて、西側の主流メデイアは待ってましたとばかりに「ロシアが悪い」、「プーチンは悪党だ」と一斉に大合唱を始めた。
この大合唱における最大の難点は西側の言い分には2022年2月以前のウクライナ国内の政治動向や対ロ関係にはまったく何も言及してはいない点だ。2014年のマイダン革命以降、キエフ政府からの分離を標榜する東部の二州に対してウクライナ政府軍が行った武力弾圧は西側にとっては極めて都合の悪い出来事であったに違いない。何千人もの一般市民が爆撃や砲撃によって殺害された。「何の理由もなく、突然、プーチンがウクライナへ軍事侵攻した」という都合のいい筋書きを一般庶民に植え付けることに主眼を置いていることは明白であった。プロパガンダ作戦の一環として、近年は、ウクライナのゼレンスキー大統領によるスタンドプレーが国際政治の舞台で繰り返された。彼は日本でも議会演説を行った。一連のこれらの大騒ぎについては誰もが鮮明にご記憶のことであろう。
ところで、世界の覇権国として自認する米国には民主的に選出されている一国の政府を打倒し、米国に都合の良い傀儡政権を樹立するという悪しき慣行があって、これは何度となく繰り返されて来た。たとえば、イラン(1953)、グアテマラ(1954)、南ベトナム(1963)、ブラジル(1964)、チリ(1973)、エジプト(2013)、ウクライナ(2014)、パキスタン(2022)。(出典:9月11日付けのユーチューブ動画、「大手メディアでは報道されない米露関係の今【混乱する国際政治と日本①】|伊藤貫」)。
だが、米帝国の意図や目標とは裏腹に、最近、潮目が変わって来た。米国の隠された意図や目標がさまざまな形で暴露され、一般大衆が知るところとなって来たのである。
ここに、「米帝国の死のカルト集団がウクライナで代理戦争を引き起こしたことを自認」と題された最近の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。
***
米国の戦略家たちは、何十年もの間、ウクライナはロシアの鎧(つまり、防衛体制)に存在する隙間であると見なしてきた。「AM WakeUp」と「SlowNewsDay」というふたつのライブ・ウェブ・キャストの司会役を務めるスティーブ・ポイコネンはワシントンのシンクタンクが紛争を引き起こすことを、何年も前から、如何に公然とお互いに話し合っていたかを指摘している。
米国のディープステートと金融業界はウクライナでの紛争を引き起こすために何年にもわたって公然と計画を練って来たとこのメディア・コメンテーターは述べている。
ウェブ・キャストの司会者スティーブ・ポイコネンはNATOの指導者たちが「これは代理戦争だと言った」ことについてはまさにその通りであって、満足しているとスプートニク通信社に語った。
「われわれが関与していることは代理戦争であると単に示唆しただけでティン・フォイル・ハットを被っているとか、プーチンの擁護者だとか呼ばれた」頃から1年以上が経った今、「この指摘は楽しく、爽やかだ」と彼は言う。
同メデイア・コメンテーターは米国における「選挙で選ばれてはいない恒久的な国家やネオコン、および、軍産複合体」を「死のカルト集団」と特徴づけた。
「それらはあらゆる理由に反し、彼ら自身の最善の利益にさえも反しながらも、あたかもひとつの組織のように機能している」とポイコネンは言った。「彼らは果てしなく戦争を行い、現地の人々のことを気にすることなんてこれっぽちもない。それはすべてが自己永続的なマネー・ロンダリング・マシンを動かすためであり、彼らはそれを実行したとしても責任を追及されることはない・・・彼らは完璧に非道徳的だ。」
米国の戦略に特化したシンクタンクである「ランド研究所」は、2019年、「ロシアの最大級の外的脆弱性を活用するべくウクライナに(ロシアにとっては)致命的となる支援を提供する」ことを含めて、ハイブリッド戦争を実行する際の青写真となる「ロシアの対外的弱点を過度に拡大させる」と題した論文を発表した。
