2023年10月22日日曜日

二正面作戦は間違いなく不可能 ― 米陸軍の前司令官は米国はふたつの代理戦争を同時に遂行することはできないと言う

 

ロシア・ウクライナ戦争とガザ・イスラエル紛争は両者とも米国の代理戦争である。米国とその同盟国が巨額の戦費を払い、膨大な量の武器を供給して行われている代理戦争だ。

奇しくも、そのことを象徴するかのような最近の記事が目に付いた。「二正面作戦は間違いなく不可能 ― 米陸軍の前司令官は米国はふたつの代理戦争を同時に遂行することはできないと言う」と題されている(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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先週末、ジョー・バイデン米大統領はウクライナとイスラエルの両方に武器を送るという彼の約束を強化した。しかしながら、元米軍上級将校は、非常に多くの戦線での戦争を支援することは持続不可能であり、米軍の戦争準備の水準をさらに劣化させるだろうと述べている。

ハマスが先週(107日)イスラエル国境の町への攻撃を開始し、1,300人以上のイスラエル人を殺害した後、イスラエル国防軍(IDF)はガザ地区の包囲を宣言し、月曜日(1016日)の夕方の時点で2,750人以上のパレスチナ人を殺害し、さらに1,000人が行方不明になり、少なくとも10,000人を負傷させるという執拗な砲撃を解き放った。イスラエルがアイアンドーム・対空システムから数千発のタミール・ミサイルを発射し、いくつかの主要都市を標的とするハマスのロケットを撃墜した後、バイデンは「米国はイスラエルに補給するために介入する」と述べた。

それ以来、バイデンは、何千もの小型兵器をイスラエルに送り込み、ふたつの空母戦闘グループをこの地域に配備した。月曜日(1016日)、米メディアは最大で2,000人の米軍兵力をイスラエルに配備する準備ができており、IDFの非戦闘分野での支援をする役割を計画していると報じた。

イスラエル軍を強化するためのこの急ぎの行動は、過去2年間で460億ドルをも超えてしまったウクライナに対する米国の軍事的支援の継続をめぐってワシントンにおいて行われている政治的戦いの真只中に起こっている。ここで問題となるのは米国がウクライナだけではなく、イスラエルをも支援することがはたして可能であるのかである。

「われわれはアメリカ合衆国であり、歴史上最も強力な国家である。これは世界においてではなく、世界の歴史においてだ」とバイデンは日曜日(1015日)に放映された事前に録画された米国のメディアインタビューで述べている。「われわれはこれらの紛争の両方を処理し、それでもなお全体的な国際防衛を維持することができる。」

ホワイトハウスは議会にイスラエル援助法案を要求すると予想されているが、議会は下院議長の選出をめぐる論争に閉じ込められたままだ。部分的に始まった戦いではあるが、前議長は来年の予算にウクライナ援助を含めると主張。

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「選択肢がある場合、もしもどちらかひとつの選択肢を選ぶならば、米国の支援は、おそらく、イスラエル側に向かうであろう」と国際コンサルタントで退役米陸軍中佐のアール・ラスムッセンは月曜日(1016日)にスプートニクに語った。

「彼は完全に間違っている」とラスムッセンはバイデンについて言った。「ふたつの紛争を同時に支援する方法はない。われわれはお金を生み出し、より多くのお金を送ることができると思うが、それはそこ(ウクライナ)では何の役にも立たない。ウクライナは支援の理由を失っている。」

「彼はそれを、あるいは、それが何であっても約束することはできるが、それらの武器を提供することは別の話であり、資金援助について議会を通すことは別の話だ。特にエスカレーション(二正面作戦)が発生した場合、特にわれわれが直接関与する場合、それを実際に行うのは非常に難しいことだと思う。その一方で、台湾や中国との緊張も高まっている。彼らが両方の紛争をサポートすることができる可能性は非常に低いと思う」とラスムッセンは述べた。

