2023年1月4日水曜日

もっとも重要な課題

 

この投稿の原稿を書き始めたのは1231日。2022年は新型コロナやらウクライナ紛争によって攪乱されて、極めて騒がしい、混沌とした一年となった。率直に言って、この一年はどうやら第三次世界大戦へ突入することもなく終わったとして、誰もが胸を撫で下ろしたことであろう。私は必ずしも占星術による未来予測を信じる方ではないが、数多くの専門家たちは2023年はさらに悪化すると予測しているそうだ。高邁な占星術、そして、時にはとんでもない予測をしてしまったことがバレる占星術に頼らずとも、恐らくは、地上に展開している昨今の現実を眺めてみると、誰でもが悲観的な予測に辿り着くことは容易に納得できる。

ここに、「もっとも重要な課題」と題された最近の記事がある(注1)。著者はロシア関連の分析や解説では定評のある「セイカー」である。セイカーの記事は今までも何度かご紹介してきた。

本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。

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20221231日には何とか到達しそうだ。20231231日にははたして到達し得るのであろうか?

この質問は決して誇張ではない。これは少なくとも北半球の領域全体にとっては最も重要、かつ、唯ひとつの論点であると私は強調したい。

私は、ロシアは、少なくとも2014年以来、本格的な戦争の準備をしていると警告してきた。 プーチンはロシア国防省委員会での最近の演説で基本的にまさにそのことに言及した。 もしもあなたはその動画を観たことがないならば、是非ともそれを観るべきだ。その動画はあなたにクレムリンが物事をどのように考え、何を準備しているのかについて極めて直接的な洞察を与えてくれる筈だ。 これがその動画だ(訳注:動画へのリンクは示されていない):

私はあなたがその動画をもう観たと仮定して話を進めよう。そして、ロシアが核戦争を含む大規模な戦争の準備をしていることについて私があなたに証明をする必要なんてないと思う。

ラブロフ外相は公に次のように述べている。「米国防総省の匿名の当局者が実際にクレムリンに対して「斬首攻撃」を行うと言って、脅迫した・・・ 私たちが今話している件はロシアの国家元首を物理的に排除するという脅威のことである(・・・)。 そのような考えが実際に誰かの頭の中で培われている場合、そのような計画がもたらすであろう結果についてその当人は非常に慎重に考える必要がある。」

こうして、次のような状況が存在しているのである:

  • ロシアにとってはこの戦争は明らかに、紛れもなく、公式的にはロシア国家の存亡を占う戦争である。 この現実を認めないという姿勢は愚の骨頂であろう。 地球上で最強の核兵器を所有する国家がこれは国家の存亡を問う戦争であると繰り返し宣言している時、誰でもがそれを真剣に受け止めるべきである。真っ向から否定すべきではない。
  • 米国のネオコンにとってもこれは存亡を占う戦争である。もしもロシアが勝てば、NATOは負けだ。したがって、米国も負けだ。 つまり、これはロシアが戦争に負けると言って、何ヶ月にもわたって一般大衆に向けてロシアに関してナンセンスな情報を流してきた連中は誰もが避けようもない災害の責任を問われることになることを意味している。

Photo-1:(訳注:このリストによって著者は虚偽の情報が執拗に喧伝されていたことを示したかったのであろう。)

この点の殆どの部分は米国人が、特に、米国の権力者が「地下室の狂人たち」と連帯して死ぬことを厭わないかどうかに大きく依存している。 今のところ、彼らはそうなることを厭わないかのように見える。 EUは当てにしないでいただきたい。彼らは長い間いかなる主体性さえをも諦めてきた。単純に言って、彼らと話すことは意味がないのだ。

このことはメドベージェフの最近の言葉をうまく説明してくれるかも知れない。「悲しいかな、何らかの理由から西側には何かの問題に対処できるような人はもはや誰もいない・・・。これは全国民に対する最後の警告だ。今や、アングロサクソンの世界との取引なんてあり得ない。なぜならば、アングロサクソンの世界は泥棒や詐欺、何でもしでかすトランプ詐欺師のようなものであるからだ。」

