最近、サンフランシスコで米中首脳会談が行われた。今回の首脳会談について著名なジャーナリストであるペペ・エスコバーは最近の記事で次のように描写している:
会談のテーブルのこちら側にはグローバルサウスのリーダーがゲームの頂点に立っている。その反対側には「自分こそが自由世界のリーダーである」という幻想を売り込もうとするミイラが立っている。
バイデン大統領の評価は最近特に低下しているのは確かであるとは言え、これは何とも辛辣な評である。
ロシア・ウクライナ戦争とハマス・イスラエル紛争とのふたつの大きな問題を抱えている現時点の米国にとって、米中関係が本物の武力衝突に入ることはどう見ても非現実的である。そうなったら、自殺行為だ。武力衝突は是非とも避けたいのが米国政府ならびに一般大衆の共通した考えであろうと思う。少なくとも今は台湾有事なんてあり得ないシナリオだ。今や、台湾有事を叫ぶのは高額な武器を売り込みたい軍産複合体とその恩恵に預かる政治家やロビー活動家たちだけであろう。
ここに、「台湾の野党は親米内閣を打倒する路線で連携し、北京との関係を修復」と題された記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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2024年1月の総選挙に向けて台湾の野党勢力が団結し、親米与党の民主進歩党(DPP)を凌駕しそうな中、中国の脅威とされる台湾の軍事化を想定したジョー・バイデン大統領が進めるインド太平洋戦略は崩壊する可能性がある。
ウクライナにおける米国の代理戦争は台湾への軍事物資の引き渡しを遅らせる結果となった。「ケイトー研究所」によれば、台湾に対する米国の武器売却の滞留は191億7000万ドルにもなっている。今月初め、この米国のリバタリアン・シンクタンクは引き渡しの遅延について詳細な内訳を示し、台湾の軍事化の目標に光を当てた。
中国による「侵攻」の潜在的な脅威を理由に、米国は、最近、台湾への武器輸出を加速させているが、北京側は「侵攻」を繰り返し否定している。中国の目から見れば、台湾は中華人民共和国の不可分の領土であり、中国本土との統一は平和的な手段によって行われるべきものだ。
ケイトー研究所が言及した兵器リストには66機のF-16戦闘機が含まれていると報じられている。さらには、108 台のM1A2エイブラムス戦車、M109A6パラディン自走榴弾砲、100基のハープーン沿岸防衛システム、400発のハープーンミサイル、MQ-9B無人機、基隆級駆逐艦用のAN/SLQ-32電子戦システム、高機動ロケット砲システム(HIMARS)、対戦車用地雷施設システム、野戦情報通信システム、ならびに、すでに台湾に納入されている米軍兵器のためのあらゆる種類の弾薬や保守、支援、等。
11月6日、BBCの取材に応じた台湾の蔡英文総統と密接な関係にある与党の王廷宇議員は「中国の脅威」に直面する中、台湾の軍事力を向上させることが急務であると強調した。王議員はメディアに対して台湾は台湾地上部隊の2個大隊を訓練するために米国に派遣する方針を固めている。この動きはワシントンが北京と外交関係を樹立し、ひとつの中国の原則の下で台湾との正式な国交を断絶した1970年代以降では初めてのことであると言う。
国際評論家によると、前述の台湾における軍事力増強は中国政府の深い懸念を呼び起こしており、台湾海峡において中国、米国、台湾の軍隊が衝突するリスクを孕んでいる。
関連記事:US
Speed-Up of Arms Supplies to Taiwan Prior to Island's 2024 Elections Sends
Ominous Signal: Apr/12/2023, 14:57 GMT
好戦的な民進党とは異なり、国民党(KMT)は中国との正常化を模索:
