2023年1月15日日曜日

アレクサンダー・メルク―リスの言 ― 何か大きなことが起こりつつある

 

またもや、ウクライナ情勢について書くことにする。ロシア・ウクライナ戦争は益々消耗戦の様相を強めているようである。

114日、国連に駐在するロシアの永久代表を務めるネヴェンツィア氏は国連安保理で「ロシアはウクライナでの特別軍事作戦の目標が平和的に達成されるシナリオの準備ができている」と述べた。また、「この結果が交渉を通じて達成できれば、ロシアにはそのようなシナリオの準備はできている。だが、そうでない場合は、設定されているすべての目標は軍事的手段によって達成されることになる」と強調した。(出典:Nebenzia: Russia is ready for a scenario in which the goals of the CBO will be achieved peacefully: By Pavel Zubov, Gazeta.ru, Jan/14/2023

また、「これからの一年はウクライナ大統領に対して新たな課題をもたらすことになる。一方では、(米下院で優勢となった)共和党はキエフ政府の資金調達に関して監査を開始することを要求し、他方では、地元のエリートは中央政府への不満を隠すことがますます困難になって来ている」と113日の記事が報じている。下院の支配権を獲得した共和党員はウクライナの資金調達における汚職の経緯を究明し始めた。米メディアによると、ケビン・マッカーシー下院議長はこの問題を注意深く監視することを条件に議長に選出されたばかりである。その過程で、彼自身は報告もなしに数百億ドルもの資金が割り当てられるような「オープンチェック」の慣行をやめることを公に約束している。(出典:"It’s not long left." Zelensky has made new enemies: By Mikhail Katkov, RIA Novosti, Jan/13/2023

昨秋の中間選挙の結果、共和党は下院で優勢の議席を得たにもかかわらず、今月早々に行われた下院議長の選出では15回もの選挙が繰り返され、ようやく決着がついた。ケビン・マッカーシーが選出された。

これだけもつれたのは共和党内の政治姿勢は必ずしも完全な一枚岩ではなく、党内は異なった政策を追求するいくつかのグループに分かれているからだ。これらの派閥間の駆け引きが15回もの議長選出劇をもたらしたと言える。最後まで頑張っていたのは共和党内の極右派である「ハウス・フリーダム・コーカス」のグループ。彼らはマッカーシーは民主党のバイデン政権と闘うには不十分だとして、マッカーシーを下院議長に選出することを渋った。しかしながら、マッカーシーが譲歩し、最終的にハウス・フリーダム・コーカスの主張する政策を呑んだのである。こうして、バイデン政府のキエフ政権に対する資金援助に絡む汚職の可能性にメスを入れることが新しく就任した下院議長の公な仕事になった。これは、間違いなく、バイデン政権を追い込むための共和党側の戦略である。

もちろん、ロシア・ウクライナ戦争の将来を左右する要素は他にもいくつか存在するであろう。今後新たに表面化してくる要素があるかも知れない。何と言っても、政治の世界は国内であっても海外であってもキツネとタヌキの化かし合いであるからだ。

ここに「アレクサンダー・メルク―リスの言 ― 何か大きなことが起こりつつある」と題された記事がある(注1)。

これは定評のあるマイク・ホイットニーの記事だ。過去にこのブログで取り上げた彼のもっとも最近の記事は「ウクライナ危機の本命はウクライナではない。本命はドイツだ」と題して昨年の219日に掲載した件だ。当時はまだロシアがウクライナに対して特別軍事作戦を宣言する前であった。だが、彼の見解は説得力を持ち、非常に示唆に富んでいた。あれから、一年がたった。ウクライナ紛争はさまざまな局面を経て、ノルドストリーム・パイプラインの破壊工作という決定的な事件が起こり、ドイツを中心とするEU諸国はロシア産エネルギーと決別し、他の供給源からのものよりも遥かに高価なエネルギーを調達することを余儀なくされた。この状況を見ると、当時マイク・ホイットニーが主張していたことが実際に起こったのだと認めざるを得ない。彼は、他にも、素晴らしい記事をいくつも発表している。

本日はこの記事(注1)を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

***

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「ロシアはこの紛争を終わらせるために交渉する方法はないと判断した。誠意を持って交渉する相手は誰もいないのだ。したがって、敵を粉砕する必要がある。そして、その時が来ているのだ。」 ―  ダグラス・マクレガー大佐の言葉(9:35 分)。