ロシアは多くのことができるが、米国をネオコンの支配から解放することはできない。 それは米国に住んでいる米国人たちにしかできないことなのだ。

ここで、われわれは悪循環に陥る:

米国の政治体制が内側から効果的に挑戦する可能性は極めて低く、歴史上最も先進的なプロパガンダ・システム(別称、「フリー・メディア」)を含めて、ビッグ・マネーがすべてを動かしており、国民は無知で、洗脳されてしまっている。そして、もちろん、ロシアとの戦争での大敗北はこのシステムを非常に激しく揺るがすことになるので、災害の大きさを隠すことなんて不可能だ(「ステロイド剤を使ったカブールでの出来事」を思い起こしていただきたい)。この敗北は9/11に関する真実や、その後米国社会が何十年にもわたって基盤としてきたあらゆる神話や嘘をすぐにも巻き込むドミノ効果を引き起こすことになるので、ネオコンはそんな事態が起こるのを許すことはできないのだ。その点こそが米国の敗北を許せない理由なのである(JFK、いったい誰?)。

もちろん、このことを完全に理解している米国人はたくさんいる。しかし、そのうちのいったい何人が米国の意思決定とその結果に影響を与える権力の座に居るのだろうか?本当の問題は、ペンタゴンや関係省庁には9/11の偽旗作戦の後に這い出してきたネオコンの連中を地下室へ送り返すのに十分なだけの愛国的な勢力がはたして今でも居るのかどうかである。

現在、米国における権力のあらゆる地位はネオリベラルやネオコン、リベラル過ぎる共和党員、その他の醜い連中らによって保持されているように見えるが、例えば、タッカー・カールソンやトゥルシー・ギャバードのような人々は「それが分かっている」多くの人たちに向けて手を差し伸べていることも否定はできない。これには国際的な凶悪犯の一団ではなく、自国と自国民に忠誠を誓った本当の意味でのリベラル派や本当の保守派が含まれていなければならない。

また、マクレガー大佐が言いたいことに耳を傾けようとする米軍司令官もたくさんいると私は確信している。

はたしてそれは嘘とプロパガンダの壁を突破するのに十分なのであろうか?

私はそう願っているが、それ程楽観的ではない。

第一に、アンドレイ・マルティアノフは米国の支配階級が見せるくだらない無能さや無知を絶えず非難しているが、彼の指摘は極めて的確である。 そして、私は彼の欲求不満を多いに共有する。 われわれは二人ともこれが何処に向かっているのかを見て、われわれにできることは警告し、警告し、そして、もう一度警告することに尽きる。米国のような核大国が無能で無知な凶悪犯の一団によって運営されているという考えを信じるのには抵抗を覚えるであろうということは私にも分かる。だが、これが現実であり、単にそれを否定するだけでは現実が消え去ることはないのである。

Photo-2

第二に、少なくともこれまでのところ、米国の一般大衆は米国が支配する金融経済システムの崩壊の完全な影響は(今のところ)感じてはいない。 したがって、旗を振る「馬鹿ものたち」にはこの対ロ戦争は七面鳥狩りであった「砂漠の嵐」作戦のように展開するだろうと期待する向きがある。

だが、対ロ戦争はそんな風には行かない。

本当の問題は、洗脳され、旗を振っている「馬鹿ものたち」を目覚めさせる唯一の方法は彼らの頭上で核爆発を引き起こすことかどうかである。

「ゴー、USA!」は何十年にもわたって何百万人もの米国人の心に注入されてきた精神状態であって、これらの人々を現実に引き戻すには多くの時間を必要とし、いくつかの本当に劇的な出来事が必要である。

第三に、米国の支配層であるエリートは明らかに真っ向から否定する。米国のパトリオットミサイルまたはF-16戦闘機が幼児的で素朴な戦争の進路を変えるといった馬鹿げた話がそのすべてである。率直に言って、潜在的な結果がそれほどの危険をもたらさないとするならば、これはすべてがかなりマンガ的でさえある。だが、一基のパトリオットミサイルの施設が破壊され、F-16戦闘機が撃墜された暁にはいったいどうなるのだろうか?

