2023年12月1日金曜日

米独の和平計画は西側がウクライナを失う瀬戸際に立たされていることを示す

 

西側はついにウクライナを説得してロシアとの和平を探らなければならない段階に到達したようだ。

ここに「米独の和平計画は西側がウクライナを失う瀬戸際に立たされていることを示す」と題された最近の記事がある(注1)。

本日はこの記事を仮訳して、読者の皆さんと共有しようと思う。

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ドイツのビルト紙は、西側の二大国はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にロシアとの交渉を強要しようとしていると報じている。この報告とそのタイミングの背景はいったい何なのか?

このドイツ紙の出版物によると、ワシントンとベルリンの両政府はキエフを支援する軍事物資を削減することによってウォロディミル・ゼレンスキーには選択肢をほとんど与えず、ウクライナにロシアとの交渉を迫る動きを開始したという。

ビルト紙によると、ウクライナ軍とロシア軍との接触線に沿って新たな準国境を固め、この軍事紛争を凍結することを想定したプランBもあるという。

「第一に、この報告書は特定の時間的文脈で解釈するべきだ」と政治学者であり、高等経済大学(HSE)の教授でもあるドミトリー・エフスタフィエフはスプートニク紙に語っている。「もちろん、これは声明ではない。これは宣伝行為だ。これは、防空を強化するために地上基地の防空システム連合を創設するという重要な決定を下した悪名高いラムシュタイン・グループの会議が終わった直後にメディアに登場した。しかも、ウクライナの防空を強化するだけではなく、ウクライナと国境を接する国々の防空をも強化することは明らかだ。したがって、これはウクライナが交渉の準備ができていることを示す特定の政治的措置を講じる必要があるという最初の提案でもある。」(訳注:ラムシュタイン・グループとは、ウィキペディアによると、ウクライナを支援するNATO加盟国ならびに他の国々からなる支援国のグループを指す。2022426日にドイツのラムシュタインにある米空軍基地で開催された第1回会議以降、17回の会議が開催されている。日本もどれかの会議に参画したことがある。)

2の側面は、「国民の僕」党のリーダーであるダヴィド・アラハミアとのインタビューで、これは「明らかに西側と同調している」。エフスタフィエフによれば、これは「前線における問題を背景にして、ことさらに示唆に富んでいる」という。

アラハミアは西側のジャーナリストに対し、20223月のキエフとの和平交渉におけるロシア側の主な条件はウクライナの中立性を保証し、ウクライナがNATOに加盟しないことを保証することだと指摘した。(2022年にベラルーシとトルコで行われたロシアとの交渉でウクライナ代表団を率いていたのはアラハミアであった。)さらには、ロシアはウクライナとの和平交渉を望んではいないとする欧米マスコミの言説については、モスクワは交渉に前向きであり、キエフの準備が整い次第に交渉を開始する可能性があると述べ、このことを暴露した。

「現在、キエフに対する西側の支援は支援を提供する主要国、まず第一に、ドイツと米国にとって、政治的にますます費用がかかり、この支援を何と形容しようが、ますます高価になっている」とエフスタフィエフは言う。「米国はすでにウクライナへの支援をほぼ停止している。勿論、ペンタゴンによる再評価は残るのであろうが、もはや大きな支援パッケージは期待できない」と述べた。

「欧州連合からの支援は主に行政システムの機能維持とある種の社会的支援を目的としており、軍事支援はそれほど多くはない。したがって、第一の要点はキエフへの支持は政治的には有毒になっているということだ。」

「第二の点は、欧米筋の発言から極めて明瞭に分かることではあるが、キエフは、今、モスクワとの停戦という多かれ少なかれ受け入れ可能な条件を主張できる最後の瞬間に直面しているという点だ。第三の点は、西側は隠そうとはしていないが、ロシアはこれらの交渉のいかなる開始条件についても同意するだろうという点だ。アラハミアはこのことについて直接、率直に、躊躇なく語っている。」

西側はゼレンスキーに対してまさに最後通牒を与える:

このドイツ紙によると、米独はウクライナには戦線を維持するには十分な、限られた量の兵器を供給する予定であるが、これは新たな攻勢を展開するには十分ではない。これによりゼレンスキーは和平交渉を検討せざるを得なくなるだろうと同紙は主張している。

