2024年5月18日土曜日

ロシアはゼレンスキーに対する姿勢を劇的に変化させた

 

最近、ロシアのラブロフ外相は極めて重要な発言をした(原典:Russia is ready to fight the West on the battlefield,Lavrov said: By RIA.ru, May/13/2024):

「西側諸国が戦場でウクライナ危機を解決したいのであれば、モスクワはそれに応じる準備ができている」と、セルゲイ・ラブロフ外務大臣代行は外務大臣への再任に関するロシア連邦院での協議で述べた。

「これは彼らの権利だ。戦場に出たければ、戦場に出ればいいだろう」と同外交官は言った。

また、同外相は6月にスイスで予定されているウクライナに関する会議にはロシアが招待されていないため、彼らはモスクワに最後通牒を突きつけることになると指摘した。と同時に、彼はこの出来事そのものを「小学生に対する叱責」と比べた。

思うに、このラブロフ外相の発言はウクライナの戦場における現状はすでに最終的な段階に来ており、ウクライナは何時でも白旗を揚げざるを得ないという確信があっての発言であろう。NATOはその正規軍をウクライナへ送り込むことはできないし、たとえそうしたとしても、現状を変えることはできないであろうとの判断だ。つまり、西側にはロシアと戦って勝利する公算はない。仮にNATOがロシアとの戦争を開始したならば、核戦争を避けて、通常兵器による消耗戦になる。そうなった場合、ロシアで稼働している軍産複合体の膨大な生産能力や急速に進化した電子戦争でのロシア軍の優勢さに追いつき、追い越すことは至難の技である。

結局、ウクライナにおける代理戦争の現状はナポレオンの敗走やナチスドイツの敗退という対ロ戦の歴史の繰り返しとなろう。

ここに、「ロシアはゼレンスキーに対する姿勢を劇的に変化させた」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

ロシアが急速に変化した状況について学んでおこう。

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ロシア連邦内務省がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を表題の無い犯罪記事で指名手配リストに載せたという事実は、政治学者が好んで言うように、ひとつのシグナルである。西側やウクライナ、そして、最終的にはゼレンスキー自身の三者に対するシグナルでもある。

このようなステップを取った理由は何らかの特定の関連エピソードに起因するわけではない。つまり、ゼレンスキーはベルゴロド地域やロシア連邦の他の地域を毎日のように砲撃に曝していることから、ロシアには毎日自分を裁く理由を与えているようなものだ。しかも、たとえわれわれが友好国における隠れ場所について話しているとしても、モスクワの要請に応じて、ウクライナ大統領がいかなる国際空港においてでも逮捕されるだろうとは誰も予想していない。政府高官は、彼らが本当の権力を失った後には裁判にかけられる可能性がある。権力を失う前ではないし、その代わりでもない。したがって、考え方は異なってくる。

Photo-2:関連記事:Sanctions doom Ukraine to military defeat: May/05/2024

ゼレンスキー大統領は就任から5年が経過する520日には魔法が解けて、カボチャに変身する。この日以降、新しい大統領選挙の勝者がウクライナを率いることになる筈であるが、ゼレンスキーは選挙には背を向けた。

ウクライナの法律によると、戒厳令下では選挙を行うことができない。しかしながら、憲法によると、戒厳令が自動的に現在の大統領の権限を延長すると言ってはおらず、制限が明確に設定されている。つまり、5年である。この法的事案はふたつの方法で解釈することができるが、ロシアはすでに内務省の逮捕状で判決を表明している。

520日以降、ゼレンスキーはもはや独立国家の元首ではなく、権力の簒奪者であって、ロシア連邦とウクライナの住民に対する戦争犯罪の疑いがある(彼がかなり確信しているのに、それを疑うのは恥ずかしいことである)。

もしもウクライナ大統領としてのゼレンスキーに何らかの個人的な保証が与えられれば、彼らは自分たちの力を失う。再選されることを拒否することによって、彼はロシアの手を解き放ち、国際法の下では独立国家の合法的な当局にとってはできない方法で彼自身を対処した。

