2024年5月5日日曜日

最近の学生運動はここ数十年間に米国で起こった出来事の中ではもっとも重要だ ― スコット・リッターの言

 

イスラエル・ハマス戦争は膠着状態に陥り、停戦を巡る交渉で大詰めを迎えている。果たして、どのような決着が実現されるのであろうか?

2014年に起こったイスラエル・ハマス戦争に関しては、国際刑事裁判所(ICC)はイスラエルとパレスチナの両者に関して戦争犯罪を起こした可能性について調査が開始されていた。

昨年の10月に起こったハマスによるイスラエルに対する奇襲攻撃によって始まったガザ地区に対するイスラエルの攻勢ではその悲惨さは目を覆うばかりである。429日のNBCニュースによると、イスラエル首相のベンジャミン・ネタニヤフ、国防相のヨアフ・ギャラン、イスラエル国防軍参謀長のヘルヅィ・ハリヴァに対してICCは逮捕状を発行するかも知れないという。この報道に関してイスラエル政府は懸念を示している。イスラエルの内外ではガザ地区やウェストバンクにおけるイスラエル軍の攻勢についてますます批判が集まっている。

そして、ガザ地区でのイスラエル軍の攻勢が余りにも酷いとして米国では学生たちによる抗議行動が激化していた。51日のアルジャジーラ紙によると:

警察は、ニューヨークのコロンビア大学やニューヨーク市立大学を襲撃し、イスラエルのガザ戦争に抗議する282人の学生を逮捕した。

カリフォルニア大学のロサンゼルス校にあるパレスチナ人連帯キャンプサイトは親イスラエル派の活動家によって攻撃され、授業がキャンセルとなった。

南フロリダ大学ではキャンパスでの抗議行動の後、10人が拘束されたと警察が報じている。

ルイジアナ州ニューオーリンズのテュレーン大学では警察署はテュレーン大学の学生2人を含む少なくとも14人のデモ参加者が抗議行動に関連して逮捕されたと発表した。

ここに、「最近の学生運動はここ数十年間に米国で起こった出来事の中ではもっとも重要だ ― スコット・リッターの言」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

***

Photo-1: © AFP 2023 / CHARLY TRIBALLEAU

先週、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相はビデオ演説で、つい最近始まったばかりの米国の大学における抗議行動は大学のキャンパスを「乗っ取った」、「反ユダヤ主義の暴徒」であると述べた。彼は米国当局に対して彼らを阻止するためにもっと努力するよう求めた。

イスラエル政府によるガザ地区の住民に対する継続的な爆撃に反対する学生抗議運動の高まりは、「何十年にもわたって」米国で起こった最も重要な出来事のひとつであると元国連査察官であり、軍事専門家でもあるスコット・リッターは、火曜日(430日)、スプートニクの「クリティカル・アワー」に語った。

「もしあなたが私のような米国人であって、外に出て抗議をしたり、プラカードを掲げたり、物事を混乱させたりする気がないのならば、諸君、われわれは目を覚まさなければならない」と彼は説明した。「目を覚まさなければならない。われわれは何らかの形でこれらの学生たちに加わり、米国市民が発言し、集会し、たとえ政府の責任を問う権利を警察が抑圧することに直面しても、われわれは沈黙しないということを政府に知らせるために彼らの大義に加わらなければならない。」

「今起きている学生たちの抗議行動は、ここ数十年間に米国社会で起こった出来事の中で最も重要なことのひとつであると思う」とリッターは強調した。

ニューヨーク市のエリック・アダムス市長によると、火曜日(430日)の夜、ニューヨーク市警の数百人の警官と思われる人物が暴動鎮圧用の装備をまとって、軍用車両でコロンビア大学に侵入し、約300人を逮捕した。この家宅捜索はテキサス州を含む全米各地でも同様に行われ、学生たちに加わった教職員を含めて、79人が逮捕された後に起こった。

ところで、65歳のスティーブ・タマリ教授は、病院からの彼の声明によると、セントルイスのワシントン大学で警官に地面に叩きつけられ、複数の肋骨と手を骨折し、入院した。この抗議行動で100人以上が逮捕された。

