2024年4月4日木曜日

紛争を引き起こして、利益を計上?米国の武器輸出は記録的なレベルを達成

 

米国の軍産複合体には古くから受け継がれて来た教科書があって、戦争計画者は何代にもわたってそれに従い、今もそれを使っている。もっとも中核的な教えは国内の軍需産業に如何にして儲けさせるかであると言われている。軍事的なプロジェクトにはふんだんな予算が賄われ、米政府の対外政策は自国が経済的にも、政治的にも、軍事的にも世界最強でいるためにすべてが注力されることになる。場合によっては同盟国に対してさえも法外な負担を強いる。

こうして、米国にとって気に喰わない国家は政府転覆の対象となる。10年前のウクライナはその好例であった。201311月から2014年の始めにかけて、キエフでは反政府派が首都を闊歩し、222日、ウクライナ議会はヤヌコヴィッチ大統領の弾劾を決議した。暴力的なマイダン革命によって、選挙で選出されていたヤヌコヴィッチ大統領は政権の座から追われたのである。マイダン革命が進行していた当時、ヴィクトリア・ヌーランド米国務次官補はキエフを訪問し、反政府デモ参加者たちにクッキーを配った。この様子は世界中でテレビ放映された。ウクライナ情勢に深く関与していた彼女は「米国はソ連崩壊の時代からウクライナの民主主義支援のために50億ドルも注ぎ込んだ」と述べたことでも有名だ。つまり、マイダン革命に動員され、治安警察と衝突を繰り返す反政府派のデモ参加者たちは米ドルで日当が支払われていた。米国による政府転覆の実例を見ると、さまざまな具体的な状況が判明するが、ウクライナでの実態の一部はこんな具合であったのだ。

2014年のマイダン革命以降はウクライナから分離した東部2州のドネツクとルガンスクの住民はキエフ政府軍からの武力攻撃を受けて、多数の民間人が死亡し、負傷した。これを受けて、これらの地域におけるロシア語を喋る地域住民の安全を確保するために、20222月、ロシア政府はウクライナでの特別軍事作戦を開始した。ウクライナ政府は西側からの軍事支援や財政支援を受けて、このロシア・ウクライナ戦争に取り組んだ。もっとも印象に残るのは「最後の一兵になるまで闘う」とするウクライナ側の言葉である。それは、あたかも自国が米国の代理戦争をしているという現実からは完全にかけ離れて、民主主義や自由のために戦っているといった自己欺瞞そのものであった。悪いことに、私腹を肥やそうとするウクライナの実業家や政治家、軍人たちがこの醜いドラマの主役であった。そして、大西洋の対岸における主役は米国の戦争屋たちだった。

クリミア半島では住民投票と言う民主的な手法が新たな歴史のページを飾った。ウクライナ政権に反対するクリミア半島の住民は住民投票を行って、圧倒的多数がウクライナから分離し、ロシア連邦への編入に賛成した(2014316日)。翌日の317日、議会はクリミア共和国の独立を宣言し、ロシアへの編入を議決した。これを受けて、318日、ロシア連邦のプーチン大統領はクリミア共和国のロシアへの編入の要請を受け入れることを表明した。ドネツク州とルガンスク州の地位に関する住民投票が511日に行われ、大多数が自治に賛成。翌日の512日、両州はそれぞれドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国として独立を宣言した。

しかしながら、こういったウクライナ東部2州における地域住民の動きは米国にとっては当然ながら気に喰わない。米国はEUと共にウクライナ政府に梃入れを継続した。あれ以来、すでに10年だ。

今後、ロシア・ウクライナ戦争がどのような展開を見せるのかは判断が難しいが、停戦の日が早く来て欲しいと思う。ウクライナでは学徒動員をしない限り、若い兵士を動員することができないような状況にまで追い込まれている。これ以上の悲劇を拡大させないためには停戦を実現するしかない。

前置きが長くなってしまったが、ここに「紛争を引き起こして、利益を計上?米国の武器輸出は記録的なレベルを達成」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有したいと思う。ウクライナからは何千キロも離れた大西洋の向こう側ではいったい何が起こっていたのだろうかに注目していただきたいと思う。

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Photo-1: © AFP 2023 / NIKOLAY DOYCHINOV

米国務省によると、昨年の海外における米国の武器売却額は2,380億ドルという記録的な額に達した。この合計額はどのように構成されているのか?スプートニクはそれを解明してみた。

世界中の武力紛争に介入するということはワシントン政府にとっては決して珍しいことではなく、米国の対外軍事売上高(FMS)は2023会計年度には809億ドルに達し、前年比で約56%増で新記録を樹立したという事実によって裏付けられている。

国務省はその声明で、FMSとは別に、米国のいわゆる直接商業販売高(DCS)も同様に、2022年度の1,536億ドルから昨年は1,575億ドルに増加したと述べている。2023年度のFMSDCSの合計は過去最高の約2,380億ドルに達した。

