2023年7月16日日曜日

ヴィリニュスで開催されたNATO首脳会議でウクライナは隷属する地位を強要され、悲惨な戦争は続く

 

ヴィリニュスで開催されたNATO首脳会議は二日間の日程(711日~12日)を終了した。周囲の関心はこの首脳会議ではたしてウクライナのNATOへの加盟が具体的な日程の下で招待に漕ぎ着けるかどうかという点であった。彼らの結論は、「ノー」であった。NATO加盟国側の論理は「ウクライナがロシアとの戦争を続けている限り、NATOへの加盟はあり得ない」とする以前からの論理の繰り返しとなった。それはNATO憲章にも明記されている基本的条件のひとつである。

2014年のマイダン革命によって選挙で選出されていたヤヌコビッチ大統領を暴力的に政権の座から追い出し、米国はウクライナに傀儡政権を樹立した。それ以降、EUへの加盟やNATOへの加盟といった飴を面前にぶら下げられて、ウクライナ政府と国民は歴史をすっかり書き変えて、甘い夢に浸り続けることになった。ウクライナ政府の高官たちは西側からの支援によって政府の財源を確保し、対ロ戦争のための装備を調達し、私的な利益もたっぷりと蓄えた。そして、ウクライナの国民は民主主義を守る尖兵というロマンチックな役割を国際政治の舞台で西側の盟主のために演じることになった。ウクライナの東部ではロシア語を喋る住民に対してロシア語の使用を禁じ、ウクライナ政府の地域住民に対する政策はネオナチの思想に牛耳られて、武力抗争へと発展して行った。民族浄化が行われ、非戦闘員に対する戦争犯罪が続けられた。西側の覇権国にとっては、「NATO1インチたりとも東側へ拡大することはない」と言って、当時の旧ソ連邦の指導者を懐柔し、東西ドイツの統一を実現したジェームズ・ベーカー米国務長官による1991年の約束は、その後、クリントン大統領によってあっさりと反故にされた。もちろん、米国にも対ロ政策についてははるかに穏健な政治家や識者もいたが、ロシアに対する好戦的な思考は軍産複合体によって冷戦時代の負の遺産として色濃く残され、軍事予算は膨張を続けた。故アイゼンハワー大統領が懸念した通りであった。旧ソ連邦が崩壊した直後の1990年代は平和な時期であった。しかしながら、米国の軍産複合体にとって平和な時代は最大の敵なのである。地球上のどこかに戦争が存在しなければ、米国の軍需産業は生きてはいけない。従業員を解雇しなければならないのである。戦争がないならば、彼らは偽旗作戦を行い、戦争を引き起こす。NATO加盟国が新たに増えるということは当事国はNATOの標準装備を米国から調達してくれることを意味する。こうして、NATOは拡大して行った。ついに、ロシアの表玄関に接するウクライナのNATO加盟があちらこちらで囁かれる時がやってきた。

これこそが、ロシアが昨年ウクライナにおいて特別軍事作戦を開始せざるを得なかった根本的な背景であると多くの識者が説明している。覇権国の論理は非論理的であり、極めて冷酷でもある。

しかしながら、最近の経験から判断すると、こうした虚偽に支えられた政治的状況は遅かれ早かれ内側から崩壊することが多い。ロシア・ウクライナ戦争を巡る情報戦は新型コロナ騒動とよく似ている。新型コロナワクチンを強制するため、すなわち、製薬大手の金儲けのシナリオを前進させるために流布された新型コロナウィルスの脅威に関する虚偽情報の流布と同様に、ロシア悪人説も時間の経過と共に色褪せ、われわれ一般庶民の多くが気が付いているように真実がその姿を現し始めた。

ここに、「ヴィリニュスで開催されたNATO首脳会議でウクライナは隷属する立場を強要され、悲惨な戦争は続く」と題された記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1: © AFP 2023 / DIMITAR DILKOFF

【ワシントン(スプートニク)発】ウォロディミル・ゼレンスキーはヴィリニュスでの首脳会議で西側が支援を継続することが約束されたが、またもや、彼はウクライナを終わりのないロシア・NATO代理消耗戦争に巻き込まれたままであり、西側軍事同盟に対する彼の国の「卑劣な地位」を思い起こすこととなった、と米国の分析専門家はスプートニクに語っている。