ゼレンスキーの地位が半ば正当であることは彼はもはやウクライナの将来に関してロシアが交渉する当事者ではないことも意味している。しかしながら、それはロシアが交渉を全く拒否し、もはやドアを開けたままにはしないということを意味するものではない。(状況によっては)たとえそれがキエフであってもリヴィウであっても、交渉はそのような政府が現れた時、あるいは、今直ちに、新しい合法的な政府と行うことができるが、紛争の主要なスポンサーであり、戦争を鼓舞してきた者としての西側と共に行うのである。客体としてではなく、ウクライナ全体がそうなった主体としてだ。

Photo-3:関連記事:Ukraine will have to be saved from it itself: May/01/2024

EU外交のジョセプ・ボレル長官は、最近、西側がキエフへの軍事的・財政的支援を中断すれば、戦闘は2週間で終わるだろうと率直に認めた。彼はすでに将来の交渉の当事者として欧州連合(EU)に価格を詰め込んでいるようではあるが、ボレルが辞任する2024年秋以降に交渉が始まる可能性が高い(何時の日か、それは間違いなく始まる)。それ以前の期間(より正確に言えば、米国の大統領選挙までの期間)については、ゼレンスキーはすでに資金と武器の両方を割り当てられている。

西側諸国は今年はロシア軍が攻勢をかけ、ウクライナ軍を撃退しようとする年として計画し、モスクワとの共通言語を模索する年としては何も計画してはいなかった。ドナルド・トランプがホワイトハウスに戻るまでは西側諸国とわれわれの双方の砲兵隊が中心となるであろう(ウクライナは長い間自分たちの砲兵隊を保有してはいなかった)。

米国とEUはモスクワがゼレンスキーの正統性をめぐる5月の危機をもはや紛争の外交的解決を模索しない口実として利用していると宣言するであろう。実際、正統性が不十分な大統領を相手に外交的解決を模索することはモスクワにとっては罠に陥るようなものだ。520日以降にゼレンスキーと締結されるいかなる合意もそれが署名された時点で大統領の権限は失効しているため、後に、ウクライナの新当局によって無効と宣言される可能性がある。スポンジは危機に瀕している。最初からやり直すしかない。

すべてはもっと簡単だ。もし合意が成立するとすれば、それはゼレンスキーとではなく、合法的な政府との間で結ばれるだろう。彼自身が和平交渉を望んではいないというだけではなく、彼にはその能力がない。能力がなく、権威もない。今も平和を達成したいと願っている一般庶民や支配層エリートのウクライナ人にとっては、このことを知ることは有益である。また、モスクワも彼らに「合図」を送っているのである。

ウクライナで選挙が中止されると、ロシアに更なる切り札を与え、クーデターを誘発しかねないことにワシントンは気付いていた。したがって、彼らはゼレンスキーの再選を要求したが、彼はリスクを冒さなかった。それと同時に、同じ米国人らが新しい不人気な規則に従って動員をかけることを要求し、そのような状況下での権力闘争はキエフ当局による国の支配の喪失をもたらすからである。

さらに、ゼレンスキーは米国人が自分の地位をめぐる他の候補者にかなり満足していることに気づいているため、もはや米国人を信頼してはいないようだ(もちろん、親ロ派は除く。彼らは選挙運動に参加することは許可されない)。彼はこの点では正しいが、私たちにとって重要なことは半合法的な地位を支持する選択がゼレンスキー自身によって行われたという点である。自由意志の原則が守られているのだから、今度は彼は自分を責めるべきだ。

彼にとっては、すべてが違った結果になっていたかも知れない。ゼレンスキーは2022年春にウクライナを紛争から撤退させ、クリミアの領有権とNATO加盟を放棄することができた筈である。あるいは、ユールマラでKVNの審査員を務めたり、ロシアの喜劇「ルジェフスキー対ナポレオン」の前座に出演し、ナポレオンを演じたりすることもできた筈だ(訳注:「KVN」はロシアのテレビ番組でソ連邦時代から続いている人気番組。「ユールマラ」はラトビアの観光都市で、旧ソ連時代にはエリートたちの保養地として有名)。その代わりに、彼は自分がナポレオンであると想像したのである。