「厳密に言えば、まだ何も始まってはいない。」 ― ウラジミール・プーチンの言葉。

ウクライナでの戦争は交渉によって終結する積りはない。ロシア側は米国を信頼していないことをすでに明らかにしているので、無意味なお喋りで時間を無駄にするつもりなんて毛頭ないのである。ロシアがやろうとしていることは彼らにとって利用可能な唯一の選択肢を追求することだ。つまり、彼らはウクライナ軍を壊滅させ、国の大部分を瓦礫の山にし、政治指導者に対してはロシアの安全保障要求に従うよう強制しようとしている。これは流血沙汰であり、無駄の多い行動ではあるのだが、他の選択肢はない。プーチン大統領は、NATO がロシア国境に敵対的な軍隊やミサイル施設を配置することを許す積りはない。

彼は、ウクライナにおいて新たに出現した脅威を積極的に排除することによって、できる限り最善を尽くして国を守る積りだ。これがプーチンがさらに30万 人の予備兵をウクライナへ派遣するよう呼びかけた理由なのだ。ロシア側はウクライナ軍を打ち負かし、戦争を迅速に終結させることに専念する。ダグラス・マクレガー大佐の簡単な要約を下記に示そう:

ワシントン政府によるロシアとの代理戦争はロシアを隣国のウクライナとの紛争に巻き込むために慎重に構築された計画の結果である。ロシアはウクライナでロシアの玄関先における NATO 軍の存在を容認しないことをプーチン大統領が示した瞬間から、ワシントンはウクライナがこの地域でロシアに敵対する軍事大国へと発展することを促進することにしたのだ。マイダン革命によって、キエフにおけるワシントン政府の工作員は彼らのプロジェクトに協力する政府を設置することに成功した。メルケル前首相が、最近、彼女と彼女のヨーロッパの同僚たちはミンスク合意を利用してウクライナの軍備の強化のために時間稼ぎをさせた事実を認めたが、これはこの問題の悲劇的な真実を裏付けている。」(「米大佐がロシア・ウクライナ紛争を誘発した際の米国の役割について解説」、「ライフサイト」から。)

アンゲラ・メルケルのコメントについてはもう少し時間を費やす必要があるが、これは今日に至るまでの経緯に関する優れた要約でもある。「ディ―・ツアイト」紙とのインタビューでメルケルが実際に述べた内容は次の通りだ:

2014年のミンスク合意はウクライナのために時間を稼ぐ試みであった。今日見られるように、ウクライナはこの時間を活用してより強力になった。」前首相によると、紛争が中断されるも、問題は解決されていないことは誰にとっても明らかだったが、それこそが、ウクライナ側に貴重な時間稼ぎの機会を与えるためのものであったと語っている(タス通信社)。

メルケル前首相は、彼女や他の西側諸国の指導者たちのミンスク合意に関する真の意図について意図的にロシアを欺くことであったことを認めたことによって、激しく批判されることになった。事実、彼らはウクライナに合意の条項を遵守するよう圧力をかける積りはなく、最初から分かっていた。われわれが事実として知っていることは、メルケルもその同盟国も平和に関心を持ってはいなかったということである。第二に、彼女がヘマをして、彼らが実際に何をしていたのかを認める前に、7年間にもわたって彼らは詐欺を続けていた事実に関して、今や、われわれははっきりと知ることになった。そして、最終的に、メルケルのコメントからはワシントン政府の戦略的目標はミンスク合意の正反対であったことが明らかだ。本当の目標は、ロシアに対するワシントンの代理戦争を引き起こし、軍事化されたウクライナを構築することであった。それが第一の目的であり、それは対ロ戦争そのものであったのだ。

では、なぜプーチンはそのような人々と交渉することを考えたのであろうか。ロシア兵を殺すために使用される武器でウクライナを氾濫させている間、7年間にもわたって彼の目と鼻の先で嘘をついてきた連中と交渉をする?

そして、メルケルと彼女のワシントンの同僚たちが嘘をつくことを余儀なくされた目的はいったい何だったのか?