FMSDCSは外国政府が米国企業から武器を購入する際のふたつの主要な方法である。DСSでは米国の海外のパートナーは米国企業と直接の作業を進めるが、FMSの場合は取得プロセスのすべての段階を通じて顧客が国防総省の基準に従うことを保証するよう規定している。どちらの場合も米国政府の承認が必要である。

FMSによる取引:

公表されたデータによると、昨年のFMS取引の総額である809億ドルには米国の同盟国とパートナー国が資金提供した6225000万ドルの武器販売と「タイトル22」対外軍事援助プログラムを通じて行われた397000万ドルとが含まれている。

さらに、1468000万ドルは、ウクライナへの安全保障支援イニシアチブを含めて、国務省と国防総省の他のプログラムを通じて資金が提供された。

Photo-2:関連記事:Weapon Manufacturers Record Skyrocketing Profits From US Arm Sales in 2022: By Sputnik, Jan/26/2023

ポーランドはアパッチ・ヘリコプターを120億ドルで購入し、高機動ロケット砲システム(HIMARS)にも100億ドルを支払って、最大規模の購入をした。ドイツはチヌーク・ヘリコプターに85億ドルを費やし、ブルガリアはストライカー装甲車に15億ドルを、ノルウェーは10億ドル相当の多目的ヘリコプターを購入した。チェコ共和国はF-35戦闘機と軍需品を56億ドルで購入した。

欧州以外では、国務省のデータによると、韓国はF-35戦闘機に50億ドル、オーストラリアはC130J-30スーパーハーキュリーズに63億ドルを支払った。また、日本はE-2Dホークアイ偵察機を10億ドルで購入する契約を結んだ。

DCS契約:

昨年の主要なDCS契約に関する議会からの通知には12億ドル相当の先進型地対空ミサイルシステム(NASAMS)をウクライナ国防省へ供給する多額の契約が含まれている。

上記の金額とほぼ同額のその他の取引契約は、国務省によると、イタリアやインド、サウジアラビア、シンガポール、韓国、ノルウェーとの間のものである。

世界中で紛争を引き起こしている?

戦争の商業化は米国の政策の趨勢となっていると言っても過言ではない。

それと同じように、ワシントンに本拠を置くシンクタンク「クインシー研究所」(Quincy Institute for Responsible Statecraft)が2022年に発表した広範な報告書はバイデン政権に「武器売却に関する米国の政策を長期的な米国の利益と整合させるには多くの重要な問題に取り組む必要がある」と促している。

同報告書は、「政策的に重要な検討事項は軍拡競争を誘発したり、紛争の可能性を高めたりすることなく、同盟国の自衛に役立つものに販売を制限する方法を見い出すことだ」と指摘し、AUKUS潜水艦取引に言及している(訳注:AUKUSとはオーストラリア、英国、米国を指す)。同取引は「米国の請負業者に利益をもたらすけれども、軍備競争を煽り、中国との緊張を高める危険性がある」と指摘した。

ウクライナに対して米国が「迅速に進めた」軍事支援について、同報告書は「米国は、戦争が長期にわたる激しい紛争に発展したり、米露の直接対決にエスカレートしたりする前に、戦争を終わらせることを目的として随伴するべき外交戦略を提示してはいない」と強調した。モスクワ政府は米国とその同盟国にキエフに武器を送ることはウクライナ紛争を長引かせるだけだと繰り返して警告している。

著者らは、「外国への武器の売却は紛争を煽り、米国の敵を挑発し、軍拡競争を煽って、米国を不必要または非生産的な戦争に引き込むことによって米国の安全保障にリスクをもたらす可能性がある」と警告している。

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これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事を読んで、私は初めて米国内の特定のシンクタンクが暴走する戦争屋たちに対して節度のある展開を求め、戦争を終わらせる外交努力の必要性を力説していることに感銘を受けた。米国では戦争屋の海外政策には大きな慣性力が働いている。そして、一朝一夕に方向転換させることは極めて困難であることは百も承知である。その一方で、第三次世界大戦へのエスカレーションを懸念する声は米国内だけではなく、今、世界中で高まっている。

どのような詭弁に対してもその背後に存在する悪魔的な政治的筋書きや濡れ手に粟的な経済的利益を見通して、戦争屋の邪悪に満ちた野心を打ち砕かなければならない。それに失敗すると、世界は核戦争に巻き込まれる危険性が急速に高まる。人類の文明をこの地上から抹殺してしまうような愚行は決して許してはならない。

日本では首相が訪米し、米国の要請を受け入れてウクライナに対する巨額な支援を密約するのではないかと囁かれている。首相にとっては暗殺されるようなことがないように米国には追従することが最優先かも知れないが、それは果たして国民のためと言えるのだろうか?また、NTT法案の改正は外圧に屈してしまうと、日本の衰退を一気に早めることになるかも知れない。要は日本独自の国益を優先して最終案を決定しなければならない。

首相の判断は、まかり間違うと12千万人の日本国民の将来を完全に破壊することに繋がるであろう。そんな状況は許すべきではない。

参照:

注1:Packing in Profits While Fueling Conflicts? US Foreign Arms Sales Rocket to Record Highs: By Oleg Burunov, Sputnik, Jan/30/2024

 

 



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