西側はどれだけ早く最新鋭の武器を使い果たしてしまうのだろうか?

概念的な「エスカレーションの尺度」では、パトリオットミサイルとF-16戦闘機に続く次のステップはいったい何だろうか?

戦術核兵器?

それがどのように使用され、どこで使用されるのかには関係なく、「戦術的」核兵器は「戦略的」核兵器とは根本的に異なるとするかなり馬鹿げた概念を考慮に入れることは非常に危険である。

米国の支配階級が「戦術」核兵器の「限定的」使用や「斬首攻撃」の両方を真剣に検討しているという事実は米国が手持ちの最新鋭の武器を使い果たし、ネオコンらは今や必死になっているという現実を示唆する立派な指標であると私は主張したい。

そして、誇張や偏執的な妄想として私を非難したくなるかも知れない人々に対しては私は次のように言いたい:

この戦争はウクライナ(またはポーランド、あるいは、バルト三国)に関するものではない。 繰り返して言うが、決してそうではない。最低限、これはヨーロッパの将来に関する戦争である。 根本的には、それはわれわれの惑星における国際秩序の完全な再編成に関する戦争なのである。この戦争の結果は第一次世界大戦または第二次世界大戦のどちらよりも大きな影響を与えると私は言いたい。 ロシア人はこのことを明確に理解している(疑わしいならば、上述の動画を参照していただきたい)。

そして、ネオコンも、たとえ彼らはそれに関しては口にしたがらないとしても、まったく同様なのである。

現状はキューバのミサイル危機やベルリンでの睨み合いよりもはるかに危険である。 少なくとも、当時、状況が本当に危険であることを双方が公式に認めた。 ところが、今回は、欧米の支配層のエリートたちは、実際に何が起っているのかを示す本当の行動範囲を隠すために、彼らが所有する手ごわい心理戦争/プロパガンダ能力を駆使している。 米国(およびEU)のすべての市民が、自分たちの頭上に核兵器や従来型兵器の照準が合わされていることを理解したならば、状況は違ったものとなるかも知れない。 だが、悲しいかな、平和運動は存在しないし、ウクライナのブラックホールに対して何百億ドルもの支援を注ぎ込むことについて合意が成されていることから、現実はまったくそうではないのだ。

正気を失った連中は、現在、ロシアを国連安保理から追い出すこと(ロシアと中国の両方が拒否権を持っているので、これは実現しないだろう)や、ロシアの参加もなしにウクライナに関する「平和会議」を準備すること(「シリアの友人」や「ベネズエラの友人」の二番煎じ)、等、あらゆる種類の馬鹿げたアイデアを弄んでいる。 まあ、せいぜい頑張って貰いたいものだ!どうやら、グアイドやティハノフスカヤはネオコンを思いとどまらせるのには十分な教訓ではなかったらしく、今や、彼らはまったく同じナンセンスな状況をゼレンスキーとの間で繰り返している。

もう一度取り上げるが、われわれは2023年の1231日まで持ちこたえることができるのであろうか?

たぶん、持ちこたえるであろう。しかし、確かに持ちこたえるとは断言できない。 明らかに、これはクレムリン側が抱く想定ではない。なぜならば、ロシアではすべての戦略的抑止能力(核と通常兵器の両者において)に関して実に計り知れない強化が行われているからである。

すべてがうまく行けば、ロシアは核を含む紛争のあらゆる事態に対して非常に明確な準備を進めているので、「si vis pacempara bellum:平和を望むならば、戦争の準備をせよ」という古い格言がその運命の日を救ってくれることだろう。 中国もそういった状況に間もなく到達するであろうが、2023年にはウクライナ戦争に何らかの終結が見られる可能性がある:つまり、ウクライナでのロシアの勝利か、本格的な大陸戦争となって、そこでもロシアが勝利するか(はるかに高いコストがかかるであろうが!)のどちらかである。こうして、中国が本当に準備ができるまでに(おそらく、さらに25年はかかりそうである)、世界は非常に異なった風景になっていることであろう。