「ここに提案された介入の仕方は非常に効果的であるように思われる」とこの学者は言う。「ゼレンスキーは他にはいったい何処から武器を入手できるのか?旧ウクライナ社会主義共和国当時の領土内におけるソビエト軍の倉庫に残っていた武器は明らかに使い果たしてしまった。ウクライナ軍はますます西側諸国からの兵器に頼って戦いを進めるしかない。つまり、ソビエト時代の兵器や現在のウクライナ時代に取得した兵器の数は、特に、ここ45ヶ月間は非常に速いペースで減少している。ウクライナ軍は、今後、西側の兵器を用いてしか戦えず、NATOからの後方支援がなければウクライナ軍の機甲部隊は約45週間で作戦を停止するしかないであろう。

それでも、エフスタフィエフは西側がゼレンスキーに会談開始を説得するのに時間を無駄にすることはないだろうと考える。彼等はゼレンスキーに最後通牒を突きつける可能性が高い。彼はロシアとの交渉のテーブルにつく。あるいは、彼の後継者がそうする。ゼレンスキーは西側の目から見て、決して不可欠な存在ではないと同教授は言う。

西側は「領土と引き換えに時間を稼ぐことを厭わない人物を必要としている」とエフスタフィエフは述べている。それはウクライナの国家システムを安定化させ、いくつかの改革を実行し、ウクライナ国民に対する圧力を和らげてくれるような人物だ。この専門家によると、「ゼレンスキー政権は政治的・宗教的自由の面で米国人やドイツ人が受け入れることができるレベルよりもはるかに深くネジを締め上げたからだ」と述べている。

ゼレンスキーに関して言えば、ロシアとの和平交渉に関する数カ月にわたって彼が述べてきた立場を覆すのは非常に難しいだろうとエフスタフィエフは言う。ウクライナ大統領が、以前、モスクワとの交渉を違法とする法令を発令したことを念頭に置いておくべきだ。「これはゼレンスキーと彼の側近にとっては絶対に受け入れられない」と同教授は述べた。

西側はそのことをよく承知しており、流れの中で馬を取り換えることを検討している:「彼らはすでに、新しいシャルル・ド・ゴールが必要であることを公然と示した。ウクライナは、ウクライナ版のアルジェリア、つまり、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国、ならびに、クリミアを見捨てるド・ゴールのような人物を必要としている。

19541962年のフランスとアルジェリア民族解放戦線との大規模な武力紛争の際、当時のフランス大統領シャルル・ド・ゴールは、当時フランスの植民地であったアルジェリアを保持し続けることはフランスの資源を枯渇させ、ヨーロッパにおけるフランスの立場を弱めることになるという結論に達した。こうして、196275日、アルジェリアは独立を勝ち取った。)

なぜ西側はウクライナの停戦交渉を推進し始めたのか?

西側の政策立案者の中には、ウクライナ軍の最高司令官であるワレリー・ザルジニー将軍をウクライナのド・ゴールと見ている者もいるようだが、問題は彼がザポリージャ州とヘルソン州を奪還するという野望を諦めそうにないことだ。両地域は住民投票でロシア編入を決議し、20229月から正式にロシアの新領土となった。

ウクライナにおいては民政・軍の指導部内では強硬派が依然として強力であることを考えると、西側の選択肢は限られている。それゆえ、プランB、つまり、「凍結された紛争」がドイツの新聞で引用されている。

「こうした交渉は全てがキエフ政権が現在支配している地域での国内情勢を安定化させるための時間稼ぎに過ぎない。だが、私の意見では、これは注意を払う必要がある」とエフスタフィエフは指摘した。

何としてでも状況を安定させようとする西側の企みの背後には何があるのだろうか?この学者によると、答えは明確である:

「西側が今最も怖がっているのは前線での敗北ではない。殆どの欧米人は(ウクライナの)後方で何が起きているのかについては十分な理解を持っていると思うが、(ウクライナの)行政制度が急速、かつ、壊滅的に崩壊する可能性に怯えているのだ。だからこそ、彼らは状況を凍結し、後方の国内の安定性をいくらかでも回復させようとして、ヒステリックに聞こえる程の圧力をかけているのだ」とエフスタフィエフは締めくくった。

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これで全文の仮訳が終了した。

この引用記事を読むと、ウクライナ軍にとってはかねてから最後の頼みと目されていた西側からのF-16 戦闘機の西側からの供与はすでに棚上げされたのではないかと勘繰らざるを得ない。とすると、F-16戦闘機が送り込まれる予定であった来年の春を待たずに、ロシア・ウクライナ戦争は何らかの形で終結することになるのかも。