しかしながら、特に、1月13日に予定されている2024年の選挙で民進党がKMTと台湾人民党(TPP)との連携に敗れた場合、この悪夢のシナリオは回避することができる。
ワシントンDCに本拠を置くシンクタンクである「クインシー・インスティテュート・フォー・レスポンシブル・ステートクラフト」は、月曜日(11月13日)、KMTとTPPが勝利する可能性は米中台湾関係に深刻な影響を与える可能性があると示唆した。
問題の核心はKMTが中国との関係を改善し、DPPが台湾で国家主席の座と立法府の過半数を獲得した2016年以来、北京と台北の間で高まっている緊張を解消しようとしている点にある。これに先立ち、2008年から2016年の間に、台湾は中国との両岸貿易に関する23の条約に署名し、直行便や学校を開設し、当時のKMTの馬英九党首の下でビジネス交流を促進してきた。
「KMTに投票すれば、台湾海峡を挟んだ戦場はなくなる」と、今年1月、馬英九は支持者の群衆に語った。台湾の蔡英文(DPP)総統が3月から4月にかけて米国高官と会談した一方で(これは北京の不興を買った)、馬英九は中国において魅力攻勢に乗り出し、台湾海峡の両岸に住む住人たちは同じ「中国人」であることを強調した。
インド太平洋地域の国際関係を専門とする政治学者のビクター・テオ博士は、4月上旬、スプートニクに対し、「馬党首の訪問はKMTがひとつの中国政策を支持し、KMTが中国との対話と平和をもたらす最良の政党であることをさりげなく思い起こさせるものでもある」と語った。「ある意味で、今回の馬党首の訪問は、皮肉なことには、蔡総統の訪問によって引き起こされた緊張を和らげることにも役立っている。」
関連記事:Arming
Taiwan Diverts From Biden's Flaws and Benefits US Military Industry: Aug/31/2023,
17:03 GMT
KMTとTPPの連携はどうして勝利の組み合わせとなるのか:
KMTは、台湾を平定するという目標を達成するために、結党されてから4年を経過したTPPと同盟関係を結ぶことによって選挙の勝率を高めようとしているようである。TPPは中道政党であり、KMTとDPPに置き換わりそうな政党である。同党は2019年8月6日に高文済氏によって設立され、それ以来、国民の大きな支持を得ている。
10月30日、KMTとTPPは連立政権の樹立に合意した。両党は台湾議会での議席を最大化するという目標を設定した。そして、DPPの8年間の「一党独占」を無に帰するために、最強の候補者を選ぶことを決めた。
さらには、両党は台湾海峡の安定と平和の回復に関するコンセンサスを発表した。KMTとTPPの指導者は、現職総統である蔡英文の下で中断されていた将来の両岸の対話と関係を台湾の主要法規と1992年の台湾地区人民と大陸地域の関係を規律する法律に基づいて回復させるべきだと述べた。
それでは、KMT・TPPの選挙における勝算はどれ程であろうか?「都市開発コミュニケーション協会」によると、先週の世論調査ではTPPの高文済党首とKMTの侯玉怡党首の二人の票はDPPの有望な黎慶徳氏と彼が選んだ候補を上回っている。
この調査によると、四つ巴の選挙戦では黎氏の得票が30.1%で、高氏が24.5%、侯氏が17.3%、台湾総統候補で「フォックスコン創業者」のテリー・ゴウ氏が11.3%と続いた。三つ巴のレース(テリー・ゴウ氏抜き)では黎氏が32.2%を獲得し、高氏は30.4%を獲得、侯氏は22.6%を獲得したが、14.8%の回答者は未定であった。
一方、高・侯氏の組み合わせは49.8%の得票率だったが、黎氏の肖碧姫下院議員との組み合わせは38%にとどまった。
関連記事:Biden
to Reaffirm US 'Not Supporting' Taiwan Independence at Xi Meeting on Nov. 15: Nov/10.2023
台湾問題に関してはバイデン・チームは取り組み方を変更すべきなのか?