「米国が今や過度に展開している国際紛争においてはそれらのすべてについて、これらの混乱にどのように介入するべきかを正確に概説するランド研究所の文書が存在する」とポイコネンは言う。「これこそが彼らの唯一の目標なのである。ランド研究所が寄り集まって、ロシアを不安定化させる方法や米国の国際ビジネス界の一握りの連中がそこからどのように利益を掴み取ることができるのかを理解させることが理由だ。」
ランド研究所の報告書は、また、ロシア産石油や天然ガスの海外市場を混乱させることを推奨している。
「もちろん、彼らは石油や天然ガスの進展を見守るつもりだ」と専門家は主張した。「そして、彼らがそれらやランド研究所の議論を観察すると、最初に思い付くのはノルドストリーム・パイプラインのことだ。」
「もしもランド研究所が有能なセールスマンでなかったとしたら、彼らの存在はあり得なかっただろう」とポイコネンは言う。「過去の60年、70年間、少なくとも一握りの議員たちにわれわれが払った税金のすべてを軍事予算に使うべきだと説得させる能力に長けていたからこそ、彼らは存続することができたのである。」
彼は米国の政治は舞台裏で糸を引いている人々を首尾よく隠し通す演劇に他ならないと主張する。
「われわれはこの国では何時も間違った人々を攻撃している。われわれは何時も間違った人々に向かって指を指している」と彼は言った。「われわれはあたかもランド研究所の取締役会に座っている人たちと同じ人物のために借りてきた単なるロバではないかのように議会で指を指している。」
トップ・ニュースに関する詳細な解説については、われわれのスプートニク・ラジオ・シヨウの「 The Critical Hour」をご確認願いたい。
***
これで全文の仮訳が終了した。
この記事が参照しているランド研究所の報告書は大冊であるが、一言で言えば、彼らはロシアの弱点や強みを次のように描写している:
米国との競争におけるロシアの最大の脆弱性は比較的小さく、エネルギー輸出に大きく依存したロシア経済にある。ロシア指導部の最大の不安は政権の安定性と持続性にあり、ロシアの最大の強みは軍事面と情報戦争の領域にある。
このランド研究所の見方を踏襲すると、その実効性はひとまず別の議論としておけば、西側がロシアに対して次から次へと課して来た経済制裁の意図が分かる。とにかく、ロシア経済を叩くことだ。ロシアの最大の歳入源であるエネルギー輸出に何らかの妨害を加えることが対ロ戦略において最重要であるとすれば、ノルドストリーム・パイプラインの破壊工作の下手人が誰であったのかについて極めて妥当に推測することができよう。セイモア・ハーシュの指摘が思い起こされる。
「米議会では間違った人々に向けて指を指している」との指摘があるが、これは、たとえば、民主党が共和党選出のトランプ大統領を罷免するためにロシア疑惑をでっち上げ、米国の議会政治が機能麻痺に陥った数年前の事態を指しているように思う。トランプ罷免のためのプロパガンダの激しさは、その根拠が虚偽情報に基づいていたことを隠蔽するかのように、馬鹿々々しい程熾烈なものとなって行った。
「米国の政治は舞台裏で糸を引いている人々を首尾よく隠し通す演劇に他ならない」という総括は実に秀逸である。言うまでもなく、この指摘は他の国々でもさまざまな場面でよく当てはまる。また、実際の出来事に戻ってみれば、ノルドストリーム・パイプラインの破壊を誰がやったのかについて直接指を指されることがないように極めて巧妙にカモフラージュされている。言わば、このような行動全般は数多くの専門家を抱えている米諜報部門のお家芸だ。
参照:
注1:US Imperial 'Death Cult' Admits it
Provoked Proxy Conflict in Ukraine: By James Tweedie, Sputnik, Sep/14/2023
0 件のコメント:
コメントを投稿