2023年12月5日火曜日

西側はウクライナとゼレンスキーの頭上に爆弾を投下 ― 内部告発者の言

 

ロシア・ウクライナ戦争についてはさまざまな出来事、批判、警告、予測が行き交ってきた。この夏のウクライナの対ロ大攻勢が何らの成果も挙げなかったことから、最近、ゼレンスキー大統領の去就さえもが感心を集め始めている。

そもそも、ロシア経済を衰弱させて、プーチン政権を内側から打倒するという筋書きで対ロ経済制裁を進めて来た西側は今後もウクライナを支援し続ける余裕や決意があるのかどうか?非常に疑問である。どう見ても、どこの国も最近はかっての積極さを失っているようだ。NATO加盟国の内部ではポーランドとバルト3国が対ロ制裁の急先鋒であった。だが、これらの国々は財政的には大国ではない。ヨーロッパにおいて財政大国と言えば、それはドイツだ。だが、そのドイツが「支援疲れ」を見せている。

ドイツ連邦議会議員を務めるサラ・ワーゲンクネヒトは、ウクライナへの240億ユーロという途方もない「贈り物」に不満を表明。「ウクライナはますます底なしの穴の様相を呈している。ドイツ政府の統計によると、紛争中に240億ユーロもの国民からの税収をウクライナへ注ぎ込んだ。この用途には武器を入手するための資金やウクライナの国家予算への補填が含まれる」と彼女は述べた。同時に、ワーゲンクネヒトは、米国や一部の欧州諸国はウクライナへの支援を差し控え始めていると指摘した。さらに、EUはウクライナに総額850億ユーロの財政支援を提供したが、そのほぼ4分の1はドイツの納税者によって賄われていると強調した。「これは、ドイツがEU経由でウクライナにさらに200億ユーロを送ったことを意味する」と政治家は付け加えた。支援総額は440億ユーロに達し、ウクライナ難民支援にさらに140億ユーロが割り当てられると、その額は600億ユーロに増加するとワーゲンクネヒト氏は見ている。彼女は貧困にあえぐ子どもたちを支援するために20億ユーロを割くことの妥当性について議論が高まっている国でこのようなことが起きているのだと強調した。米国とEUはウクライナ危機にはうんざりし、ウォロディミル・ゼレンスキーへの支持が弱まりつつあると西側メディアはしばしば報じている。NBCによると、米国とヨーロッパの当局者は、かってはソビエト連邦の一員であった国家が何らかの合意に達するためには、何を諦めなければならないかを含めて、ロシアとの平和的交渉がもたらし得る結果についてすでに議論を初めている。(原典:‘Ukraine - Bottomless Pit’: MP Slams Kiev’s Soaring Demands Amid Growing Crisis in Germany: By Sputnik, Dec/02/2023

また、ウクライ国内を見ると、有権者の支持はゼレンスキー大統領の支持者グループとウクライナ軍のトップであるワレリー・ザルジニー将軍の支持者グループとに二分されている。

報道によると、大々的に喧伝されていた対ロ大攻勢は失敗に終わり、この大攻勢は膨大な数の死傷者をもたらし、西側には戦争疲れの増大を招いただけだ。ウクライナ軍のトップと国家元首の間には大喧嘩が起こった。ウクライナのオンライン紙は大統領よりも最高軍司令官のワレリー・ザルジニー将軍に対する信頼の方が大きいと報じている。調査データによると、ザルジニー氏の支持率は82%、ゼレンスキー氏は72%。市民の63%が最高司令官を完全に信頼し、19%はどちらかと言えば同司令官を信頼するとしているのに対し、ウクライナの指導者については、それぞれ39%33%である。(原典:Zaluzhny vs. Zelensky: Top Ukrainian General Surpasses President in Approval Rating: By Sputnik, Dec/02/2023

ここに「西側はウクライナとゼレンスキーの頭上に爆弾を投下 ― 内部告発者の言」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳し、急速に変化してきたゼレンスキー大統領を取り巻く政治的環境について読者の皆さんと共有しようと思う。

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Photo-1© AP Photo / Evan Vucci

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は西側にとっての有用性を失ったことはいまだに否定していると、元ウクライナ外交官で内部告発者でもあるアンドリー・テリジェンコ氏がスプートニクのポッドキャスト「バックストーリー」に語った。

ウォロディミル・ゼレンスキーの支持率はウクライナで急落している。

エコノミスト誌によると、最新の世論調査ではウクライナ大統領への信頼度は32%で、ウクライナ軍最高司令官のワレリー・ザルジニー 将軍の信頼度70%の半分以下であって、ウクライナの諜報機関のボスであるキリロ・ブダノフのそれ(45%)より13%も低い。

「平和を望んでいたウクライナ国民の70%の支持を得ていた大統領の正統性は、プロパガンダ装置がまだ機能しているにもかかわらず、今日、劇的に低下している」と、元ウクライナ外交官で内部告発者のアンドリー・テリジェンコはスプートニクに語った。