彼らは戦争を望んでいた。これはゼレンスキーが 3 月にモスクワと交渉した合意をボリス・ジョンソンが葬り去ったのと同じ理由からであった。ワシントン政府が戦争を望んでいたので、ジョンソンはこの協定を妨害した。実に単純な話なのである。

しかし、嘘をつくことには代償が伴う。その代償は不信を招く。不信は相互の関心事の問題を解決することを不可能にし、有害となり、信頼を侵食する。ロシアの国家安全保障会議の副議長であるドミトリー・メドベージェフは、今週、この問題に関して自分の見解を最も厳しい調子で表明した。 彼はこう述べている。つまり、「ワシントン政府とその他の連中の今年の行動はすべての国への最後の警告である。アングロサクソン世界との取引はもうあり得ない。なぜならば、連中は泥棒であり、詐欺師であり、何でも仕出かすトランプ詐欺師であるからだ・・・。これからは、新世代の分別のある政治家が権力を握るまでは彼らなしでやっていく積りだ・・・。西側には、何らかの理由で何かの問題について対処できるような人物は誰もいない。」(元ロシア大統領、西側諸国との和解について時系列的に概説RT

もちろん、ワシントンの戦争屋であるタカ派はロシアとの関係が断絶されるという見通しに悩まされるなんてないであろう。実際、おそらくは、彼らはそれを歓迎していることだろう。しかし、ヨーロッパについては必ずしも同じであるとは言えない。

ワシントンの重たい金床に自分の体を縛り付けて、海に飛び込んだことをヨーロッパは後悔することであろう。近い将来、経済的生存が安価な化石燃料へのアクセスと密接に関連していることを彼らが最終的に認識する時、EUの指導者たちは方針を変え、自国の繁栄を確保する政策を実行することであろう。彼らはNATOによる「永遠の戦争」からは撤退し、安全で経済的に統合された未来を求める文明国への仲間入りをすることだろう。現代における最大級の破壊工作によって台無しにされたノルドストリーム・パイプラインでさえも世界最大の自由貿易圏でロシアをEUに結びつける主要エネルギーの動脈を確立し、再接続されるかも知れない。最終的には、この常識が広まり、ヨーロッパはワシントンとの同盟によってもたらされた不況からは抜け出すであろう。しかし、まず第一に、ロシアと西側諸国との間の大火はウクライナで展開しなければならず、「世界の安全保障の保証人」は勝者総取りの競争において自分の条件でゴリアテと戦うことを厭わない唯一の国に取って代わる必要がある。ウクライナ紛争は「ルールに基づいたシステム」に対する戦争であって、決定的な戦いになるように形作られている。この戦争では、米国は「教科書に書かれているすべてのトリック」を駆使し、覇権を維持しようとする。著名な政治アナリストであるジョン・ミアシャイマーによる短い文章を確認していただきたい。彼は米国が世界秩序における支配的な役割を維持する手法を次のように説明している:

皆さんは米国がどれほど冷酷であるかを過小評価してはならない。これはすべてが愛国主義の一部であるため、教科書や私たちが成長するクラスでは巧妙に隠蔽されている。愛国主義とはあなたの国がどれほど素晴らしいかについての神話を作ることである。正しいか間違っているかは米国次第である。われわれは決して悪いことはしない。(しかし)米国がこれまでどのように行動してきたのかを実際に見てみると、われわれが如何に冷酷であったかは驚く程だ。そして、英国人についてもまったく同じことが言えるのだが、われわれはそのことは隠している。つまり、もしもあなたがウクライナでロシアのような強力な国の隣に住んでいるならば、あるいは、あなたがキューバで米国のような強力な国の隣に住んでいるならば、あなたは非常に危険な状況に曝されていることに気付くべきだ。これはまさに象と一緒にベッドで寝ているようなものであるからだ。そのゾウがあなたの上に転がって来たら、あなたはひとたまりもない。細心の注意を払う必要があるのだ。これが世界の仕組みであるという事実に私は満足しているのか?いや、私は満足などしてはいない。しかし、良くも悪くも、それは世界が機能するひとつの形なのだ。」(ジョン・ミアシャイマーの「世界が機能する方法」から。ユーチューブ動画、1 分)

