2023年10月28日土曜日

ウクライナ軍の航空機の損失が急速に高まっているが、これはロシアの新型ミサイルのせいらしい

 

1025日、ロシアのシイグ国防相はロシアは新型ミサイルを使って、数多くのウクライナ軍の航空機を撃墜したと語った(原典:Russian forces receive weapons that downed 24 Ukrainian warplanes over 5 days - Shoigu: By TASS, Oct/25/2023)。「過去の5日間でわれわれは24機もの敵機を撃墜したが、実は、最近、これを実現する新システムを受け取った。」

これに呼応するかの如く、詳細な分析で定評の高いブログサイトである「アラバマの月」が新しい記事を掲載した。その記事は「ウクライナ軍の航空機の喪失が急速に高まっているが、これはロシアの新型ミサイルのせいらしい」と題されている(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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副題:これがどれほど有効かは分からないが、関連性は高いと確信している

軍事専門家のウラジスラフ・シュリギンはこう語った。「ペンタゴンはロシア航空宇宙軍の有効性が突然高まっていることについて鋭く懸念するようになった。」

最近の2週間で、ロシア軍はウクライナの上空で本物の虐殺を演じることとなった。ウクライナ軍は、少なくとも、10機の航空機を失った(他の情報筋によると、14機)。

さらには、それらの航空機はすべてが最前線からは遠く離れており、ロシアの防空システムの実効半径の外側、ならびに、ロシアの戦闘機ミサイルの標準攻撃半径の外側であったにもかかわらず、撃墜された。生還することができたパイロットによると、彼らの飛行機が攻撃される瞬間まで彼らは身近に迫った攻撃に関する警告情報を警報システムからは受け取ってはいなかったと報告している。

米国側が信じるところによれば、ロシア航空宇宙軍は長距離の目標物を攻撃することが出来るようになったというだけではなく、発射後、航空機のレーダーから目標物を照らさずに独立して目標を追尾し、無線の特徴を活用して目標物に誘導することができる新しいミサイルを配備した。

現在、米国側はこの情報を注意深く検討し、これは非常に重要なことだと考えている。それが確認されれば、それは彼らの新しい主力戦闘機であるF-35について宣伝されてきたすべての優位性を無力化してしまう武器をロシア側が取得したことを意味するからである。

ウラジスラフ・シュリギンは、確かに、ロシアの「軍事専門家」であって、ロシアのトークショーにしばしば出演している。

ロシア国防相の最近の日報が現実に近いとするならば、「ウクライナの上空で本物の虐殺が起こった」という主張は有効である。私はそうであると信じている者のひとりだ。

今年の第3四半期までにおけウクライナ空軍の典型的な損失率は週に13機の飛行機またはヘリコプターであった。

だが、10月中旬以降、私のメモによると、ロシアの日報は次のような撃墜記録を報じている:

  • ウクライナ空軍の17機のミグ29戦闘機
  • ウクライナ空軍の2機のSU-24 戦術爆撃機
  • ウクライナ空軍の3機の近隣空域用支援ジェット機
  • ウクライナ空軍の1機のL-39練習用ジェット戦闘機
  • 3機の MI-8輸送ヘリコプター

たった9日間で合計26機の空軍機を失ったことになる!

これが真実に近いとするならば、これはウクライナ空軍にとっては壊滅的な損失率である。

こんなことはいったい可能であろうかと誰もが尋ねるかも知れない。私は可能だと信じている。202210月、何十年にもわたる研究開発の後、ロシアのR-37M長距離空対空ミサイルによって成されたウクライナ空軍機の最初の撃墜についてメディアが発表した:

R-37R-33から派生した。MiG-31のような最新型レーダーを備えてはいない航空機との互換性のために、半能動的な追尾装置は「Agat 9B-1388」アクティブ追尾装置の変化型に置き換えられた。同様に、折りたたみ式テールコントロールはMiG-31ほどには大きくはない航空機の半共形搭載装置であってさえも搭載を可能にする。

ミッドボディ外板が揚力を高め、したがって射程範囲を広げる。「ディフェンス・トゥデイ」によると、航続距離は飛行プロファイルによって異なる。直接発射での80海里(150 キロ)から巡航滑空プロファイルの215海里(398 キロ)まで。

それ以来、R-37Mの指定はRVV-BD(長距離空対空ミサイル)として知られるミサイルの中でも近代化された変形モデルとして多用されている。R-37Mの航続距離は200kmを超え、極超音速での飛行(マッハ56)が可能である。これは近代化されたMiG-31BM迎撃機、あるいは、Su-35SSu-57等の多用途戦闘機に装備される。「Izdeliye 57」として指定されているSu-810用の長距離空対空ミサイルがはたしてR-37Mの派生型であるかどうかは不明だ。