「私は資金供給の観点から、つまり、資金の容量の観点から言いたい。私にはわれわれの武器会社は見えては来ない。ウクライナでわれわれは非常に多くを使い果してしまった。われわれはすべてを使い果たしてしまった。われわれはイスラエルにおいて備蓄していた弾薬さえをも持ち出して、ウクライナに向けて送った。明らかに、イスラエルはそれを取り戻そうとしていると思うが、それは戻ってはこないだろう。われわれはすでに弱体化した立場にあり、私にはそういった動きが可能であるとは思えない。優先順位の観点から言えば、イスラエルはウクライナよりも優先されると思う。これはわれわれにとっては戦略的により重要なことだ。」

この元米陸軍将校は、先週の出来事はバイデン政権の本当の意味での優先事項はイスラエルであり、ウクライナの戦争努力だけではなく、パレスチナの人権をも犠牲にして、必要なすべての巨費を獲得することを示していると述べた。

「こちらについては多くのことが起こっている。興味深いのは、少なくとも、当地のニュースでは先週はウクライナについてはほとんど何も報じられていなかったという点だ。すべてはイスラエルとハマスに関するものだった」と彼は言い、イスラエルのガザに対する包囲と爆撃作戦については「米国政府からの非難は何もなかった」と述べた。

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13 hours ago, Oct/16/2023

「人権に関しては、われわれは窓の外に報り出してしまった」とラスムッセンは言う。「バイデンにとっては、彼はイスラエルを支持しなければならないと思う。イスラエル・ロビーからの政府に対する影響力が大き過ぎ、議会に入ってくるお金と寄付が多過ぎる。われわれはすでにイスラエルには年間40億ドルを提供している。この額はきっと膨らむと思う。われわれは、必要に応じて、ウクライナからイスラエルに移行する。ウクライナはもはや優先度の高い政治目標ではないと思う。」

「これはバイデン政権に変更を迫ることであろうと思う。それはほぼウクライナからの出口を示す標識だ。政治的には、彼はイスラエルを支援する必要がある。おそらく、彼は筋書をウクライナからそっと遠ざけることができるだろう」と彼はそれとなく言う。「直近の反撃は完全な失敗として暴露されている。」

ラスムッセンは、バイデンがイスラエルとハマスの間の和平仲介者を演じることを含め、中東に戻りたがっていることを示唆したが、バイデン政権にはエルサレムが最近の暴力の発生のせいにしようとしたイスラエルとイランの間の戦争を見たいと思う連中もいる可能性が高いことを示した。そして、それは米国を引きずり込む劇的なエスカレーションになるであろう。

「これは爆発する可能性がある。これは、潜在的に、ウクライナにおける緊張状態よりも悪くなる可能性がある。彼は選挙前に何かを爆発させたいとは思ってはいないだろうが、それはバイデンにとっても[政治的に]好ましくはないだろうと思う。」

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関連記事:Americans Show Record Low Approval for Military While US Boosts Aid to Ukraine, Israel: Oct/16/2023

ウクライナとイスラエルに送られているすべての武器に照らして、ラスムッセンは米国の軍産複合体の能力について尋ねられ、20222月以降、米軍の姿勢は「かなり弱体化し」、「さらに弱まり、さらなるストレスを受けるであろう」と述べた。

「兵士たちの戦争に対する準備、特に、大きな紛争では疑わしいと思う」と彼は言った。

「武器と弾薬の両方の観点から、20年間にもわたって果てしのない戦争が軍事的に続く中、米軍は酷く消耗してしまったとは思っていない。政策や訓練など、すべてについて何らかの変更をしたという姿勢は見られず、兵士の採用目標も達成できてはいないと思う。」