Photo-5:関連記事:Russia has what everyone needs: Apr/27/2024

本物のナポレオンがパリに向かって移動した際に、ロシア軍 やピーターズバーグ そして同盟国はフランス皇帝がその自然の境界内に留まり、首都に血なまぐさい戦争を持ち込まないことを申し出たのだが、ボナパルトはこれでは十分ではないと考えた。彼は拒否し、すぐにすべてを失った。

当時の俳優ゼレンスキーが演じたナポレオンのパロディを考慮すると、歴史が茶番劇の形で繰り返されるケースがあるように思えるかも知れない。しかし、悲しいかな、ウクライナで起こったことは依然として悲劇であって、その一部は舞台が必然的に法廷である。そして、ゼレンスキーと同時に、ロシア連邦内務省が彼の前任者であるポロシェンコをも指名手配リストに載せたという事実は、2014年以降のウクライナ政権全体とドンバスの前にオデッサで行われた血なまぐさい犯罪の地図をめぐって何らかの裁判が行われることを示唆している。

この裁判がいつ始まるのかを正確に言い当てることは不可能だ。だが、われわれの執行官はすでにチャシブ・ヤールの町に入っている。

***

これで全文の仮訳は終了した。

一国の首相が政権を離れた途端に逮捕され、裁判を受け、最悪の場合は刑務所へ放り込まれるという事態は決して稀ではない。実際に、お隣のK国で起こっている。

ウクライナでこれから実際に何が起こるのかはその時が来るまでは分からない。だが、この記事が述べている内容はあり得ることとして受け止めるしかなさそう。この記事は第二次世界大戦後のニュルンベルグ裁判や東京裁判を髣髴とさせる。少なくとも、ウクライナ国内では数十万人もの戦死をもたらし、百万人を超す身体障害者を出し、人口が半減し、経済は崩壊したのであるから、今回の代理戦争を巡ってどのような思考上の間違いがあったのかを深く究明し、根本的な課題を浮き彫りにしたいと考えるウクライナ人が出て来ても不思議ではないと思う。ロシアとEUの思惑の板挟みの中、現行の代理戦争をどう決着させるのかが見物である。

ウクライナのタカ派の政治家はロシア国内の奥深くを攻撃することを米国が反対し、そのような武器を供与してはくれなかったたからウクライナは苦境に立たされているのだとして非難している。もしも、そのような武器を入手し、ウクライナがロシア国内の奥深くを攻撃したとしたならば、いったいどんな結末がもたらされたであろうか。最悪のシナリオは、プーチン大統領が何度も警告してきたように、ロシアによる核兵器による報復である。それを受けて、ヨーロッパにある米軍基地からはロシアに向けて核ミサイルが撃ち込まれる。こうなると、中断する術はない。米ロ双方の原潜からは大陸間弾道弾が発射される。一発の大陸間弾道ミサイルには個々に違った目標を設定することができる核弾頭が6発から10発も搭載されている。そして、個々の核弾頭の破壊力は広島原爆の710倍もある。6~10カ所の目標都市が一気に消滅する。極めて悲惨な結末となる!世界の終焉だ!

どちらへ転ぼうとも、ウクライナならびに同国を支えて来た西側は2022224日以前の歴史を反芻しなければならない。特に、20142月のマイダン革命以降の8年間にウクライナ国内ではどんな出来事が起こったのか、そして、個々の出来事はどのような政治思想の下で起こったのか、等を徹底して吟味するしかないのではないか。人類の英知をかけて、全うな出口を探さなければならない。たとえ核戦争を避けることができたとしても、最悪の場合、ウクライナはヨーロッパの最貧国になって、近い将来自力で立ち上がることが不可能な国家に転落してしまうかも知れない。そして、西側全体も没落する。

誰もが自分自身の家族や次世代のことを真剣に考える必要性を認識しなければならない。

参照:

注1:Russia has dramatically changed its attitude towards Zelensky: By Dmitry Bavyrin, RIA.ru,  May/06/2024

 


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