大学が思想を自由に交換し合う場であることはわれわれの社会の重要な部分であるとリッターは主張し、これらの取り締まりはこれを終わらせるために企図されていると考えると付け加えた。

「米国憲法を支持し、擁護すると宣誓した者の一人として私は言論の自由や集会の自由に対する学生の憲法上の権利を尊重するだけではなく、大学が善良な市民を育成するための素晴らしい環境のひとつであることも認識している」とリッターは述べた。

この週末、大統領候補のジル・スタインが抗議行動で逮捕された。スタインは警官に対する暴行で起訴されたと告げられたが、後にジャーナリストのグレン・グリーンワルドとのインタビューで書類にはその記載はなかったことを明らかにしたという。

リッターは、大学の目的の一部は「従順なゾンビではなく、善良な市民を育成するための保育器を維持すること」にあると説明し、米国には「物事を考え、知識と情報で力を与え、それを個人的および集団的に表現することができる市民」が必要であると主張している。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校では親イスラエル派のグループが衝突の最中に学生のデモ参加者に向けて唐辛子スプレーと花火を発射したと報じられている。目撃者らは、警察は待機している間、何時間にもわたって何の介入もしなかったと主張している。

米国政府は「あり得る限りのあらゆる間違い」を仕出かしているとリッターは指摘し、米国は「これらの学生たちに表に出てきてもらう必要があったにもかかわらず、われわれが政府として行っているあらゆる間違いの総体であるガザ問題を彼らは選んだことを明確にしたのである。

「大学に進学したら、過激にならなければいけない。物事を考える必要がある。われわれは学生たちが自分の頭脳と精神と良心を鍛えることを必要としている。そして、政府が彼らを抑圧しようとしているのは、どうやら、われわれはもう善良な市民を望んではいないからだ」と述べて、同アナリストは話を終らせた。

***

これで全文の仮訳は終了した。

「米国では民主主義が崩壊することはない。なぜならば米国の民主主義はとうの昔に無くなってしまったからだ」という皮肉たっぷりの言葉が世間に広まって、すでに久しい。民主主義はあえなくグローバリズムやネオキャピタリズムの犠牲になったのである。残念ながら、今でも民主主義があると思うことは、今や、単なる妄想に過ぎない!(注:詳細は201677日に掲載した「民主主義はもはや西側には存在しない」をご覧いただきたい。)たとえば、最近の例で言えば、新型コロナ禍で政府側が推進した諸々の対策だ。規制に違反した者には罰金刑を課す国家さえもが現れた。一般的に、規制当局の横暴振りは左翼系の指導者が君臨している国(米国の場合は民主党系の州知事が治めている州)では特に酷い状況が観察された。WHOや各国政府による感染予防対策の進め方は、とてもじゃないが、民主主義的であるとは言えなかった。あれはWHO、民間の寄付団体、新型のお注射を製造する製薬大手企業、主流メデイア、ソーシャルメデイアプラットフォーム、等が徒党を組んで推進した巨大プロジェクトであったと言えそうだ。何のためか?製薬企業の金儲けだ。あるいは、権力の中枢にあるエリートたちの権力欲や自己顕示欲のためだ。最近は、その底流には人口削減という政治目標が存在するという指摘もある。

そして、これらの指導者らに見られる共通項はグローバリズムまたはネオキャピタリズムである。

果たして、スコット・リッターが述べた「最近の学生運動はここ数十年間に米国で起こった出来事の中ではもっとも重要だ」という認識が世界中でますます支配的な考え方となるかどうかは私には分からない。米国では大学における学生運動は警察の介入によって鎮静化されたとの直近の報道もあることから、最近の学生運動という局地戦では、幸か不幸か、グローバリズムを標榜する権力者側が当面の勝利を収めたのかも知れない。スコット・リッターの表現を借りると、これは「あり得る限りのあらゆる間違い」を仕出かしている政府側が持っている権力を存分に発揮したということでもある。

しかしながら、この反動として、11月の米大統領選では民主党側は若者たちの支持を大量に失うことになるかも知れない。

参照:

注1:Scott Ritter: Student Protests Among ‘Most Important Things’ to Happen in US in Decades: By Ian DeMartino, Sputnik, May/02/2024

 

 


0 件のコメント:

コメントを投稿