本ミサイルはAgat 9B-1388システムを介して半能動的に、または、能動的に誘導され、高度15,00025,000メートルの目標を攻撃することができる。

R-37Mミサイルの最大到達距離は400キロメートル(~250マイル)で、極超音速域での速度はマッハ56と言われている。それはウクライナの防空システムの範囲外から、つまり、安全な空域からでもウクライナの奥深くへと発射することが可能にする。

2023年の2月、ウクライナはR-37Mの残骸を発見したと主張した。

ロシアの標的に対してイギリスの「ストーム・シャドウ」ミサイル(および同様のフランス製のSCALP-EG)を発射するために、改造されたウクライナの飛行機が使用されてきた。だが、それらの使用で成功したとの最近の報告については私は聞いたことがない。

ウクライナ軍の航空機は生き残るためには地表すれすれに飛ぶ必要がある。

ウクライナの航空機の損失が突然増加したという事実は改善された照準能力や長距離射程範囲を備えたR-37Mの新しい変形モデルが多数導入されたことを示している。

米国は「長距離」(100キロメートル、60マイル)のAIM-120D空対空ミサイルを搭載したF-16戦闘機をウクライナに導入する計画である。これはロシア空軍機の能力に比べて明らかに劣っており、損失を助長するだけだ。

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これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事はロシアとウクライナの空軍力の差を、部分的ながらも、分かり易く説明している。ウクライナ軍の弱点は制空権を失ったことにあるとしばしば指摘されているが、ロシアの空軍力の優位性は新型の空対空ミサイルの導入によって今まで以上に強化されたようだ。

ロシアの新型ミサイルが何を意味するのかについては、今回の引用記事が述べているように、米国は自国の主力戦闘機であるF-35 戦闘機の優位性を失うかも知れないとして、新たに起こっているウクライナでの状況の解明に慎重な態度をとっているという。

ロシアはすでに極超音速ミサイル(例えば、キンザール)を実戦配備しており、ウクライナで実際に使用した。その一方、米国側は極超音速ミサイルの試射に漕ぎ着けたものの、初めての試射は失敗したと報じられている(CNN2022年6月30日の報道)。

一方、今年の6月以降のウクライナ軍による対ロ大攻勢は失敗に終わって、バイデン政権にとっては大きな不満ではあろうが、ヨーロッパ諸国がこの紛争の最中に米国からF-35戦闘機を大量に購入する決定をしている事実を見ると、米国の軍産複合体にとってはロシア・ウクライナ戦争は実に有益であったと言えるのではないか。むしろ、F-35 戦闘機をEU各国に売りつけ、高額の収益を上げることが、ノルドストリーム・パイプラインを破壊することと並んで、米国の隠された目標のひとつであったのではないかとさえ私には思える。

この大攻勢が行われた今夏、ウクライナは9万人もの戦死者を出し、西側から供給された戦車や大砲は思った程の威力を見せずに終わった。今は、西側から供給されるF-16戦闘機が最後の頼みとなってきた。だが、この引用記事でも分かるように、この最後の選択肢もそれほどは期待できそうにはないようだ。ウクライナは長引く消耗戦の影響を受けて、経済が破壊されている。その一方で、西側が思い付きで採用した対ロ経済制裁はロシアに対して何の効をも奏さなかった。代理戦争の戦場となったウクライナは踏んだり蹴ったりだ。

米国は最新鋭のF-35戦闘機をウクライナへ供給する意思はないという。そんなことをしたら、核大国であるロシアに対して米国が大っぴらに宣戦布告をするようなものであるからだと言われている。

米国は新たな下院議長の選出で混乱を見せていたが、ついにマイク・ジョンソンが新議長として選出された。新議長はウクライナに対する米国の軍事支援を今後どう判断して行くのだろうか?従来と変わらいのか、それとも、新たなスタンスをとるのか?ガザ・イスラエル紛争が新たな軍事的局面に入っている時であるだけに、米国にとっては海外における軍事的展開は今まで以上に難題となりそうだ。(注:1022日に掲載した「二正面作戦は間違いなく不可能  米陸軍の前司令官は米国はふたつの代理戦争を同時に遂行することはできないと言う」と題した投稿を参照いただきたい。)

ましてや、中国に対する米国の攻勢は論外とならざるを得ないのではないだろうか?それとも、われわれ素人にはまったく予想もできないような展開が待っているのであろうか?

参照:

注1:Ukraine’s Sudden High Air Losses Likely Caused By New Russian Missiles: By Moon of Alabama, Oct/25/2023

 

 


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