711日から12日までリトアニアの首都で開催された31加盟国から成るNATO首脳会議はキエフがこの大西洋同盟に参加するために必要な招待と固定された日程に向かって前進するすることを拒否したことから、ゼレンスキーを怒らせた。ジョー・バイデン米大統領は、ロシアとの紛争が続く限り、ウクライナは加盟できないという方針を明らかにした。

ゼレンスキーの屈辱:

ゼレンスキーは米国や軍事同盟の政策立案者の計算における自国の従属的な地位を屈辱的ながらも思い起こすはめとなった、と米国の憲法史家であり、政治評論家であるダン・ラザールは述べている。

「私は今回のNATO首脳会議をウクライナにとっては失敗であったとは見ていない。しかし、これは確かに彼にウクライナの隷属的な地位を思い出させるに十分であった」と彼は言う。

ラザールは、ゼレンスキーは2019年に平和支持の選挙公約で大統領に立候補したが、最終的には米国と自国の右翼勢力に屈して、ロシアとの対決に向かったと述べている。

「結果は残忍な戦争であり、明らかに逃げ道はない。国は破壊されており、ウクライナの何千人もの兵士が戦死しているにもかかわらず、米国は米兵が虐殺に引きずり込まれることになることからウクライナのNATO加盟を支持することは拒否している」とラザールは述べた。

ウクライナはバイデン政権の二重基準による犠牲者だとラザールは考えている。

「ウクライナ人が死んでもそれは大丈夫だが、米兵についてはそうではないのだ」と彼は言った。

ヴィリニュスではゼレンスキーには選択肢がなく、「米国と英国が不要になった兵器を彼のやり方で送り続けることを彼は期待し、口をつぐみ、平身低頭する以外にはない」と述べた。

二級の地位:

ペンタゴンの元分析専門家であるチャック・スピニーは、ヴィリニュス首脳会談はウクライナを米国やNATO諸国に対して二流で、従属的な、下級の地位に甘んじさせて、予見可能な将来にこれに勝るような地位を勝ち取る望みはないとする見方に同意している。

「ヨーロッパで最も腐敗した国家であるウクライナは、(NATOの傲慢さの別の産物であるコソボを除いては)予見可能な将来にNATOへの加盟を許されることはないだろう」と彼は言った。

しかしながら、加盟国行動計画(MAP)を可決するためのNATO要件は免除され、冷戦を通じて40年間キエフが果たしたと主張する形態と役割とは非常に異なる軍事同盟に参加する手続きを、今や、効果的に加速しているとスピニーは指摘している。

ロシアとの戦争におけるウクライナへの大規模な軍事支援により、NATOは今や「大西洋にはそれほど限定しない同盟へと変身している」と彼は述べた。

NATO首脳会議はNATOの常設機関として潜在的には結果論的な「NATO・ウクライナ評議会」を設立し、そこで31カ国のNATO同盟国はウクライナの指導者と会い、緊急事態に対処するためのNATOの政策を計画することになったとスピニーは認めている。

「これらには、おそらくNATOの終わりのない対ロ代理戦争の遂行を扱う政策が含まれることだろう」と彼は言う。

キエフへの武器の継続的な流れを確保するために、G7経済グループはウクライナと協力し続け、NATOの軍産複合体にこれまで以上に多くの資金を供給するであろうとスピニーは指摘した。

しかしながら、「G7は経済グループであり、NATOの一部ではない。NATOはひとつの加盟国への攻撃はすべての加盟国への攻撃と見なし、引き金を引くことに幸福感を覚える軍事同盟である」と彼は述べている。

ヴィリニュスでのNATOの非決定と戦争回避の行動パターンはこの軍事同盟の意思決定が魅力的であり、印象的であるとする絵を描いて見せることだったとスピニーは観察している。

「ヴィリニュスでのNATO首脳会議は、たとえ雌豚の耳から絹の財布を作るための馬鹿げた試みであったとしても、予測可能な努力であったとして記憶されることだろう。同首脳会議の短期的な目標はウクライナに対するNATO5条の実践から身をよじって何とか逃げ切ることだったようだ」と彼は述べている。

それにもかかわらず、ヴィリニュスでのNATO指導者たちはロシアを疲弊させ、崩壊させるためのツールとしてウクライナ紛争を活用することに依然として焦点を合わせているようであるとスピニーは警告している。