Photo-2:出典: The Unz Review による Multipolarista

結論: ウクライナの和平の見通しは立たない。米国の外交政策の支配層は加速している米国の衰退を逆転させる唯一の方法は軍事的対立を直接引き起こすしかないと判断した。その戦場はウクライナであり、それはこの決定の最初の兆候でもある。一方、ロシアは西側との交渉にはもはや力を入れてはいない。なぜならば、西側の指導者は約束を守らず、条約上の義務を履行することを期待することはできないからだ。二大政党の相容れない相違点により、紛争のエスカレーションは避けられない。信頼できるパートナーが存在しないならば、プーチン大統領にとっては紛争を解決するための選択肢はひとつしかない。それは圧倒的な軍事力である。それこそが彼がウクライナで展開するために30万人の予備軍を召集した理由であり、必要に応じてさらに 30万人を召集する理由なのだ。プーチン大統領は前へ進む唯一の方法はすばやくブームを下げてやり、敗者に彼自身の解決策を促すことだと認識している。これは、まさに、数週間前にミアシャイマーが次のように述べた時に予測したことでもある:

「ロシア人は転んで、死んだふりをするなんて積りは毛頭持ってはいない。実際にロシア人がやろうとしていることはウクライナを粉砕することだ。彼らは大きな銃を持ち出す積りだ。彼らはキエフやウクライナの他の都市を瓦礫の山に変えようとしている。彼らはファルージャを再現する積りであり、彼らはモスルやグロズヌイを再現する積りだ・・・。ロシアのような大国が脅威を感じて、同国は勝利を確実にするためにウクライナで全力を尽くそうとしている。われわれがここで話している状況は核武装をした大国を追い詰めようとしているという現実を理解していただきたい。彼らは何が起こっているのかを理解しており、それはロシアにとっては生か死の脅威であると見ている。この状況は危険極まりない。」(ジョン・ミアシャイマー、ツイッターから。)

Photo-3:出典:The Unz ReviewによるPressTV

では、ロシアがウクライナ軍を打ち負かして戦争を終結させようとしていることが分かった場合、近い将来、いったい何を期待すべきなのか?

以下はこの戦争を最初から綿密に追跡してきた多くの分析専門家たちから得た答えである。すぐにでもそれぞれの回答からいくつかの見解をご紹介するが、まずは、ロシア軍の大規模な攻撃がわずか数週間後に行われる可能性があることを示唆する先週の会議の要約を下記に示そうと思う。これはパトリック・ローレンスによる「コンソーシアム・ニュース」の記事からの抜粋である:

アレクサンダー・メルクーリスの言 ― 最近、プーチンが過去数週間にわたって開催した例外的な一連の会議をリストアップしてみたが、それは軍事および国家安全保障の確立を目指したもののようだ。ロシアの指導者は、モスクワで、ウクライナ作戦を担当するセルゲイ・スロヴィカン将軍を含めて、最高レベルの軍司令官や国家安全保障当局者の全員と会ったのである。

プーチン大統領は、その後、ベラルーシの政治・軍事指導者との交流のためにセルゲイ・ラブロフ外相やセルゲイ・ショイグ国防相と共にミンスクに飛んだ。その後、昨年秋に住民投票によってロシア連邦に編入されたドネツクとルガンスクのふたつの共和国の指導者と会談した。

西側のマスコミではほとんど取り上げられてはいないこれらの相次ぐ会談はウクライナにおける新たな、短期的、あるいは、中期的な軍事展開の前兆であると結論付けざるを得ない。奇しくも、メルクーリスが言っているように、「何か非常に大きなことが起こりつつある」のだ。

これらすべての最も興味深い数々の出会いの中で、先週北京で行われたのは現在ロシア安全保障理事会の副議長を務め、プーチンと長い間親しかったドミトリー・メドベージェフが習近平と会談したことだ・・・。

遠くない将来のある時点で、帝国の傲慢さを代弁する空虚な美辞麗句の戦いは弱まり、崩壊へと向かい始めるであろう。この程のシュールレアルな現実からの乖離は、たとえそれがどのような形をとるのかが判明したとしても、ロシアの新しい展開に直面せずに無期限に現状を維持することはできない。」(パトリック・ローレンス: 「美辞麗句と現実の戦争」、コンソーシアム ニュースから。)

ローレンスの言は正しいか?「何か大きなことが起ころうとしている」のか?