「米国がどちらか一方の紛争を実際にうまく処理できるとは思わない。ましてや、両方を間違いなくうまく処理できるとはとても思えない」と彼は言った。「それはわれわれの軍隊であり、われわれの準備態勢だ。過去数年間で大幅に弱体化している。武器庫を大幅に空っぽにしてしまった。軍需企業、つまり、われわれの軍産複合体はそこにあるニーズを満たすのに十分に強化されているわけではない。だから、これは非常に危険であり、脅威的な状況だ」と彼は言う。米国はウクライナ紛争と同じように中東の「代理軍」に頼る可能性が高いと予測される。

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これで全文の仮訳が終了した。

1020日のアル・ジャジーラ紙の「バイデンはイスラエルとウクライナへの支援のために議会に対して1050億ドルを要求」(原題:Biden asks US Congress for $105bn in assistance for Israel and Ukraine)と題された記事によると:

ジョー・バイデン米大統領は、イスラエルとウクライナへの人道的および軍事的援助、ガザへの人道支援、および、米国とメキシコとの国境での移民対策を提供するために、1,050億ドル以上の要求を議会に提出した。・・・この支出パッケージの大部分はウクライナに捧げられており、その目的のために610億ドル以上が計上されている。イスラエルには140億ドル以上が向けられ、その多くは「アイアンドーム」として知られる同国の防空システムやその他の武器の購入に使われる。90億ドル以上がウクライナ、イスラエル、ガザでの人道支援のために確保され、140億ドル近くが米国の国境警備に向けられる。

ケヴィン・マッカーシー前下院議長が罷免されたから下院では議長の不在が続いており、政策を巡る分断が深まっている。そんな中、米下院は議長代行の下でこのバイデン政権からの支出パッケージを全額認めるのだろうか?現状では、具体的な法的な措置によって議長代行の権限を強化しない限り、そうすることは不可能らしい。また、CBSニュースによる最近の世論調査によると、有権者の間ではイスラエルへの支持は依然として強いが、調査対象の無党派と民主党員の半数以上が、米国はイスラエルにこれ以上軍事援助を送るべきではないと述べている。同世論調査では、民主党員の70%と無党派の60%近くが、ガザにより多くの人道援助を送ることを支持していることが分かったという。

米国はウクライナとイスラエルのふたつの選択肢からひとつを選ぶならば、イスラエルだと著者は述べている。ウクライナでは実質的な戦闘はすでに終わっている。ウクライナに武器や弾薬を供与し、戦費を送り込んできた西側にとっては極めて不都合な現実ではあるが、今や、ウクライナ軍の敗北は認めざるを得ないだろう。そんなウクライナへさらに軍事支援を継続することにどんな意味があるのか。せいぜい、ウクライナ政府高官の私腹を肥やすだけではないか。

米下院はいったいどのような選択をするのであろうか?

ところで、米国の戦争のやり方は米本土から遠く離れた戦場で戦闘を行い、戦場に投入する兵士は代理軍である。この引用記事の著者はガザ・イスラエル紛争に投入される兵士らは中東の代理軍となるであろうと推測している。さもありなんである。最近、米政府は2000人の米軍兵士をイスラエルへ送り込むと発表した。さらに、これらの兵力は戦闘員ではなく、兵站を担当すると付け加えている。この米政府の発表はまさに著者の指摘を支えるような内容である。

こういった動きは日本にとっては何を意味するのであろうか?

米国はもはや二正面作戦を戦えないと言う現実が大っぴらに判明した場合、米国は台湾有事についても戦略を変更しなければならないではないか。だが、米国の戦争計画者の頭の中には、台湾有事に関してもまったく同じ構図が描かれているように思える。つまり、台湾有事での米国の代理軍は日本の自衛隊だ。最近の日本政府の言動を見れば、明白だ。米国を忖度したものであると言えよう。つまり、現政権は極めて危険な火遊びにまっしぐらに進んでいる。これは大きな誤りであり、一般庶民にとっては極めて不幸な事態となりかねない。

参照:

1‘Definitely Not Both’: Former Army Commander Says US Can’t Support Two Proxy Wars: By Fantine Gardinier, Sputnik, Oct/16/2023

 

 


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