「そして、彼はいかなる選挙も実施しようとはしない。彼は独裁者だ。彼は大統領の座に身を置いた。彼はそれは1期で終わるだろうと言っていた。ところが、2期目もそこにいるようだと述べた。戒厳令はあるものの、ウクライナには軍事的な地位もなく、公式の戦争承認もないままであるのにもかかわらず・・・ だから、法律自体が戒厳令であることは容易に想像できようが、ウクライナ政府やウクライナ議会が公式に認めている状況、つまり、いかなる選挙でも見送るといった公式の戦争状態は存在してはいない。」

「だから、彼がやっていることは、西側が今日ウクライナを裏切っているように、民主主義がやろうとすることとは正反対だ。そして、最新のニュースによると、今日、ウクライナ議会ではウクライナ議会の諸々の派閥は、ウクライナ政府、つまり、ゼレンスキー政権による圧力を受けて、戦争や戒厳令が終わるまではいかなる選挙の実施も支持しないとして、合意に署名するよう促されたということだ。そして、戦争や戒厳令が終わってから6か月後、ウクライナで選挙が行われるであろう。」

この8月、ゼレンスキー大統領は当初20243月に予定されていた選挙の実施は、戒厳令が施行されていても、西側諸国が資金と支援を提供すれば可能であるとほのめかした。しかし、ウクライナ軍の幹部との対立が頂点に達すると、ゼレンスキーは、西側諸国の政策立案者らが彼の正当性を守るためには民主的な選挙手続きを実行するよう促したにもかかわらず、選挙の実施を排除した。

ポッドキャストの「バックスト―リ-」に、先月、出演した国際問題と安全保障の専門家であるマーク・スレボダ氏は、西側はゼレンスキー氏を排除しようとしており、ウクライナの現職大統領の支持率が低いことを考えると、選挙を行うことが最も都合の良い方法に見えると示唆した。しかしながら、テリジェンコによれば、ゼレンスキーは自己欺瞞の「バブル」の中に収まっている。

「(ゼレンスキーは)自分がワシントンに捨てられるなんて思ってはいない」とテリジェンコは述べている。彼は、チームメイトや政権、ならびに、アンドリー・イェルマク(ウクライナ大統領府長官)によって、まだバブルの中に閉じ込められており、「ああ、西側ではあなたはまだ歓迎されている。確かに、彼らは少しは冷静になったのかもしれないが、われわれはまだワシントンと調整している」と言う。だが、西側はウクライナにこの爆弾を投下し、ゼレンスキーを破壊するつもりだと思うと彼は述べた。

1年前、ワシントンで、ウクライナでの戦争が終わった場合、あるいは、戦争に負けた場合、すべてはゼレンスキーのせいにすることができるという話し合いが行われていると聞かされた。それが今日起こっていることだから、ゼレンスキー政権は非難されるのかも知れない。そして、ゼレンスキーは妄想に陥っていると思う。彼は現実の世界に戻って来るべきだ。しかし、バイデンがそばにいるので、彼は自分は神だと思っているのではないか。」

ゼレンスキーが西側に騙されただけではなく、ウクライナ国家全体も騙されたのだと元ウクライナ外交官は強調する。彼自身も、時には、西側が唱えるストーリーを信じ込んでいたことを思い出す。テリジェンコによれば、2014年のウクライナ・クーデターは最初から最後まで西側によって計画され、画策され、いわゆる「マイダン革命」には何百万ドルもの現金が注ぎ込まれた。米国とその同盟国は同時にウクライナがNATOに歓迎されると約束したが、ワシントンはウクライナを大西洋条約機構に加盟させるとは思えないと元外交官は指摘した。彼は、「NATOのおとぎ話」はウクライナを「反ロシア」に仕立て上げるために欧米によって利用されただけだと述べた。

NATO加盟のストーリーはウクライナをおびき出すために利用されたのだと思う。「ウクライナは10年から20年前にはNATO加盟国になれた筈だ。当時は現在よりも優れた軍隊があり、はるかによく準備されていた」のだが、「政治的な意思はなかった」とテリジェンコは言う。ウクライナは、このNATOのストーリーに誘い込まれた。「お前たちはEUNATOに加わり、NATOはお前たちを助ける」というお伽話を見せつけるために欧米が仕組んだプロパガンダだった。しかし、このプロパガンダはウクライナを反ロシアにするために利用された。つまり、ウクライナは決してNATO加盟国にはなれない。すべてはウクライナを反ロシアに仕立て上げ、ウクライナをNATO同盟の一部にするとして利用されただけだ。ロシア人を殺し、それを使ってロシアを内部から崩壊させようとしたのだ。

この内部告発者は、欧米は進行中の危機で本当の顔を曝け出すことになったが、腐敗したウクライナの政治家たちは欧米の餌に乗じてロシア嫌いを受け入れたため、自分たちの弱さと近視眼性を示すことになったと結論付けている。