これらのすべての理由から、2023年は人類の歴史の中ではもっとも重要な年のひとつになるかも知れないと私は強調しておきたい。 われわれの間でいったい何人が実際に生き延びることができのるかは未解決のままに残される問題である。

アンドレイ記

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これで全文の仮訳が終了した。

この著者はさまざまな思考の結果、こう述べている:『米国の支配階級が「戦術」核兵器の「限定的」な使用や「斬首攻撃」の両方を真剣に検討しているという事実は米国が手持ちの最新鋭の武器を使い果たし、ネオコンらは今や必死になっているという現実を示唆する立派な指標であると私は主張したい。』

米国の戦争計画者らが西側はすべての手を使ってしまって、最後に残されたカードは戦術核兵器の限定的な使用やロシアの指導者を標的とする斬首攻撃だけだと判断しているとしたら、結局のところ、核戦争しかないのではないか・・・。米国のネオコンはそこまで自暴自棄になっていると著者は指摘しているのである。

著者がこう考える理由はロシアがさまざまな最新兵器を開発し、その一部はすでに実戦配備されているが、米国側はそれらに対応する最新鋭の兵器の開発では遅れている。たとえば、原潜から発射され、マッハ9で飛行するロシアの極超音速巡行ミサイル「ジルコン」を迎撃できるような対空防衛システムは米国には存在しない。米国が配備しているイージス艦では対応ができないのである。ましてや、半世紀前の空母を中心とした攻撃艦隊はもはや張り子の虎に過ぎない。この状況は米国にとっては決定的に不利である。2023年にはとても間に合わない。「米国は最新鋭の武器を使い果たしてしまった」という指摘は武力の均衡を欠いている米ロ間の現実を指しているように思う。

米国はロシアとの戦争はしたくはないのだと一部の識者が指摘しているが、その理由がよく分かるというものだ。

この対ロ戦争に関しては米国にはプランBはないのであろうか?あるとするならば、それは米国のエリートたちやネオコン連中が最も嫌うロシアに対する譲歩でしかないのではないか。この追い詰められた状況が米国の意思決定の際に狂気を招くかも知れないという懸念こそがこの2023年を極めて陰鬱なものにしているのである。

こう考えてみると、ロシアを仮想敵国にして、自分たち自身が自分の妄想を信じ込んでしまった米国のエリートたちのマンガ的な程に軽はずみな行動や傲慢さこそが、結局のところ、全世界のすべての人々に対して極めて甚大な代償を強いることになるのだ。まさに、人類にとっては最大級の危機であり、歴史上最後の試練に曝されているのだと言えよう。

最近、ヨーロッパ内部から反省を促すかのような意見が出始めた。その一つ目はアンゲラ・メルケルであり、二つ目はドゴール将軍の孫であるピエール・ドゴールだ。アンゲラ・メルケルは127日にこう述べている:「ミンスク協定は、ウクライナに時間稼ぎをさせ、ウクライナがより強くなるのを助けるために署名された。ミンスク合意の参加者らはウクライナ紛争は中断されただけであり、問題自体は解決されていないことを理解している。」また、ピエール・ドゴールは、14日、アゴラヴォックスとのインタビューでこう言った:「西側諸国は事前にロシアに対する陰謀を計画していた。EUと米国はモスクワに経済危機の責任を負わせようとしている。フランスの世論は今日のアメリカ人の邪悪なゲームが何であるかを理解し始めていると思う。主にNATOの同盟国と連絡をとる際には嘘を言って、米国はウクライナの危機を利用してヨーロッパを不安定化させた。」明らかに、これらふたつの見解は半年前には見られなかった類のものである。

ヨーロッパでは今何かが変わり始めたようだ。

参照:

1The most important question: By The Saker, Dec/27/2022

 

 


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