この首脳会議の「長期的な目標はロシアとウクライナをますます深く、終わりのないロシア・NATO間の消耗戦争に巻き込むことによって、ロシアを弱体化させ、おそらく崩壊させるというNATOを牛耳る米国のネオコンの幻想を合理化することにあったようだ。つまり、ウクライナの最後の一兵までの戦い」であると彼は言った。

「ウクライナの存在」:

ピッツバーグ大学のマイケル・ブレナー国際関係教授は紛争の継続はロシアではなく独立国家としてのウクライナに完全な崩壊をもたらすであろうと考えている。

「われわれが知っているウクライナはもはや存在しない。だから、NATOに加盟することは決してない。ロシアは、ウクライナがNATOのパートナーとして再武装する自由を残すような事実上の、あるいは、法律上の分割は決して受け入れないだろう」と彼は言う。

ゼレンスキー政権がロシアとの軍事的対立の危険を冒して以来戦争に従事している間、米国とNATOはキエフに対してあらゆる種類のコミットメントであってもそれを与えることができると想定することは論理的には常に馬鹿げていたとブレナーは説明する。

ヴィリニュス首脳会議では「いわゆるウクライナによる大反撃が非常に上手く行った場合、つまり、西側がプーチンに最後通告を与えることができ、プ-チンが降伏した場合にはバイデンや他のNATO指導者たちはある種のNATOとの関係について具体的な見通しを差し出すという意味合いでゼレンスキーとの対応が進められて来た」と彼は言う。

しかしながら、米国やNATO、ウクライナの指導者たちは実現不可能な夢を今でも追い続けているとブレナーは警告している。

米国や他のNATO指導者たちは「ウクライナ自体を直視することはなかった。彼らは1991年以降ロシアを永久的かつ深刻に弱体化させるためにウクライナを利用してきたのだ。ゼレンスキー側について言えば、彼はウクライナ国民について気にしたことなんて一度もない」と彼は述べている。

ゼレンスキーは、紛争が始まってからわずか2か月後の20234月(訳注:これは2023年ではなく、2022年の間違い)に紛争を終わらせるためにモスクワと合意した暫定合意を実行すると主張することができた筈だし、そう主張すべきだった。しかし、そう主張する代わりに、彼はロシアと戦うというワシントンからの最後通告に屈したのだとブレナーは言う。

「彼(ゼレンスキー)にしても、何の理由もなく20万人もの兵士を戦死させなくても良かったであろう」と彼は述べた。

一方、ワシントンでは、ホワイトハウスの優先事項は2024年の大統領選挙が終わって、現大統領が勝利するまでは紛争を続けることであろうとブレナーは考える。しかし、「戦場の状況を考えると、ある種の大規模なエスカレーションが必要になるかも」と彼は警告した。

バイデンは、木曜日(713日)、米国のNATOへのコミットメントの一環として、戦闘で信頼できる軍隊をヨーロッパにローテーション展開する大西洋解決作戦を強化するために3,000人の米軍予備兵を許可する大統領命令を承認した。この動きはヨーロッパにおける現在の米軍の態勢を変えるものではない、と米国欧州軍は声明で述べている。

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これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事によるとウクライナを巡る米ロ間の駆け引きは少なくとも来年の11月までは続くということだ。だが、この見方はあくまでも米国側の都合に沿ったものであって、ウクライナ側のものではない。

地上の現実を見ると、ウクライナでは戦場へ送り込む兵員が不足し、今や、対ロ戦争を継続するためにはグローバルサウスから雇い兵を補給するしかないといった状況にまで追い込められているという(原典:Global South Recruits for the Dying Ranks of Mercs Ukraine Warned of 'Survival Time of Just Days': ByANIKET DIXIT, Jul/15/2023)。

以前の投稿でもご紹介したが、ウクライナではすでに少年兵や女性兵士さえも戦場に投入されている。「ゼレンスキー側について言えば、彼はウクライナ国民について気にしたことなんて一度もない」という指摘がされているが、これが実際には何を意味しているのかが頷ける。ここまで来てしまったウクライナの多くの一般庶民にとってはこれ程大きな不幸はないのではないか。

参照:

1Vilnius Summit Locks Ukraine in Servile Status, Brutal War With No Way Out: By Sputnik, Jul/14/2023

 



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