時事問題のより詳細な分析については、スプートニクラジオの番組「バックストーリー」をご覧ください。

***

これで全文の仮訳が終了した。

西側各国の指導者の最近の挙動を観察すると、自国の主権を守ることを最優先にして来たのはEUの対ロ政策に批判的な姿勢を示したハンガリーのオルバン首相や米国の軍産複合体に抵抗してきたトランプ前大統領のふたりが他を抜きん出ていると私は思う。その他の指導者たちはまさに烏合の衆だ。知性や政治倫理、人間性を第一とする行動を見せてはくれなかった。その結果、何が起こったかと言えば、世界は新型コロナ禍や新冷戦といった新たな世界規模の危機をもたらしたのだ。そこでは多数派が政治を主導するという民主政治システムを一部の利益集団がまんまとハイジャックし、彼らの筋書きを巧妙に喧伝し、一般大衆を洗脳し、警告を唱える学者や良識派はキャンセルし、議論の場からは追い出してしまったのである。

私がブログを始めた2011年には自分が国際情勢にのめり込むとはまったく予想もしてはいなかった。当初私が取り挙げた国際的なテーマを振り返ってみると、「TPPISD条項の不条理」(20121月、6月、11月)や「福島原発事故」(20125月、6月、9月、10月、11月)、「世界で最も貧しい大統領」(201212月)、等を経て、20132月には「乗っ取られたシリア革命」を掲載した。今思うと、私にとってはこの「乗っ取られたシリア革命」はひとつの転換点であったように思える。ノンポリで過ごして来たそれまでの自分を、幸か不幸か、開眼させてくれたのだから。

あの頃から私は国際政治におけるさまざまなニュースの背景にいったい何が隠されているのかを私なりきに知りたくて、インターネットで入手可能な情報を毎日漁った。毎日が日曜日の身分である私には自由に使える時間があった。こうして、ブログでの投稿にのめり込んで行った。「乗っ取られたシリア革命」は、今から思うと、私にとっては極めて想い出深い投稿となった。

そういった感慨や気付きを少しでも多く読者の皆さんと共有出来たら嬉しい次第だ!

参照:

注1:West to Drop Bombshell on Ukraine and Destroy Zelensky Whistleblower: By Ekaterina Blinova, Sputnik, Dec/01/2023

 

 


1 件のコメント:

  1. ユーチューブ動画「ロシアニュース解説:和平交渉妨害の事実‼️〜ウクライナ側責任者の告白」(2023年11月29日版)の閲覧をお勧めします

    サイト:https://youtu.be/BMX8hMoVaH8?si=ymrmrLQZo0OAem7e (24分) 

    主な要点:
    ◆ウクライナ軍女性兵士:62,000人
    ◆ウクライナ戦争は米英の仕業。ドイツは彼らに騙された。ドイツは心情的には抵抗の立場だが、表面的にはウクライナ支持を装っている。たとえば、最近ウクライナを訪問したドイツの国防相はウクライナへの弾薬の補給を約束したが、その納入時期は2024年だと言う。弾薬が尽きかけているウクライナにとっては有難味がない。
    ◆米英は徴兵年齢を17歳~70歳に引き上げるようウクライナに求めている。女性兵士の追加動員も。
    ◆イスタンブールで行われた和平交渉(2022年3月29日)ではウクライナもロシアも和平案に同意した。だが、米英は和平に反対。当時の英国首相であったボリス・ジョンソンがこの和平をぶち壊した。和平交渉に参加したウクライナ側代表(「国民の僕」党の党首)から直接話が聞ける点が重要。
    ◆ロシアではパンデミックは大したことはなかった。ロシア側の対策は、今考えて見ると、西側の対応策に呼応していたが、西側との「お付き合い」のためだったのではないかとさえ思える。ロシアではアデノウィルス系ワクチンが使用されたが、WHOはロシア産ワクチンをワクチンパスポートへ記入することを許可しなかった点が不思議であった。(もう一人のロシア在住者の報告)
    ◆フロリダからの情報。ゼレンスキー大統領の代理人が2隻のヨットを購入していたことが最近発覚した。
    Lucky Me号:2023年10月18日購入。46m長さ。2500万ドル。
    My Legacy号:2023年10月26日購入。55m長さ。5000万ドル。
    合計で7500万ドル。
    ◆総じて言えることは、この「ロシアニュース解説」動画のオーナーの方の所見は極めて重い。ロシア・ウクライナ戦争は単にロシアとウクライナとの間の二国間の戦争ではまったくなく、ウクライナを舞台にした米ロ間の戦争である。つまり、この戦争は大国の米国が大国のロシアにウクライナを利用してけしかけた代理戦争であるという指摘である。
    米国がこの戦争を始めた構図は米国が今まで絡んで来た数多くの戦争と共通する要素を持っていることがよく分かる!軍産複合体は自分たちの金儲けのためにいつも同じ教科書を使って同じような戦争を行っているのである。

    尚、この動画の続きとして、同じオーナーの動画サイトで「【緊急特別編③】及川幸久さん〜日本の今後について」(2023年12月3日版)https://youtu.be/CrC25uDrUhg?si=yey8KBmWLN9vkEs
    もお勧めです!
    日本の将来を考える時にどうしても避けては通れない重要な論点を共有したいと思います。

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