確かにそう見える。以下には、ウクライナ戦争の最高かつ最も信頼できる二人の分析専門家、つまり、マクレガー大佐とアレクサンダー・メルクーリスの最近の動画からの引用を転記することにしよう。両者は、ロシアの「冬季攻勢」が近い将来に行われることで見解が一致し、作戦の戦略的目標についても一致している。以下はマクレガーの動画から:

「米国人はドンバスにおけるウクライナ軍が崩壊の危機に瀕していることを本当に理解してはいない。 彼らは数十万人の死傷者を出している・・・。そして、死者数は15万人に迫っている。93ウクライナ陸軍旅団はロシア軍によってウクライナ兵の虐殺へと変貌して行ったバクムートから撤退したばかりであるが、70%の犠牲者を出して、同地を後にした。彼らにとっては、4,000人の男たちのうちで約1,200人だけが撤退することができた。これは大惨事であり、実際に起こったことなのである。そして、ロシア軍が最終的な攻撃を開始すると、米国人はトランプカードで築き上げられた家が全壊するのを目にすることであろう。唯一の問題は、いったい誰が最終的に立ち上がって、この完全に虚偽に溢れている物語に終止符を打つのかという点だ。」(「ダグラス・マクレガー大佐」、「ランブル」の「リアル・アメリカ」から。845秒。)

マクレガー大佐の言葉はさらに続く:

ロシア人は先ずドンバスで任務を完了したいと考えているようだ。ドンバスにいるすべてのウクライナ軍を排除したいと彼らは考えている・・・。覚えておいていただきたい。これは常に軍事力による経済学である。ロシア人にとって可能な限り低いコストで、できるだけ多くのウクライナ兵を粉砕するように設計された戦いであった。それはウクライナ南部でも起こっていることであって、(そして)今も続いている。この手法は見事に機能した。そして、地域司令官であるスロヴィキンは総攻撃を開始する準備が整うまでそれを続けると述べている。総攻撃が開始されると、それは非常に異なった戦いになるだろう。しかし、興味深い点はウクライナ側が南部で非常に多くの死傷者を出しており、壊滅の寸前にあるという報告を聞き始めていることだ。14 歳か 15 歳の 10 代の少年たちが徴兵されたという話さえも耳にし始めた。そして、ウクライナ兵からの動画によると、興味深いことには彼らは「キエフの連中はわれわれが彼らの所へやって来る前に、ロシア軍がやって来て彼らを捕まえてくれるよう願うべきだ。なぜならば、われわれは彼らを殺す積りだからだ・・・」と言っている。これらの兵士は政府の高官たちについて喋っている。「なぜならば、ゼレンスキー政権は兵士たちのことなんてこれっぽっちも考えてはいない。そんな証拠は何も見当たらないのである。兵士らは凍え、彼らは大量の犠牲者を出し、押し戻されている。」(「ウクライナ軍には十分な戦力があるのか?」― マクレガー大佐、ユーチューブ動画の「ジャッジング・フリーダム」から。17:35分)

マクレガー大佐もメルクーリスも、ロシアの戦略には敵を「粉砕」すること (すなわち、できるだけ多くのウクライナ兵を殺すこと)が含まれていることに見解が一致しているようだ。現在のウクライナ国家をふたつの別個の集団に分割する。つまり、西部は「機能不全の残党国家」であり、東部は工業化され、繁栄した国家だ。ユーチューブ での最近の投稿からアレキサンダー・メルク―リスの見解を下記に示す:

ロシアの冬季攻勢の焦点はドンバスにおける戦闘を終結させることだ。つまり、ドンバスでのウクライナ軍の抵抗を打破し、ドネツク人民共和国からウクライナ軍を一掃することにあるというのが私の強い印象だ。私には、ロシア軍が首都キエフやウクライナの西部へ向けて大きな前進を計画しているようには見えない。それは、ゲラシモフ将軍の次のコメントが言おうとしている点ではない。ロシア人はドネツクに注目している。「リスクは低く」、非常に効果的だ。スロヴィキン将軍が言っているように、ウクライナ軍を粉砕している。戦争を継続するためのウクライナの将来の能力を弱めると同時に、ドンバスを解放することがロシア側の当初からの第一の使命であったが、これらを果たすことになるのだ。