最近の記事で、クインシー研究所の学者デイビッド・チョンはワシントンは来たる選挙でKMT・TPP連合が勝利する可能性を考慮に入れるべきだと主張している。チョン氏によると、この台湾における平和主義の動力学はウクライナ問題に巻き込まれているワシントンに「歓迎すべき休息」を提供するであろうと言う。
台湾におけるKMTとTPPの連携が出現することは米国と中国が少なくとも向こう4年間は緊張を緩和し、紛争を回避するのに役立つ可能性があるとこの学者は述べている。しかしながら、DPPの黎慶徳氏が勝利すれば、北京に対する対決姿勢をさらに推し進めることが予想される、とチョン氏は考えている。
「現在進行中の選挙運動に関して言えば、ワシントン政府は慎重な自制の姿勢を取り続け、バランスの取れた姿勢を維持すべきだ」と、この学者は強調し、DPP政権の継続、あるいは、KMT・TPPの勝利というふたつの結果はそれぞれがこの地域におけるワシントンの利益に長所と短所をもたらすであろうと付け加えた。
関連記事:Is
Biden Preparing to Dump Ukraine For Taiwan?:
Aug/03/2023
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これで全文の仮訳が終了した。
米国の対中政策は公式には「ひとつの中国」であると言う。そう言いながらも、台湾には軍事援助を行い、米国は台湾と中国を分断する政策をとり、北京政府の神経を逆なでして来た。極めてあからさまな二枚舌政策である。どうしてそこまでやるのかと言うと、短期的には軍産複合体の儲けに直接関係するからであろう。
ところで、肝腎の台湾市民が来年1月の選挙で中国と敵対し続ける与党のDPPを捨てて、中国との関係を改善しようとする野党のKMT・TPP連合を選択したらどうなるであろうか?そうなったら、北東アジアにおける軍事的緊張は一気に和らぎ、米国の軍産複合体と彼らの盟友である好戦的なネオコン政治家の思惑は見事に捨て去られることになる。米国は、今、二正面での軍事的紛争を抱え込んでおり、すでに過剰な程に手一杯であると言われている。米国の世論を見ると、過半数はこれ以上の戦争努力は避けたいようだ。米国内には解決しなければならない問題が山積しており、膨大な資金を必要とする。米国の好戦的な対外姿勢の是非については来年の大統領選挙においてとことん議論され、ひとつの答えが示されるであろう。
台湾海峡における軍事的緊張が一時的にでも和らぐとすれば、2024年は極めて明るいものとなろう。台湾だけではなく、日本にとっても同じことが言える。そして、都市閉鎖やmRNAワクチンによる死亡者の急増や重篤な健康被害をもたらした新型コロナワクチンに続いて、ロシア・ウクライナ戦争によって暗黒の時代が合わせて4年間も続いていたのだが、これもついに終わりとなってくれたら最高だ!
それですべてが上手く行くのかと言うと、残念ながら決してそうではない。グローバリストたちは2024年を手放しの明るい年にはさせてはくれない。
彼らはWHOの権限を強化し、国際的な保健政策を一元化する条約を制定することによって各国の主権を奪い、全世界に君臨する世界政府を樹立しようとしている。大手製薬企業に金儲けをさせたいのだ。さらには、WHOの大手の寄付者にイデオロギー的に君臨させたいのだ。主たるイデオロギーは、たとえば、食糧問題や人口抑制問題である。一般大衆の洗脳や情報検閲の仕方に関しては、かれらは新型コロナ禍を通じて実世界での予行演習をすでに済ませたばかりである。WHOの権限強化の是非に関しては欧州議会ではかなり前から議論が続いているが、日本ではようやく議論が始まったばかりだ。WHOの権限の強化なんて聞いたこともないという人たちも決して少なくはないようだ。
多くの人達に感心を寄せていただきたいものである。これは実に深刻な問題であるからだ!この件は改めて掲載したいと思う。
参照:
注1:Taiwanese Parties Joining Ranks to Unseat pro-US Cabinet, Mend
Ties With Beijing: By Ekaterina Blinova, Sputnik, Nov/14/2023
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