この戦争はウクライナ軍に何十万人もの戦死者をもたらし、ある部隊の現在の平均年齢は53歳だという。この消耗戦もついに終わるのである。

2014年のマイダン革命以降、ウクライナ東部ではキエフ政府軍がロシア語を喋る東部2州の住民に対して武力弾圧を展開して来た。20202月中旬時点で、ドンバス地域での戦争による死亡者数は13,00013,200人とされている。国連は20203月末までに、3,353人の民間人が紛争で死亡したことを確認した。これらはロシア・ウクライナ戦争が始まる前にすでに起こっていたことであり、非人道的で、極めて悲惨な状況を示していた。

ドネツクおよびルガンスクの両人民共和国からの要請を受けて、地域住民の生命を守り、悲惨な状況を解決するために、ロシアは2022224日にウクライナ東部で特別軍事作戦を開始した。その際、ロシア政府はこの特別軍事作戦の目的はネオナチを一掃し、ウクライナの戦争遂行能力を壊滅することにあると公言した。

あれからすでに2年近くが経過した。ロシアは果たしてウクライナの国内政治を牛耳って来たネオナチを含む極右勢力を一掃することには成功したのであろうか?ウクライナ軍は軍隊としての組織力が弱体化し、崩壊の瀬戸際にあるのは事実であるが・・・

ウクライナ軍のヴァレリー・ザルズニー最高軍司令官が公式に述べた「ウクライナ軍による対ロ大攻勢は膠着状態に陥った。NATO軍の教科書はそれ程役には立たなかった」という一言(原典:Ukrainian Top General Admits Counteroffensive  ‘in Stalemate, NATO Textbooks Did Not Help Much’: By Sputnik, Nov/02/2023)がウクライナを取り巻く西側の戦争屋ののぼせ上った頭を有効に冷やしてくれたようだ。

ここで、1130日の最新の報道についても注目しておこう。次のように報じられている:

「ウクライナがNATOに加盟するかどうかは誰にも分からない。」これは、ウクライナのゼレンスキー大統領がムィコラーイウへの旅行中に学生との会合で述べた内容であって、関連する質問に対する回答を含む動画が彼のテレグラムチャンネルで公開された。ゼレンスキーによると、ウクライナ当局はウクライナのNATO加盟への道筋を正確に把握しているわけではない。「NATOに加盟するのか、加盟しないのかは誰にも分からない。加盟したいとは思うけど・・・」と言った。(原典:Zelensky doubts that Ukraine will ever become a member of NATO: By TASS, Nov/30/2023

彼のこの発言はウクライナを取り巻く西側が、彼の意向とは違って、ロシアとの和平交渉を具体的に考え始めたという現実を反映したものであるように私には思える。これは彼が前から主張していた内容‘とは真逆の方向であり、今回の彼の発言は彼自身がロシア・ウクライナ戦争からの出口戦略を模索し始めた兆候であると言えるのではないだろうか。

結局のところ、西側の軍産複合体によってウクライナを舞台にしてNATO軍からの支援を受けながら、ウクライナ軍による対ロ代理戦争が継続されては来たが、そのメリットはもはやゼロに限りなく近くなったと西側は判断しているようだ。

言うまでもなく、ウクライナ政府の財政状態は最悪だ。完全に破産状態である。政府の予算は外部からの融資がなければ成り立たない。

たとえば、世界銀行は新たに12億ドルの融資に応じることにしたが、これは日本政府の保証の下で行われると世界銀行が報じている。この融資によって、29個のプログラムにまたがる独立志向の市民グループに対する支援に供される予定だ。たとえば、孤児や身体不自由児、里子、生徒や学生たちが挙げられ、さらには、チェルノブイリ原発で放射能被害を受けた消火隊員たちも含まれる。また、さまざまな改革にも供される。世界銀行は総額で380億ドルをキエフ政府に融資している。資金の供与国家は20カ国に及び、米国、英国、ドイツ、スウェーデン、カナダ、インドネシア、他が挙げられる。(原典:Unreliable borrower: Ukraine is no longer issued loans without guarantors: By LIFE.ru, Dec/01/2023

ウクライナは、今や、さまざまなチューブを介して生命維持装置に接続されている重篤な患者のような感じだ。

参照:

1US-German 'Peace Talks Plot' Shows West on Brink of Losing Ukraine: By Ekaterina Blinova, Sputnik, Nov/26/2023

 

 

 


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