ところで、それだけで終わるわけではない。他のロシア当局者は2023年にはヘルソン地域の奪還が見られる筈だと述べている。そして、他の地域でもロシア軍の前進があることは間違いない。しかし、主な戦いはドンバスだ。その戦いに勝利し、ウクライナの抵抗が打ち破られれば、ウクライナ軍は致命的に弱体化する。つまり、ウクライナは最も高度に工業化された地域と最も高度に要塞化された地域を失うが、それだけでは終わらない。また、それはロシア人が、何の妨げもなく、ドニエプル川の東岸まで到達することができることを意味する。その時点で、ロシアはウクライナを半分に分割できる立場となる。これは私には極めて論理的であり、これがロシアの計画であることは明らかだとさえ思う。彼らはそれを秘密にしているわけではない。人々を警戒させ、ベラルーシに駐屯するロシア軍部隊についてあれこれと推測することを許している。しかし、私は、これらの部隊の主な目的はキエフ周辺に対するロシアの攻撃の可能性を見せつけて、ウクライナの部隊をその地域に固定させておくことにあり、ポーランド軍による非常に大きな増強に対抗することにあると考える。それこそがゲラシモフが言ってきたことだ。」(「アレキサンダー・メルクーリス、ウクライナについて」 ユーチューブ動画から。 3135秒。)

誰も未来を完全に確実に予測することはできない。だが、マクレガー大佐とメルク―リスの両者は自分たちのシナリオをすぐにも却下することはできないという根拠を十分に把握しているようだ。実際、紛争の現在の軌跡は彼らの予測が、おそらく、「完全」であることを示唆しているようである。いずれにせよ、われわれはそのことを見い出すのに長く待つ必要はない。ウクライナ全土で気温が急速に下がっているため、戦車や装甲車両の移動は妨げられない。ロシアの冬季攻勢はおそらく数週間先であろう。

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この記事はもともとはThe Unz Reviewに掲載されたもの。

著者のプロフィール:マイク・ホイットニーはワシントン州を拠点とした、地政学および社会に関する著名な分析専門家。彼は 2002 年に独立した市民ジャーナリストとしての職を開始し、誠実なジャーナリズム、社会正義、世界平和への取り組みを開始した。「グローバリゼーション研究センター 」(CRG)の研究員。 

この記事のすべての画像は TUR からのもの。

この記事の元の情報源は「グローバル・リサーチ」。

著作権 ©マイク・ホイットニー、グローバル・リサーチ、2023年。

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これで全文の仮訳が終了した。

このウクライナ情勢の分析は興味深い。そして、個々の分析の背後にある物の見方も紹介されており、奥の深さを実感させられ、実に秀逸だと思う。たとえば、ジョン・ミアシャイマーの言葉だ。「皆さんは米国がどれほど冷酷であるかを過小評価してはならない。これはすべてが愛国主義の一部であるため、教科書や私たちが成長するクラスでは巧妙に隠蔽されている。愛国主義とはあなたの国がどれほど素晴らしいかについての神話を作ることである・・・」と。特に、最後の「愛国主義とはあなたの国がどれほど素晴らしいかについての神話を作ることである」という部分は光っている!

この1月から来月にかけてのロシア軍のウクライナにおける展開から目が離せなくなってきた。

マクレガー大佐が「第93ウクライナ陸軍旅団はロシア軍によってウクライナ兵の虐殺へと変貌して行ったバクムートから撤退したばかりであるが、70%の犠牲者を出して、同地を後にした。彼らにとっては、4,000人の男たちのうちで約1,200人だけが撤退することができた」と述べているように、劇的な展開を見せて、この戦争が一気に収束するのだろうか。それとも、じわじわと進行する消耗戦が今後も続くのだろうか。素人のわれわれには何とも言えない。もしも米下院で優勢となった共和党がウクライナに対する資金援助の過程で米国国内に違法行為を見つけ出したとしたら、それはバイデン政権を危機的な状況に追い込むことになるのかも知れない。米国からの資金援助が停止し、経済の低迷によって打撃を受けているヨーロッパで厭戦気分がさらに高まれば、キエフにとってそれは運の尽きになる。

ただ、このロシア・ウクライナ戦争は実質的には米ロ戦争であることから、最大で最期の願いはこの紛争を世界規模の核戦争に発展させてはならないという点に収斂する。もしも核ミサイルの発射装置のボタンを押す人物が何らかの理由で狂気に襲われ、核による先制攻撃の道を選んだとしたら世界はいったいどんな状況になるのかはすでに十分に予測されており、ここで改めて繰り返す積りはない。ここで言いたいのは核戦争は決して許してはならないという点だけだ!

参照:

1Alexander Mercouris: “Something Big Is on the Way”: By Mike Whitney, Global Research, Jan/04/2023

 




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